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十三話血戦の西園寺邸

今しばらくおつきあいくださいましぃ


  「深雪、警察庁へはあの二人だけで行かせたのか?」

 今回の敵の本丸と睨む、警察庁長官西園寺肇宅へと向かう車中。自分の車に同乗してきた、妻、深雪に龍二が問いかけた。


「ええ、あの子の意見を尊重することにしたの。康太のね……あの子、里緖を実の姉だったと認識してからすっごく大人になったのよ。今回だって、姉さんは俺が守るから、母さんは親父を頼むって言ってくれたんですよぉ……嬉しいじゃありませんかぁ暴力、果ては殺しにまで手を染めていたあの子が、こんな優しい子に成長してくれたんですものねぇ……」


「ああ……そうだな。ひとえに母親としてのおめぇの賜物だ。おめぇはこの足で俺の住み家で待っててやってくれねぇか?子供達の無事の生還を。あいつらぁ生還したときによぉ家に誰もいねぇじゃあちとかわぇそうだからよ……」


 内妻皆上深雪の言葉を聞いたあと、彼は車の助手席に座る彼女に軽くだが彼女が気を失うには充分な力で彼女の延髄に手刀をふりおろした。


「ア……あんた……何故……」


 彼女はそういうとその身を龍二に委ね意識を失うのだった。


「後は頼んだぜ……おまえ達に逢えて俺ぁ最高に幸せだったよ。ありがとうな深雪……」

 彼はそういうと気絶した深雪を車内に残て、一人敵陣の本丸へと歩みを進めるのだった。


「やっぱりな……これでやっと理解できましたよ。大人しくて温厚な優弥が冷酷な殺人鬼に変わっちまった訳がねぇ……この一連の騒動真の黒幕。あなただったんですね……西園寺肇警察庁長官!」

 龍二はそういうと隠れる事無く正面から堂々と西園寺邸へと乗り込むのだった。


「何だね?君は?いきなり何のことわりもなく私有地に入ってくるとは無礼な奴だな。何の目的でこんな無礼を働くかは知らんがせめて名前くらい名乗りたまえ」

 龍二の侵入に気づいた西園寺肇がそう威圧的な言葉を発して、共に談笑していたもう一人の男を建屋の中に避難させようとした時、再び龍二が建屋に逃げこもうとする相手方の男の足を問答無用にサイレンサーを装着した拳銃で撃ちぬき静かに語りだした。


「元警視庁組織犯罪対策部。捜査三課、皆上龍二警部です……更に言えばそこに倒れている元マトリのクズ警官の上官ですわぁ……そして……御子息の殺人行為を隠れ蓑にして、そこの元マトリのクズ警官栗浜悠介と連んで極悪非道の悪行を働く。クズの中のクズ……西園寺肇警察庁長官!あなたに死の鉄槌を下しに来た……反逆の堕天使とでも名乗っておきますかぁ……」


 龍二は静かに声を荒げるでもなく淡々と抑揚の無い声音でそう言うとコートの下に隠していたサブマシンガンを辺り構わず乱射するのだった。


「バカか貴様わぁ警察庁長官であるこの私にこんな無礼を働いてただではおかんぞ!目にもの見せてやるから貴様の方こそ覚悟するんだなぁ!」

 彼は激昂したように言うと五十人弱のエスピーを呼び集め龍二に対して一斉射撃を命じるのだった。

 しかし、それは元自衛官で幾度となく世界各国に先見部隊として送り込まれ幾度となく死地からの生還を繰り返した彼の敵ではなく五十人弱のエスピー達は瞬く間に彼の操る銃火器の餌食になりものの五分程度で完全に龍二一人に圧倒され中には職務を放棄して逃げ出す者まで出てくる始末だったのである。


