01 自由
『リヴァイス 61 若仙人と交錯する一途な信念』の続きで、
『若仙人』サイリのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
こんにちは、イシン サイリです。
先日のノルセリエへの長旅で、乗り物がある生活の楽しさを知りました。
徒歩や『転送』での移動とはひと味違う、移動ペースを自在に操れる楽しさ、とでも言いましょうか。
モノカさんの『シブマ1号』やカミス師匠の『スマキ3号』のような幌馬車。
アランさんの『マリネ1号』のようなオートバイ。
いいよね、自由を楽しめる乗り物って。
というわけで、
僕も、イカす移動手段が欲しくなっちゃったわけで。
そうなるとやっぱり、天才魔導具技師アリシエラさんにおねだりしちゃうわけで。
「むふ、お待ちしておりましたよっ、サイリさん」
「いや、"滅殺公人2号『リサイリー』"さん!」
えーと、もしかして、おねだりバレバレでした?
「前々から、いまかいまかと待っチングまさこ先生ッ、でしたよっ」
もしかして……
「はい、そんな"わがまま仙人"なサイリさんには、コチラ!」
それって『ゾディアック』コール用魔導具の『サイン』!
……の色違い?
「この真っ赤っかな『サイン』こそ、サイリさん専用魔導車両を呼びだすための専用コール魔導具なのですっ」
「さあ、ポッチをポチりと押しながら、『コール! 『ロージー』!』と大きく叫ぶのです!」
えーと、ゾディは、コールする時はポチるだけで、叫ばなくても良いって……
「大きく! 叫ぶのです!」
……はい。
ふう……
「コール! 『ロージー』!」
……うはっ、スゲエ。
真っ赤な、サイドカー。
じゃないぞ、コレ。
前は一輪、後ろは二輪。
トライク、だっけ。
『くどいようですが『サイン』を操作するだけで良いのです』
『こういう場面で大きく叫びたくなるのは、マスターサイリの性癖、と完全に理解』
もしかしてその口調は。
『はい、あなたのガーディアンエンジェル『ゾディ』、推参です』
……
「サイリさんの運転テクニックを考慮しまして、より手厚いサポートが必要であろうと判断したのです」
「もちろん『ロージー』専用の新たな魔導知能の開発も考えましたが、サイリさんには既に気心知れた相棒がおりますし」
「つまりは、サイリさんには『ゾディ・ロージー』が最適解なのであります!」
すっごくうれしいです。
アリシエラさんもゾディも、ありがとうございます。
ただ、真っ赤なトライクに真っ白なヘッドドレスが付いてるっていう、なんともシュールな……
「とりあえず、乗ってから四の五の言いやがれっ、ですっ」
……ごもっとも。
……
この異世界に来てから何度目か忘れたけど、
死ぬかと思った……
ゾディに言われるまま、『ナビ』画面から行き先を選んで全自動モードを選択した途端、
身体中がわけ分からん状態になって、気が付くと目的地。
…‥吐きそう。
『これが『ゾディ・ロージー』の全力でありますっ』
悪いけど、全然楽しくなかったよ、ゾディ。
『酷いです、マスターサイリ』
えーと、全自動モードで動く時は、前もって移動ペースを聞いた方が良いと思うよ。
さっきのペースは、間違い無く、人類向きじゃない。
で、今からアリシエラさんの所に戻るけど、乗ってる人が景色を見る余裕があるくらいのスピード、OK?
『OK!』




