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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
116/276

6





「ミチカ、いったん落ち着いて…。首が締まってる…。」


3022棟に着いた途端ミチカからの強烈なハグをお見舞いされた。


それだけ言うと感動の再会に見えるが、実際にはいろんな感情が爆発したミチカの加減なしの締めをどうしたものかと考えるので精一杯だ。



ケーキの箱はミチカに潰される前にコウヤとユウガが持って厨房のブラウニーズにお茶の準備をお願いしにいった。


結局コナミを呼びに行ったテルマが帰ってきて、別で連絡を入れていたリンカが職員に連れられてやってくるまでミチカは離れなかった。





「じゃあ、ミリアまたしばらく授業来ないの?」


「うん、そうなると思う。」


みんながそろってとりあえずケーキを食べながら話そうと言うことになった。


リンカはもう夕方で急だったこともあり1時間ほどしか滞在できないと言われたので、話せることをかいつまんで報告する。




「次に会えるのはいつ?」


「えっと、トランプの行事が終わって帰り次第になるのかな?」


「と言うことは1月中旬だね。」


「その間、勉強はどうするの?」


「先輩がもうノオギ先生には話してるみたいなこと言ってたから、また課題のやりとりになるんじゃないかな。」



「それじゃあ、今とほとんど変わらないね。」


「実技でみんなと遊べないことだけが残念。」


「ミリア、そのセリフは悪役の言うことだよ。」


コナミのその言葉にみんなで笑った。




「狩人たちの街巡りかぁ、もうなんだか懐かしいや。」


「ユウガは壁の中生まれだからその行事知ってるんだっけ。」


「うん、知ってるよ。俺が住んでた街にも毎年12月になると来てたからね。」


ユウガの話だと街を訪れた学生たちを大人たちが出迎えて冬の支度を手伝ったり物を受け取ったりしたあとまた次の街に行くのを見送るのだそうだ。




「コウヤもそんな感じだった?」


「だいたい一緒だな。俺が生まれた街は壁に近かったから、狩人たちがくると年越しの準備を始めてた。」


同じ壁の中の街でも場所によって彼らが訪れる意味は少し違う捉え方をしていたようだ。



「それで、ミリアはそれに着いていくの?」


「まだどうするかは決めてない。」


正直急な話だったからどうするか悩む時間も十分にない。




「俺としては、ミリアは少し休んだほうがいいと思う。」


そう言ったのはコウヤだった。



「そうかな?」


誰も彼もが休養を勧めてくる日だと心の中でこぼす。




「俺が、街でミリアを見かけたとき、今にも消えそうというかその場の騒がしさに溶け込んでしまいそうに見えた。」


コウヤの言葉にみんなが動きを止めた。



「だから慌てて声をかけたし、今1人にしたらもう2度と会えないかもしれないと思って連れてきた。」


「コウヤ、怖いこと言わないでよ。」


「ごめん、でもそう見えてたてことは知っておいてほしかった。」


その言葉に誰も返さない。




「ミリア、居なくなるの?」


そう切り出したのはリンカだった。


リンカはだいぶみんなと話すようになってから言葉数も増えたがその言動はまだ若干年齢には追いついていない。




「居なくならないよ。でも最近怖いことがいろいろあったから少し休んだほうがいいんじゃないかなってコウヤは心配してくれてるんだよ。」


「怖いこと?」


「うん、怖いこと。」


確かに怖いことの一言でまとめてしまうにはあまりにも内容が濃すぎるかもしれないが、つまりはそう言うことだ。




「じゃあ、休もうよ。」


「そうだね。そのためにもう少しいろいろやらなきゃ行けないことがあるけど、その後にはちゃんと休むよ。」


「約束ね。」


少なくともリンカは納得してくれたようだ。





「決まったらちゃんとみんなに知らせる。」


納得はしていないが、それ以上に言い返す言葉も権利もないと悟ってみんなそれ以上何も言わなかった。



その後あっという間にリンカは迎えが来て帰って行き、自分の寮に帰るコナミと一緒に3022棟を出た。





「俺さ、寮移動の話が来てるんだ。」


最寄りのバス停に着くまでの間にコナミが話し出した。



「最初の寮わけではティーの大まかな種類わけで俺だけ違う寮になったけど、たぶんSクラスはしばらくは増えないだろうってことでたぶん来月にはみんなと一緒の寮になると思う。」


「そっか、よかったね。」


コナミはことあるごとに自分だけ寮が違うことの愚痴をこぼしていた。



大きな問題が起これば必ず人一倍他の人に漏らさないようにと言われているし、正直クラスが違うコナミは寮で疎外感も感じていただろう。




「だからってわけじゃないけど、もう少し俺たちミリアの頼りになれないかな?」


コナミの寮の移動理由の大部分は私だろう。


私が何か騒ぎに巻き込まれれば、その影響は近しい人ほど出る。


あまり広まってほしくない話も分散していればリスクが高い。


先生たちはできるだけ1ヶ所にまとめておいて管理しやすくしたいのだろう。




「話せないこともたくさんあると思うけどさ、話せることもこれから少しずつ増やしていけないかな?」


「そうだね…。」


「だって俺、知らなかったよ。ミリアが甘いものよりクルミとかナッツとかの方が好きとか、赤とかピンクよりも白とか青の花が好きとか。」


「あー、コウヤから聞いた?」


あの時もこの道を歩きながらコウヤとやった質問ラリーを思い出す。



「俺はそう言う話もこれからみんなでもっとしていきたい。」


「私もできればみんなの好き嫌いとか知りたい。」


「じゃあ、帰ってきたらみんなでパーティーしなきゃね、そこで改めて自己紹介するのもいいし、ゲームして1つずつ言っていくのもいいな。」


話すコナミはとても楽しそうだ。




「だからさ、必ず帰ってきてよ。」


みんなの不安を代弁するような言葉だ。



「結局のところ帰ってくるってわかってれば、気休めでもなんでも安心できるんだよ。だから次はさ、できたらでいいから『いってきます』って言ってから出かけない?」


コナミの気持ちは刺さるように伝わって来る。



「そしたら俺たちもいってらっしゃいって言ってさ、待ってられるから。」


でも、とすぐに付け足す。



「できたらたまには手紙をくれたら嬉しいな。」


「それは本当にごめん…。」


この10日間手紙の返信を書いていなかったことが追い討ちをかける。




「今、約束はできないけどそれでもいい?」


「俺が言ったこと覚えててくれるだけでいいよ。」





そのタイミングで停留所に着き、コナミとおやすみを言い合って別れた。



 

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