「わ…悪かった…私が間違っていた…職務も辞任して素直に出頭しようだから…命だけは助けくれないか?なぁ…頼むよ…皆上君」

 彼、皆上龍二の圧倒的な戦闘能力を間近に見て西園寺肇は怯えたように後ずさりながら言った。

「父さん!いや、西園寺肇警察庁長官!あなたの悪行も今宵限りだ。今まであんたのその傲慢なやり方に俺は幻滅を感じ殺人行為と言う間違った方向に進んでしまった。あんたに反抗するためになぁ!」

 突如としてこの修羅場に参入してきた四人の人影。先頭に立つ細身で長身の男性がそう言って龍二の対面に立つ西園寺肇に拳銃を向けるのだった。


「ゆ……優弥……お前まさか、本気で父親である私を……本気で殺すつもりか?こいつらに何か吹き込まれたんじゃあるまいな。だとしたら早まるな優弥。私が全力でお前を守ってやるから……」

 実の息子が実の父親に拳銃を向ける行為に彼はさらに動揺を隠せず支離滅裂な事を喚き散らすのだった。


「巫山戯んな!あんたはいつもそうだ。自分の身が危うくなれば実の息子だって平気で見殺しにするし、何より、困るだよな……てめぇの都合しだいで人の生き死にまで図られたらよ……」


 彼はそういうとずいずいと近寄る父親をはね返すように更に殺気を強めて拳銃を握るのだった。


「ふはははは、バカかお前は。日本国内全ての警察機関の頂点、警察庁長官だぞ、私は。その家計に生を受けたお前が親である私の言いなりになるのは当然の事だろう。それが嫌だと言うなら西園寺家の恥さらし息子として父親である私が直に引導を渡すまでの事!そこへ直れこのバカ息子がぁ!」

 優弥の強気が隠していた彼のその欲望丸出しの感情に火でもつけたかのように彼は後ろ手に隠していた拳銃を出し躊躇無く実の息子に向けてトリガーを引こうとした刹那だった。彼が後ろ手に拳銃を隠し持っている事を先読みしていた里緖が彼の手目がけて一本のスローイングナイフを投げるのだった。


「優弥さん!こんな外道もうあんたの父親なんかじゃないよ!あんたが無理ならあたしがぶち殺す!」里緖には息子の優弥以上に身勝手で傲慢な態度を改めないばかりか実の息子を殺そうとする父親と言うのが彼女には自分を見失うくらいの怒りの感情として出たのだろう。彼女はもう二度と使うまいと心に決めていた愚連隊時代の彼女の愛用武器の一つであるスイッチナイフを出すのだった。カシンと乾いたスプリング音と同時に彼女の手にしたナイフから綺麗に手入れの施された銀色の刃先がはじきだされるのだった。


「ありがとう里緖……俺なら大丈夫だ」


 そう言って里緖の後ろで立ち上がった彼からは先ほどまでの父親の権力に屈指かけた青年の瞳とは明らかに別の何かが憑依したかのごとく彼の瞳は未来永劫の漆黒の闇を移しており、周りの人間の行動を一瞬にして凍てつかせるのだった。

「里緖…そのナイフを借りるぞ…」

 彼は無感情にそう言うと里緖の手からそっとナイフを取ると国家権力と欲望に支配された化け物と化した実父西園寺肇と静かに対峙するのだった。

 そして、勝負は一瞬の事だった。彼の漆黒の闇を纏った瞳に意識を奪われた彼はその間、僅か一秒と掛からなかったかもしれない勢いで鮮血海にその身を委ねていた。


「お見事です!西園寺優弥警視監…」皆上家の当主皆上龍二の言葉を合図に四人は揃って優弥の前に両の手を差し出すのだった。

「皆上先輩…それと御家族のみなさんには感謝してもしきれないほどの大恩を私は受けてしまったそんな方々を刑務所に送致する事など今の私には到底不可能な事それよりも…これからの警視庁、警察庁の復興にみなさんのお力を拝借できませんか?」彼がそう言った時、現場が急変するのだった。

