03 充電
というわけで、ピカピカ新車の愛車と共にお仕事がんばっちゃうよ、
などとテンション爆上げしていた僕ですが……
肝心のお仕事が、ぱったり来なくなりまして。
どうやら各ギルドなどに、"若仙人"への依頼は極力控えるように、との強力な通達がなされた模様。
いや、極力控えるなんてもんじゃ無く、完全封殺ですよ、この状況。
つまり、そんな無茶なことが出来る権力者の恨みを買った、と。
もちろん心当たりはありますとも。
ふーん、こう来るか、ってなもんですけどね。
完璧に干されてるのは僕だけ。
スーミャたちの冒険者活動にも、プリナさんたちの日常生活にも、
モノカさんやカミスさんたち友人の方々にも、
影響は全く何も無し。
上手いよね、このやり方。
僕が家族友人に手出しされたら黙っちゃいない、ということは、
そっちにちょっかい出さなきゃ僕は動かないってこと。
敵ながらあっぱれ、かな。
というわけで、イシン サイリ、
異世界引きこもり生活、第2章、開幕。
あれ、第3章だっけ?
やらかしが多すぎて、いちいち覚えてないっての。
……
終日、家に引きこもっているわけではないのです。
ナルンたちとお散歩したり、
プリナさんのお買い物のお供をしたり、
『ロージー』の改良案をアリシエラさんの工房で話し合ったり。
つまり、家長として今 出来ることを、粛々と行うのみ。
なんと言いますか、悠々自適な充電生活、でしょうか。
この状況、家族みんなが心配、
……してませんね、これ。
「引きこもりじゃないでしょ、今のサイリ」
「ちゃんとやれることやってるよね」
さすがスーミャ、分かってるね。
「目の届かぬ所でやらかすでも無く、目の届かぬ所に引きこもるでも無い」
「今 出来ることを、しっかと自身で考えて動いている」
「確かに、かつて無いほどの安心・安定っぷり」
以前の僕って、そんなに困ったちゃんでしたか、イリーシャさん。
「やっぱりお昼寝は大事だよね、うん」
まさにその通りです、フィナさん。
最近きっちりお昼寝タイム出来ていませんでしたものね。
『毎日お散歩いっぱいできるから、すっごくうれしいよ、ボク』
今度『ロージー』とスピード勝負しようね、ナルン。
『スピード勝負は望むところ、ですが、障害物競走は苦手であります……』
森の中はナルンの独壇場だからね、ゾディ。
今度、見晴らしの良いケストーネ砂丘で、思いっきりブッ飛ばそうぜ。
『皆さん本当にお元気で、生き生きしていらっしゃる』
チュースさんも、やりたいことがあったら遠慮無く、ですよ。
もちろん、書庫での読書ざんまいも大歓迎です。
「……あまり家事姿を見つめられると、困ります」
えーと、せっかくの機会ですので、プリナさんの勇姿を目に焼き付けようかな、なんて。
つねり
いてぇ!
「家庭内ストーカー、良くない」
「親しき中にも礼儀アリアリ」
「乙女との距離感、夢々違えるべからず」
つまりは、やたらとツネツネしてくる距離感近すぎなモルガナさんは、乙女では無い、と。
つねりっ
イッテェ!
こんな感じの、プレ引きこもりライフなのであります。
この穏やかな生活、
ある意味、あの人に感謝、かな。




