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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
118/276

8





「それなら、課題と一緒にやりとりすればいい。」


翌日の月曜日、さぁ出かけようと準備していると彼女が手紙を差し出してきた。



その手紙はクラスミーティングは欠席するようにとその後の集合場所についての内容だった。


手紙に従って時間まで調整し教書職員室に向かう。



入学した時を思い出すような事務的な話と説明をされ最後に質問を聞かれたので、手紙の件について理由も交えつつ質問してみるとあっさり答えが返ってきた。




「Sクラスの人たちとのやりとりならわざわざ一般の郵便を使うより、先ほど説明した郵送手段を使った方が速いし手間も少ない。」


「それで大丈夫ならよろしくお願いします。」


めんどくさい話になるかと思いきや、あっけなく片付いて一安心した。





「そう言うわけでみんなとはしばらく手紙のやり取りになります。」


昼食はみんなでと急ぎ1212室に向かうと驚いた顔をされたが、事情とこれからのことを話している間は口を挟まず聞いてくれた。



「出発は?」


「明後日。」


「この後の予定は?」


「今日はもう何もないかな。明日は準備するって言ってたけど、学園とかに出す書類確認したり書いたりするために家にいると思う。」


予定やら日程やらそれに付随して確認を取らなければいけないことが多すぎる。



(明日は1日外に出ることはできないだろうなぁ…。)


先ほど課題とは別にわたされた書類の山を思い出しながら心の中でため息を吐く。



「だから、みんなにいってきますを言いに来れてよかった。」


「それじゃあ、手紙書く準備しとかないとね。」


「そうだね。」


いつもより少しだらっとした、でもとても楽しい午後の時間はとても久しぶりだった。




(みんなにはちゃんといってきますを言えたし、彼女のおかげで準備も問題なくできた。集合時間よりも少し早くき過ぎちゃったなぁ…。)


出発の日の朝、集合場所は少し前に葬儀のため出かけた際にも立ち寄った塔。


専用車両で来て塔に常駐している警備隊の人にノオギからわたされた外出理由書をわたし、外出届を記入する。


そして時間にはまだ早いため塔の中で待つように促された。



前回はアダンが居て話ながら待っているうちにアマジが来てと退屈はしなかったが、今回は1人だ。



(旅の行程やら地図やらわたされたけど、基本乗ってるだけだしなぁ…。)


今回は昼夜問わずまっすぐ向かうのではなく、夜には宿に泊まる。


さらに姉さんの家とも事前に連絡をとっていたようで、そこでも宿泊するらしい。



(本当は姉さんとはそこで別れてもいいはずなのにね…。)


姉さんの目的は療養だが、移動のお供でもあるため15の街まで送り届けた後また引き返すらしい。




(予定通りに行けば15の街に到着するのが16日で姉さんがご実家に帰るのが24日。)


その後1月に入ってから学園に戻る日付のことを考えると、移動している日数の方が多いのは果たしていいのだろうか。



「ミリア、おはよう。どうしたの?そんなけわしい顔して。」


あれやこれやと考えていると姉さんがやってきた。



「おはよう、姉さん。なんでもないよ。」


言えば雷必須の反論をくらうことはわかりきっているので、こちら側からのおせっかいはしまっておくことにした。




移動車は前回その姿すら見ていなかったため、学園内を走るトラムや専用車両のようなものを想像していたが、乗り込んでみれば入学前に乗っていた馬車に近い物だった。




「うん、2人部屋って感じね。」


入ってすぐに2つの扉と短い1本の廊下。


廊下の先にはソファーとテーブルが見える。




「私はこっちの部屋を使うからミリアはそっちでもいい?」


姉さんは左側の扉を指差したので、右側の扉に手をかけながらうなずいた。


そのタイミングで車両も出発したのか揺れを感じる。




「それじゃあ、また後でね。」


そう言って姉さんは部屋に入って行ってしまった。


部屋の中は1人用の勉強部屋という感じだった。


勉強机に小さめの本棚。



キャビネットには膝掛けなどが入っていた。


これから長い旅になるならまずここで荷解きするべきなのだろうが、大きな荷物は影の中に入れてしまう癖のせいでしばらくそのことに気が付かなかった。


姉さんは大きなトランクを持って乗り込んでいたが、こちらは見た目では小さなカバンひとつ。



次回からはふりだけでもした方がいいのかななどと思いながらが影の中から彼女が用意してくれたトランクを引っ張り出す。





ある程度荷解きを終え、1度部屋を出る。


廊下奥を見れば姉さんがソファーに座っていた。



「荷解きは終わった?」


「はい。」


ソファーは大きいが1つしかないため隣に座る。



正面に窓はなく、ソファーに座れば左右にある低い位置に付けられた窓から外を見ることができた。



「入学の時も思ったんですけど、こう言う車両ってどうなってるんでしょうね?」


「ものづくりの神様って結構多いのよ。作ったものが動き出したり、喋り出したり。そんな人の中には片手に乗る本物の庭園を作ったり、家に見えないものの中を豪邸に作る人もいるんだって。」


この車両もそうやって作られたものだと言うことだろう。




「私の寮にいたスバルって覚えてる?」


「筆のティーの人ですよね。」


コナミの件で会ってはいないがお世話になった。



「そうそう。スバルは筆で描いたものを実体化させるんだけど、最近簡単なテントみたいなものなら作れるようになったって言ってたわ。才能とか熟練的なものもあるんだろうけど、絵に描いた家を実体化させることもいつかはできるようになるんじゃないかしらね。」


授業中に作って見せてもらった時にテントの出入り口を描き忘れて、ハサミのティーであるイチトに切ってもらったら切りすぎて消えてしまった話などを聞かせてくれた。






15より内側の地域は街とそうでないところの境が曖昧だ。


何もない道ももちろんあるが、そんな場所にポツンと建っている家があったり大きな木を中心に7、8軒の家が建っていたりと窓の外の景色は飽きない。



各々の部屋に入って課題をこなし、飽きれば外を眺めたり話をしたりしながら過ごす。


そうしているうちに日が暮れる頃になるとその日の宿に着いて下車する。




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