「話しはまたあとだ!とにかく今は五人で無事逃げきることだけを考えよう」

 龍二がそう言って優弥の言葉を遮った時だった。ものすごい数の警官達と特殊部隊までもがこの西園寺邸に押し寄せようとしていたのである。


「これが…親父の言ってた国家権力の恐ろしさなのか?龍二さん!この家にも地下シェルターがありますみなさんはひとまずそこへ避難してください!」

 周りの状況を瞬時に判別して優弥が言った。

「ばぁか、んなこと出来る訳ねぇだろ?俺達はもう仲間なんだ全員で逃げきる!」

 龍二がそう宣言して、五人はひとまず家屋に設置された地下シェルターに避難しようとした時だった。一人の男が五人の行く手を阻むように家屋の玄関口に立ちはだかった。

「おぉっとそうはさせねぇぜ。あんたのやった事はどんな犯罪より罪の重い親殺しの大罪だ。ぁそれと……俺のこれまでの計画を全て無にしてくれた後の四人。全員道連れだぁ!てめぇらだけ助かろうったてそうはいかねぇよ!」


 そう喚き散らしたのは先ほどまで意識を失っていた栗浜悠介だった。


「ああ……あなたの事忘れてましたよ……栗浜悠介元巡査長……けどね。私達はあなたの道連れになる訳にはいかないんですよ……」


 彼のその下卑た挑発行為もその時修羅と化した五人には何の意味もなさず、彼西園寺優弥がさらりと言い放った一言を合図に五人の修羅は一斉に彼に対し牙を剥くのだった。


 そして、特殊部隊による催涙弾攻撃と同時に家屋周りに待機していた警官隊が一気に西園寺邸へとなだれ込んでくるはずだった。

 しかし彼等と五人は対峙するだけで長い膠着状態のままだったのである。


「あぁあ、ギリまにおぅたわぁみなさんご無事だっか?到着おそぉなってしもてえろぅすんまへん。ウチ大阪府警捜査四課から来た安西弥生言いますぅみなさんを助けにきましたんやぁ」

 あわや一触即発の膠着状態の中、間の抜けた感じで眼鏡をかけた大阪弁訛りの強い一人の女性刑事が警官達の人並をかき分けて姿を現した。


「や…弥生さん?何で大阪府警のあなたがどうしてここに?管轄外のはずですよね」

 彼女の出現に五人の中で深雪だけが異様な反応を示すのだった。


「大阪府警捜査四課特別越境捜査隊より参りました安西弥生警部であります!」

 先ほどまでの間の抜けた感じなく彼女は深雪達の前姿勢を正すとそう言って敬礼するのだった。


「特別越境捜査隊の事は確かにあたしも聞いた事があるわ…でもそれは本当に極秘組織でありしかも極秘依頼があった場合のみに発動する機密機関のはずよね…」

 深雪がそう言ったのは彼女の出現により西園寺邸での銃撃戦を無事回避して、あの時の店レストランバーラビリンスにて酒を飲んでいるときだった。


「うぅん……しゃあないなぁ。けどこれほんまに、内緒やでぇ。真理子さんと洋子さんゆうことにはなってねんけど……ほんまの依頼者は今回の騒動で死んでしもたウチのじいちゃんなんや……」

 最初はやれやれ感全開で話し始めた彼女だったが本当の依頼人が自身の祖父だと語る頃にはいつしかか細い声音に変わり、彼女はまるで涙をごまかすかのようにグラスの中の琥珀色の液体を一気に飲み干すのだった。


「……そうだったんだ……ごめんね弥生、野暮聞いちゃったね。けど、本当にありがとう。あんたが来てくれなかったらあたし等今頃どうなってたかわかんないしさ……」


 深雪はそういうと彼女の空になったグラスに何杯目かのバーボンを注いでやるのだった。


「そんなのよ……あの人の性格からしたら容易に想像つかねぇか?超が付くほど不器用でそれでいて弥生さんの事んなりゃあ必死になる……めちゃくちゃいい親父さんだったと思うぜ。ヤクザなんかにゃあ到底なりきれねぇ優しい人だったからよ。安西礼二さんは……けどよ、ひとつだけ引っかかんだよなぁ。いくら特別な組織だからってよ、警察関係者は血筋が濃いぃ人間の捜査には加われねぇはずだぜ。普通ならよ。」


