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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
113/276

3





一時のうたた寝から意識が覚醒する。


どうやらティールームでお茶が出てくるまでの時間も待てずに自分の椅子に座ったまま寝てしまっていたらしい。




バラ殿のできごとから10日。


ホズミはあれ以来意識が戻る事はなく、はたからみれば眠っている。



その状態はティーと無理矢理引き離されたために起こる症状なのだと教えてもらった。




動物や物のティーは目に見えない形で繋がっている。


それが無理に千切られすぐに繋ぎ直すことができなかったために起こるのだと。




あの時起きたことを、ノオギをはじめいろいろな大人たちに聞かれた。


そして、もしかしたらホズミのティーの残滓だけでも残っているかもしれないとたくさんの管と機械に繋がれたホズミとも対面した。




結果として何もなかったが、その光景はあまりにも衝撃的すぎるものだった。


日常の生活をしていて当たり前に受け取り手放すものを呼吸以外全て本人の意思とは関係ないところで行われている。


何人もの人の手でやっとまだかろうじて生きていると言える光景を見ることになるとは思わなかった。




また別の日には証言をさらに明確にするためにバラ殿で誰がどこにいて何があったかを証言した。


更に再三の確認と同意の後、記憶を覗くことのできるティーに能力を使ってもらった。



そして当事者だからなのか立場的なものからなのかはわからないが、知る権利があると言われてホズミの過去と最近の行動についての資料を読ませてもらった。




リンカとはまた違うタイプの入学までに難がある、それでもこの学園では対して珍しくもないタイプの学生だとノオギは言っていた。


彼女をおかしくしたのは感情からくるものかそれとも特殊な立場からくるものか。





まさかうたた寝の夢にまで出てくるほど入り込んでしまっていたのだろうかと少し天を仰ぎながら考える。



(感情からだとしたら、姉さんはずいぶん罪つくりな人だ…。)


自分にとっては姉としての優しさとしか考えていなかったが、立場が違えば好意の1つや2つ寄せられてもおかしなことではなかったのだろう。



いくら考えてもいまさらな事に変わりはないので、これ以上の悪態は心の中でも止めてしまおう。




そうやって忙しく過ごしていたせいで、授業にも出られない。



2日に1度はミチカや他のクラスメイトから手紙が来るが、その返事も話せる内容が限られるため滞りがちだ。



バラ姫様とはあの後、1度だけ話をした。


バラ姫様はホズミが姉さんに抱いていた感情に気がついていた。


しかしそれが長引く風邪のようなもの程度にしか思っておらず、まさか焦がれ拗らせ怪しい話にまですがるとは思ってもいなかった。




ホズミの今後がどうなるかは自分にも予想できないが、自分がバラ姫である限り除籍せずに最後まで見守る。


何もしなかった自分が言うことではないが、何か困ったことがあればいつでも頼ってほしい。


あなたもすでに花園の一員、クラブハウス2階のユリ殿の鍵で開く部屋は好きに使いなさい。



それだけを伝えて去っていった。





寝ていることに気遣ってか空のティーカップとその横にベルが置いてあった。


寝ている間に随分と体勢がずれていたため、座り直そうとするとお腹のあたりから何かが転がり落ちる。



目を向ければコロコロと転がっていくそれは茶色い毛のかたまり。




ゆっくりとスピードを落としたかと思えば4つの足が出てきて、さらに頭も出てきた。


ムクっと後ろ足で立ち上がりあたりを見回す。


頭の上部についている体に対してとても小さな耳がピクピクと動く姿が愛らしい。




目が合う。



「えっと、こんにちは・・・?」


4つ足の状態に戻りこちらへと近寄って来たため拾い上げて膝の上に置く。


さてどうしたものかと思っていると窓からコンコンと音がする。



ベランダの方を見れば、オベロのティーが器用に爪先で窓を叩いていた。


膝上のティーを抱えてベランダへ出る。




どうやら今日も主人不在のまま飛んできたようだ。



「こんにちは。この子を連れてきたのはあなたですか?」


挨拶の後にそう問かければうなずいてそうだと意思表示してくれる。



「この子の主人はどこにいますか?」


トントンと床を2回踏み鳴らした後、首を下に向けた。



「この建物の下にいるんですね?」


そう言うとうなずいた。




ベランダの柵の上から顔だけ出して下の方を一応確認する。


建物の外にもその先に広がる公園にも人の気配はない。


ということは建物の中のどこかに居るのだろう。



「連れて行ってみますね。」


そう声をかけるとみるみるうちに小さくなりやがて肩にとまった。


一緒に行くということだろう。



抱えている方のティーを見れば、まだ眠いのかあくびをしている。




ベランダからティールームを経由して廊下に出る。


相変わらずこのクラブハウスは人の気配がない。



しかし今はティーを2つ、自身のティーを入れれば3つ連れている異様な光景を誰かに見られなくて安心した。




ひとつ下の階に降りて、姉さんのティールームをノックする。


しかし今は不在なのか返事はない。





祝・更新再開!

でも現在進行形でインフルエンザ疑い…

(これ以上熱が出たら病院行きます)

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