15 勢い
ベッドから身を起こしたのは、花のようにたおやかな乙女、
ってか、シュマルセさん。
その手を優しく握る、逞しい若者、
ってか、御老人。
もしもし、クロ先生とモルガナさん。
僕らはいつまでここにいればよろしいのですか。
めっちゃ場違い甚だしいですよね。
ってかスッゴいおじゃま虫ですよねっ。
「私には主治医としてシュマルセさんを診守る責務がある」
「決してデバガメしているわけでは無いのだよ」
はいはい、りんごほっぺクロ先生は可愛らしいですね。
「私にも"導き手"として事の顛末を見届ける責務あり」
「っていうかこの状況、最後まで見届けねば、乙女の名折れなり」
はいはい、乙女乙女。
じゃあ僕は主治医でも乙女でも無いので、そろそろおいとまさせてもらいますからね。
モルガナさんは後でクロ先生に送ってもらってくださいな。
いいのかな、こんなアレな感じで。
そりゃあ人生勢いが大事ってこともあるだろうけどさ、
こんな展開、子供向けの絵本でだってやらないっての。
それじゃ、行こうか、ゾディ。
『ゾディは、貴重ならぶらぶシーンを見ることが出来ず、ご機嫌斜めなのであります』
はいはい、今度ああいうシーンに遭遇しそうな時は、
僕が頭にゾディを乗っけて行くからね。
『では『マスターサイリがなんでも願いごとを叶えちゃう』権利は、それに行使するでありますっ』
……忘れずに覚えといて。
『『転送』先はご自宅でよろしいでありますか、マスターサイリ』
いや、少し走ろうか、ゾディ。
頭、冷やそうぜ。
『了解、行き先不明のまま、街道を安全運転にて巡行するでありますっ』




