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呪いで異形になった公爵様と解呪師になれなかった私  作者: 灰銀猫


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今後の見通し

 神獣エガードの告白で、一応状況は理解しました。しましたが……


「ウィル様が消えてしまうって……どうしたら……」


 今だって呪いは完全に消えていませんし、また魔獣討伐に行けば呪われるでしょう。今の話からすると、聖域の瘴気が消え去ってもウィル様の呪いが解けなければ消えてしまうのではないでしょうか。


「そうじゃな。先にウィルバートを、それから聖域を浄化する。そうすれば問題なく分離できるじゃろ」

「先にウィル様の呪いを……」

「うむ。完全に呪いが解けた後は再び呪われないよう護符なり使うことじゃな。その上で聖域の魔獣を消して欲しい。何、随分魔獣も減った。それほど時間はかからんじゃろ」


 成程、先にウィル様の解呪を終わらせてから魔獣退治なのですね。聖域でウィル様の解呪をするのでは間に合わないと。


「言うは簡単だが、護符を使うとなると、攻撃魔術が使えなくなる……」

「そうじゃな。ああ、だったらこの娘を連れて行けばいい。事の発端は聖域にかけられた呪い。それを解けば浄化出来るじゃろ」

「馬鹿な! 危険すぎる!」


 ウィル様が声を荒げました。確かに実戦経験も体力もない私が付いて行っても、足手纏いの未来しか浮かびません。


「だったらそこの小童を連れて行け。解呪出来れば誰でも構わん」


 何度も小童呼びされたトーマス様が苦い表情を深めました。さすがに子犬に小童と呼ばれるのは納得しがたいですよね。


 その後精霊が視える件に関しては、エガードがトーマス様に他言禁止を命じてしまいました。トーマス様は最後まで抵抗していましたが、そんな頑なな態度にエガードが呆れ、最終的には他言出来ない術をかけてしまったのですよね。詳しいことはわかりませんが、人間では解けないそうです。




 そのエガードは私を気に入ってくれたようで、どこに行くにもついて来るようになりました。屋敷の人にはただの子犬で、ウィル様からの贈り物と説明しました。神獣なんて言うと大騒ぎになりますからね。額の角も見えなく出来るようで、見た目には白銀のふわふわな子犬です。最初は様付けで呼んでいましたが、柄じゃないと嫌がられてしまいました。でもトーマス様は却下されていました。何故かトーマス様には辛口です。


「エガードったら凄いわ。物知りなのね」


 空いている時間、私はエガードに魔力や魔術、精霊などについて教えてもらいました。その中には人間の知識とは違うものもちらほらあって、物凄く勉強になります。聞けばもう三百年生きているのだとか。それでも神獣の中ではかなり若い方なのだそうです。


「儀式をやってみたらどうだ?」

「儀式?」


 庭の奥の四阿でエガードとお茶を楽しんでいる時、魔力の量が少ないという話をするとエガードがそう提案してくれました。


「満月の晩、精霊に供物を捧げるのじゃ。そうすると精霊が力を貸してくれる。魔力量が少なくても効果が格段に上がるじゃろう」

「そんなこと出来るの?」

「ああ。水やミルク、菓子にお主の魔力を込めるのじゃ。それを供えるといい」


 エガードの話では、昔の人はそうやって精霊の力を借りていたそうです。私は精霊が視えるのでより協力を得やすいそうです。魔力がなくて解呪なども制限がありましたが、そうなれば今よりもお役に立てそうです。

 もしかしたら治癒魔術も使えるようになるでしょうか。今までは魔力が弱くて初歩のものしか使えなかったのですが。エガードの話では初級の術も上手く力を借りられれば中級くらいの威力があるそうです。




 トーマス様がやってきた翌日、晩餐を共にしました。私はまたしてもマーゴたちに磨かれてドレスアップされました。不思議なもので前回、ウィル様と二人での時は気恥ずかしく場違いに感じて心苦しかったのですが、今はそうは思いません。お母様もお姉様も家ではドレス姿でしたから。私が普通じゃなかったのですね。これも呪いの影響だったのでしょう。


「解呪の進み具合はどうですか?」

「ああ、順調だよ。ほんとうに夫人は資格がないのか? 王宮解呪師だってなれるレベルだよ」

「そ、そうですか?」

「ああ。的確で後のことも考えてやっているのがわかる。どこで覚えたんだ?」

「放課後などにエンゲルス先生の元へ通っていましたので、そこで教えて頂きました。後は……ここに来る前にご挨拶に伺った際、先生から今までの記録をまとめたものを頂いて……」

「先生から? 是非見せてくれないか?」

「ええ、構いませんわ」


 食い気味のトーマス様の勢いに押されて、晩餐の後で先生の資料をお見せしました。


「これは……!」

「どうなさいました?」


 食い入るように文字を追っていたトーマス様はその内容に大層驚いていらっしゃいました。何か凄いことが書いてあったのでしょうか。先生のことだからその可能性は大いにあります。確かに珍しい呪いなどの記載もありましたし。


「これ……もしかしてウィルの呪いじゃないか?」

「え? ウィル様の?」

「ああ。確証はないけど……これ、先生がこれまでにやったウィルの解除の記録だと思う」

「ウィル様の……」

「先生は……そこまで……」


 トーマス様はまだ文字を追っています。そんなに素晴らしいものだったとは驚きです。いえ、筆頭解呪師だった先生の記録ですからそれだけで十分に貴重なものでしょう。


「……ましいな……」

「え?」

「いや、何でもない。これは先生がウィルのためにとあなたに託したのだろう。大事にしてくれ」


 最初に呟かれた言葉は聞き取れませんでしたが、もちろん大切にします。出来れば私が解除した記録も付けて、今後の魔獣討伐のお役に立てるように残しておきたいですし。魔獣の種類は地域ごとに違うと聞くので、きっとこの記録は後世に役立つと思うのです。


「ウィルバートの呪い、そろそろ解けそうじゃな」

「あ、ああ。残り僅かだ。上手くいけば明日には解けるかもしれない」

「そうなんですか?」


 まさかこんなに早くに解呪出来るなんて思いもしませんでした。


「ああ、夫人のお陰だよ。まさか今回の訪問で解けるとは思わなかったな」

「いえ、トーマス様が来て下さったタイミングがよかったからです。私ではこの先は難しかったと思いますから」

「そう、かな。そんなことはないと思うけど……」


 トーマス様はそう言ってくれましたが、さすがにそれはないでしょう。残っているのは呪いの中でも手のかかるものばかりだったのですから。







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