 血縁関係の話題になった途端に今の今まで冗舌だった弥生が急に無口になった事に、この店に集った全員が違和感を覚えるのだった。


「確かに康太の言うとおりよね……何が狙いなの?弥生さん」

 今の今まで、和やかな雰囲気で彼女の話しを聞いていた深雪が弥生の顔を覗き込むようにして問い詰めた。


「……さすが四課の夜叉姫のお子さんやねぇ、感が鋭いなぁ。 あんたが康太君?で、そちらさんが里緖ちゃんかいな?じいちゃんのゆうてたとおりのえぇこやなぁ……せやからウチにこないな頼み事したんかもなぁ……じいちゃんはあの女にはめられたんや二代目風祭一家総長風祭洋子に……あの女自分の親父さんが昔の抗争で負った古傷と持病の肝硬変悪化さして身動き取れんようになったから娘の自分が次期二代目やゆうてのたまってたみたいやけどほんまはちゃうらしいねん…真理子さんの話しやとあの女実の父親をも亡き者にして一家を自分の思うままに操ろうとしてたんやないかってゆってはってんけどウチもそんときはまだやっと刑事課配属になったばっかりで日々の公務の忙しさにカマかけてあんときの事忘れかけててん……そんときやったかなぁ先代の総長さんから匿名のタレコミがあったんよ娘の野心にわしの腹心の幹部が気づいたさかいそれを守ったってくれゆう内容のな……せやけど、当時のウチにはどないすることもできひんかった……せやけどそれからしばらくしてじいちゃん本人から無事に東京の兄弟分のとこ逃げたゆうて連絡もうたんよそれが康太君と里緖ちゃんやった訳やぁじいちゃんあんた等二人んことえらく褒めてたでぇ若いのに義侠心に熱い二人やゆうてな。じいちゃんなぁ、さっき康太君ゆうたとおりで優しすぎて極道には全く向けへん人やってんけど人を見る目ぇと義侠心だけはどないな修羅場くぐってきた極道モンにも負けてへんかったでぇ…せやからやろなぁ先日亡くならはった風祭一家初代風祭源治氏に気にいられて腹心の幹部にまでならしてもらえてんやろなぁけど野心家の洋子からしたら一刻もはよぉに消し去りたい存在やったのも事実やろなぁ裏稼業を最後と決めてたあんた等には申し訳ないけど最後に一つだけこれでウチの依頼受けてもらわれへんやろか?」

 時おり言葉を詰まらせながらも、ここに至るまでの経緯を語り彼女は六人が座る店の一番奥にあるボックス席のテーブルの上に仕事の依頼料として祖父の安西礼二から預かっていた現金五千万の入ったジュラルミン製のトランクを差し出すのだった。


「わかった…依頼は引き受けようただしこの依頼姉さんと俺の二人だけで受ける事にするこの依頼料は俺と姉さんで五百万づつもらう事にする。残り四千万は警視庁警察庁の復興に費やしてほしい…それから母さん親父俺の受け取り分は二人との手切れ金に当ててくれないか?これから警視庁と警察庁を立て直そうとする二人の子供が殺人犯なんて洒落にもなりゃしねぇからよぉ…じゃあ俺と姉さんはこのまま広島に行くよ…」裏稼業を引き受けると決めた時康太は父親と母親に親子の絶縁を申し出るのだった。


「犯罪者でも何でもいい…とにかく生きて帰ってきてお願い…親子の縁も切らないわ!必ず生きて帰ってきなさい二人ともいいわね!勝手にくたばったりしたら承知しないよ…」

 実の息子である康太から告げられた親子の絶縁宣言、四課の夜叉姫冷酷非情の刑事と言われた彼女だが血の繋がりは無くとも心と言う絆で結ばれた二人の子供の母親となった今、彼女の口から出た言葉は里緖と康太二人の子供の心に鋭い刃物のように突き刺さるのだった。







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