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呪いで異形になった公爵様と解呪師になれなかった私  作者: 灰銀猫


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従属の呪い?

(な、七割も!? 本当に?)


 まさかそこまで解呪できているとは思いませんでした。いえ、随分減ったなぁとは思っていましたが、今残っているのは手間のかかる物ばかりです。そういう意味ではようやく半分かな? と思っていただけに驚きです。


「そうなのか?」

「ああ。これなら、俺が滞在中に解呪し終えるんじゃないか?」

「そうか。是非ともそう願いたいな」


 どうやら残りはトーマス様で解呪出来るようです。今までは滞在期間がネックになって終わらなかったそうなので、小さいものを解呪し続けたのはお役に立てたようです。


「いや、本当に凄いな。どうやって解呪したんだ?」


 さっきまでの気安くて少し締まりのなかったトーマス様の表情が一変して、真面目なそれに変わっていました。何だか責められているようで居心地が悪いです。


「あ、あの……」

「誰に習った?」

「あ、あの、学園で……」

「学園? だったらエンゲルス先生か?」

「あ、はい」


 何でしょう、尋問されているようで居心地が悪いです。やはり資格がないのに解呪したのはまずかったのでしょうか。


「トーマス、詰問するような言い方はよせ」

「そうは言うが、解呪は国家資格だぞ? 遊び半分でやられちゃ困る」


 そう言われると言葉もありません。やはりやらない方がよかったのですね……


「それはそうだが、解呪はエンゲルス先生も容認なさっている」

「先生が?」

「ああ。ここに来る際に先生から手紙を頂いたんだ。彼女の力は私の助けになるだろうとな」

「先生が……そう、か」


 トーマス様は呟くようにそう言うと、ソファに背を預けました。どういうことでしょう。エンゲルス先生はウィル様の呪いを私が解呪することを認めて下さっていたということでしょうか。確かに先生からもそういうニュアンスの言葉は頂きましたが。


「ふぅん、成程ね。じゃ、彼女にかけられている呪いは? それも先生はご存じなんだろう?」

「ええっ!? 呪い?」


 今、呪いって言いましたよね、私にかけられていると。それって……答えを求めるようにトーマス様を見つめると、くすっと笑みを漏らしました。


「そんなに見つめられると照れるね」

「え? あ、も、もうしわけありませんっ!」


 そんなに凝視していたでしょうか。マナー違反ですわね、恥ずかしいです……いや、今はそうじゃなくて……私に呪いって、そんな……いつから……


「はははっ! 可愛いなぁ」

「おい、トーマス」

「ああ、手を出したりしないから安心して? 俺は相手がいる女性には手を出さない主義だから」

「いや、そうじゃなくて彼女の呪いだ。解けるか?」

(ええっ? ウィル様、そこ、驚かないのですか?)


 なんだかその口ぶりでは、ウィル様は既にご存じだったように聞こえます。


「ああ、すまない、エルーシア。実は……エンゲルス先生からの手紙で……」


 じっと見つめると視線に気付いたウィル様が気まずそうに苦笑しました。ウィル様の話では、エンゲルス先生からの手紙にそのことも記されていたそうです。いずれ王宮から解呪師が来たら解呪を頼むようにとも。


「そんな……呪いなんて、一体なぜ……」


 全く心当たりがありませんし、自覚もありませんでした。いつの間にそんなことになっていたのでしょうか。


「トーマス、どんな呪いなんだ?」

「ああ、ちょっと待って、今視るから。ああ、エルーシア嬢、じっとしていて」

「は、はいっ」


 じっと見つめられて居心地が悪いですが、そう言われて思わず背が伸びてしまいました。でも呪いを視て下さるなら否やはありません。呪いはまずは視てその内容を確かめることから始まりますから。


「ああ、もう楽にしていいよ」

「トーマス、どうだ?」

「ああ、エルーシア嬢にかけられているのは、従属の呪いだ」

「従属の呪い?」

「そんな……従属って……」


 従属の呪いとは遥か昔、この国にまだ奴隷制度があった時代に使われていた魔術の一つです。奴隷制度と共に禁忌とされて使用禁止になっていますが、そんなものがどうして私に……


「そんなものが何故彼女に? 誰が?」

「う~ん、残念ながらそこまではわからないな。ただ……」

「ただ?」

「術式として酷く不完全だ。一度では効果がなかったんだろうね。重ね掛けされている」

「重ね掛けだと?」

「ああ。だけど二度目も不完全だから、十分な効果はないね。それでも、言うことを聞かせるには十分だろうけど」


 トーマス様の話では、誰かが見よう見真似でかけたのではないかとのことでした。


「エンゲルス先生はご存じだったって……」

「ああ、先生なら一目見たらすぐにわかるだろう。俺にだってわかったからね」

「じゃ……どうして教えて下さらなかったのでしょう……」

「さぁ、そこは先生に聞かないとわからないなぁ。ただ……」

「ただ?」

「推測だけど、その時は解呪しない方がいいと、そう思われたんじゃないか?」

「それって……」

「例えば、相手に解呪が知れるから都合が悪いとか?」

「なるほどな」


 ウィル様とトーマス様は納得されたようでしたが、私には理解しがたいものした。私を従わせようとして術をかけた、解呪したら直ぐに相手にわかる、先生はそれを都合が悪いと考えた、と。


「解呪してエルーシア嬢が言うことを聞かなくなると都合が悪いと、そう思う者が近くにいたということか……」


 ウィル様が腕を組んで考え込まれましたが……


(ええっ!? そ、それって……)


「エルーシア嬢の家族、だろうね」


 トーマス様が苦笑いを浮かべながらそう言いましたが……


(まさか……それって、お姉様……?)






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