風は飛ぶ
ナニカを乗せて
風は飛ぶ
窓を閉めていたら
目には見えない
それだけども
風は飛んでいる
風は吹かない
風は飛ぶ
閉め切った窓が揺れなくても
乗せたナニカが目に見えなくても
存在していないように見えて
風は飛んでいる
吹き荒れてやれば
存在をわかってもらえるのに
なるべく静かに
風は飛ぶ
手に当たっても気づかれないほど
誰の迷惑にもならない遠慮がちさで
泣いていた男の子の頬が
いつの間にか涙乾いている
困った顔をしていた女の子が
いつの間にか背中押されている
お礼も言わせず次の場所へ
風は飛ぶ
飛んでいなければ存在できないのだ
風は飛び続ける
私は飛ぶ風の見える人でありたい
それはやはり決して目には見えないけれど
感じることはできるはず
感じることができるように
いつでもこのてのひらを
空中にさらしておこう
窓を開けておこう
いつでもてのひらを
敏感にさらしておこう