第八章 清水山城跡での告白
急な坂道であったが、足元はコンクリートだったので、七人の子どもたちはぐんぐんと道を進んだ。
数分歩いたころに、民家の横を通る狭い道に入ると急に山道に変わった。
「きゅうに、ヤマになったね!」
韓国のイ・ミンジュンが周りを見回しながら言った。
山道を歩き進むと、清水山城跡とかかれた矢印が付いた標識が出てきた。
「崎村んじいちゃん、ここを登って行くと?」
「雄太。そのすぐ上は三の丸たい」
「三の丸! こんな山ん中にお城があったと?」
「ああ、この清水山城は、一五九一年に豊臣秀吉から、朝鮮出兵に備えて守りの城を建てるよう命じられ、宗義智公が築城された山城だ。
義智公はできれば朝鮮と仲良くしたかったから、あまり乗り気ではなかったそうだがな。
さぁ、すぐだ。登ってみよう。足場が悪いから、みんな気をつけろよー」
左側に斜面があり、そこに沿って作られた山道で、大きな岩が目立つ。
少し登ると、開けたところに出た。先が崖になっていて近づくと見晴らしがよい。ベンチもおいてあり、ちょっとした休憩所のようだ。
説明板があり『清水山城跡 三の丸』について詳しい文章が書かれていた。
「ほら、もう三の丸に到着だ。厳原港がよく見えるぞ。いい眺めだ」
「わあ、ほんとだー。海が見える! ここで見張ってたのかなー」
崖を左に見ながら石垣をぐるりと回ると上に進む道がある。道を挟んで真ん中には、大きな岩があり、こんなところに城があったのかと思うような地形だ。
だが、先に進めば進むほど、足場は悪くなり、山道は木の根と岩の連続で、道とは言えないようなところもあった。
「みんな、足元に気をつけて、ゆっくり登れよ」
真理子は、雄太に手をひいてもらったり、宗太に枝をよけてもらったり、みんなに助けてもらいながら登っている。
時には滑りそうになったりもしたが、きゃっきゃと声をあげて楽しそうだ。
三の丸を出て、十分くらい山道を登った頃だろうか。細い道から急に真ん中が広いところに出た。
『清水山城跡 二の丸』と説明書きのある白い看板が立っていた。
その近くに木の標識があり、一の丸まではあと110メートルと記されている。
石垣が崖ぎりぎりに組まれていて、その先のほうにいくと、さっきの三の丸よりも、はるかに町や海がよく見えた。
「すごーい。さっきよりもっと見晴らしがいいね。気持ちいい!」
あちこちに岩がたくさんあり、その間に木が茂っている。
上をみると、崖のようなすごい傾斜の山道。
「もしかしてこれを登ってくと?」
「そうだ! 真理子ちゃんよりも小さい女の子も登ってたから大丈夫! 一の丸はそう遠くないぞ。一の丸に登ったら、真理子ちゃんの話をきかせてくれ」
「崎村のおじいちゃん......。 真理子、頑張る!」
道も狭いし、とにかく岩が多い。足場の悪さは、これまでで一番だ。
男の子たちは、わいわい言いながら、もう急な山道を登っている。雄太は身軽にひょいひょいと岩に足をかけて登っていく。
「真理子ちゃんは、わしと行こう!」
崎村老人は一番後ろを歩き、真理子と一緒に一の丸を目指した。
急で登りにくい道ではあったが、一の丸にはすぐに着いた。
「おー、なんか一番、お城っぽいよね。石垣がたくさん残ってる」
清水山の一番高いところに石垣が輪を描くように積まれている。空が広くみえて、眼下には厳原港だけではなく反対側まで、360度見渡せる絶景だ。
「やっほー! すげぇ。これなら、攻めてこられてもすぐに見つけられる」
「みてみて。あっちのほうにも、なんかあるよ」
「のろし台じゃない?」
「なんかお供えしたんじゃない?」
木をくぐると、また岩が見えて、男の子たちは、はしゃぎながら探検していた。
真理子は、崎村老人と遅れて、一の丸に到着した。
「真理子ちゃん、ほら、すごい眺めだろ」
「うん。すっごい気持ちいい。登ってきて良かった」
「真理子ちゃん、話したいことがあるよね」
真理子は、崎村老人の目を見て、こくんとうなずいた。
二人は、石垣の手前の平らになったところに座った。清水山の頂上で、厳原の町と港を見ながら話す二人の話し声は、時折吹く風と、鳥の声にかき消された。
しばらくして崎村老人は、真理子の頭をなでると、
「真理子ちゃん、そろそろ、八幡神社にいくか」
真理子はにこりと笑うと、「行こう行こう」とはしゃいだ。
「さぁ、下山だ」
崎村老人に続き、元気な子どもたちは、大声でわらったり、歌を歌ったりしながら、清水山城跡をおりた。
「下り道はらっくだなー。もう着いたよ!」
山から下りたら博物館の裏に出て、さらに道をくだると、薬局 「マツモトキヨシ」の横の道に出た。
朝歩いてきたティアラの角だ。 正面には崎村老人の先生だという西さんがいる観光物産協会がある。 その角を左に曲がり、しばらくまっすぐに歩いていくと八幡神社が見えてくる。
先頭を歩いていた真理子は、急に立ち止まって、後ろを振り向くと、みんなに聞こえるように言った。
「わたしね、みんなに話したいことがあると」
「ん?」
全員が立ち止まり真理子の顔を見た。真理子はみんなの顔を見ながらフフフと笑うと、
「大発表よ! 秘宝の玉にも関係あるとよ」
そう言うと「みんなはやくー」と、八幡神社に向かって走っていった。




