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島がおどるよ  作者: わたなべみゆき
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第五章 対馬の宿命そのニ

 宗太のご先祖様が眠るという『万松院』に連れられてきた七人の子どもたち。ここで、どのような話を聞けるのか。子どもたちは、どことなくそわそわとしていた。


「宗太君のご先祖さまぁ? 宗太君て東京からきたとよねー」

 本堂から出たたけるが、落ち着かない様子で周りをきょろきょろしながらつぶやいた。

 宗太は、墓所に続く階段をじっと見つめた。

「さぁ、石段を登ろう」

 崎村老人のあとを子どもたちが登る。

 石段の両脇には石灯籠がずっと並んでいる。石灯籠を押しのけるように、何本もの杉の木が伸びていた。

「えーー。なにこの階段。いったい何段あるとー」

 真理子が途中で立ち止まり叫んだ。先の方にいた崎村老人が、後ろを振り向いた。

「真理子ちゃん、百三十二段あるぞー。これはな、百ひゃく雁がん木ぎ と言われ

る上まで続く石段だ。頑張らんばね」

「えー、百三十二段もあると」

 真理子は時にも座り込みそうになりながら、よたよたと石段を登った。

「マリコチャン、ガンバッテ」

 中国のワン・ルイファが優しく手を引いてくれた。

「ありがとう。ルイファは優しかねー」

 七人の子どもの中で、女の子は真理子とワン・ルイファだけなので、真理子はいつのまにか、ルイファをお姉ちゃんのように慕っていた。


 石段を登る途中に、大きなお墓がたくさん見えてきた。

「すごいねー。これはみんな宗家のお殿様のお墓?」

「いや、この上を見てみぃ。同じように大きな墓があるじゃろ。」

「ほんとだー」

「階段の途中にあるのは、『中御霊屋』(なかおたまや)と言って、宗家当主の側室とそのご子息の墓だ。義智公以降の当主の墓は一番上にある」

 崎村老人の言う通り、階段の右側に広場があり、そこに墓がたくさん立てられていた。

「さぁさ、ここもお参りするぞ」

七人のこどもたちは、崎村老人につれられて、すべての墓に手を合わせた。

 階段を登りきると上は、小さな広場のようになっていて石灯籠がたくさんあり、大きな杉の木が何本もあった。

 神社とはまた違う雰囲気があるが、何か目に見えないものが側にいるような不思議な感じがする。

左側に白い石塀が見えており、大きな杉の木を境に二つの石段が右側、左側に分かれるように上段へと続いている。


「でっかい杉の木! 万松院の大杉って書いてあるよー」

 真理子が上を見上げた。

 二つの石段の真ん中には案内板があり、右側が『上御霊屋かみおたまや 東部』左側が『上御霊屋 西部』と書かれている。

「こっちから行こう」

 崎村老人は右側の石段を登り、子どもたちもあとに続いた。みんな神妙な顔だ。

 その石段を上がると、そこはまた広場があり、大きなお墓がいくつも並んで建っている。

「うわっ! さっきより大きなお墓がいっぱいある!」

「ここは、初代対馬藩主となった宗義智の苦労をねぎらうために、ご子息の宗義成が建てた墓所だ。

 義智公は、対馬のみならず日本を守るためにも、大変ご苦労なされたお方じゃ。

 この方のご苦労、そして、あとに続く義成、義真公のご苦労が日本の長い安定した時代を作ったともいえる。対馬の位置的な宿命を背負われた立派な方々じゃ」

 そう言いながら、大きな墓に手をあわせながら言った。

「宗太。はよ来い」

 ごくりと唾を飲み込み、宗太が最初に手を合わせた。みんなもそのあとに続き次々と参った。

 西部の墓地のほうへ歩いていくときに、後ろを振り返った崎村老人は、はっとした。

 真理子が、小さなバッグから何かを取りだし、義智公の平たいお墓においた。胸の前で十字をきると、目を閉じ手を組んだ。

 そしてそのあとさらに、驚くべき光景を目にした。

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