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幸せな朝

「友一~。今日は帰ってくるの遅いの?」

「あ~。そうだなぁ。多分、遅くなると思う」


友一は会社へ行く身支度をしながら、私の言葉に返答をする。

そんな彼の姿を視界にとらえながら、私は彼のためにお弁当を作っている。


(今日のお弁当には友一の好きなハンバーグをたくさん入れちゃお♪)

「ふんふふ~ん♪ふふ~ん♪」

鼻歌を奏でながら、お弁当を作る私に気付いたのか、友一はこちらに視線を寄せる。

「ははは、本当にお前ってその歌好きだよなぁ。」

「えへへ。」


照れ笑いを浮かべながら私の心は満足感でいっぱいだった。


友一は何かに気付いたのか、こちらに近づいてきた。

「友一、どうかした?」

どんどんと近づいてくる彼に胸がどきどきと高鳴ってくる。

結婚してもう1年も経つのに、彼が近づいてくるのには慣れない。

心臓の鼓動が高鳴りすぎて、爆発しそうだ。


彼の顔が私の頭の上に置かれた。

かと思うと、思い切り後ろから抱きしめられる。


ドクンドクンドクンドクン

心臓の鼓動が彼にも聞こえてしまうのではと思うほどに響く。


「顔を赤くして、本当にお前は可愛いよ。

だから俺はお前を好きになって、こうやって結婚した。」

彼から伝えられる唐突な愛の告白に私の顔はゆでだこのように赤くなってしまった。


「ゆ、友一・・・。わ、わ、私もす、好き!!」

伝えられた愛の言葉には愛で返すもの

私は恥ずかしがりながらも、必死に好きだという意思を彼に伝える。


彼の頭が私の頭から離れていく。

そしてグイっと私の肩を掴んだ彼は、私を向かい合わせにする。

目を閉じる私。

次に訪れるであろう感触に全神経を研ぎ澄ます。


しかし、その思い描いている感触はいつまでたっても訪れてくれやしない。

恐る恐る目を開ける私。


私の目に映った光景、それは

友一がお弁当の中からハンバーグを箸で掴んで口に入れるところだった。


「あ、バレた…。」

友一は申し訳なさそうな顔をする。


「いやぁ、やっぱり出来立てのお前のハンバーグはうまいな。」

続く彼の弁明のような言葉。


「そ、そう。それなら良かった・・・。」

キスをしてくれると思って待っていたのにしてくれなかった。

ついつい素気ない態度を取ってしまう。


友一はそのまま私から離れていくと、身支度を再開した。


(はぁ、キスして欲しかったなぁ)

そんな想いを抱えてしまった私は先ほどまでの楽しくて

ドキドキしていたこの朝の時間が嘘のようにしょんぼりしてしまう。



「それじゃあ、行ってくるな」

友一が玄関から私を呼ぶ。


(友一なんてキライよ。あんなことまで言って、

どうせハンバーグ目当てだったんだわ。)

玄関にややムスリとした表情で来てしまう。


(あ、友一のネクタイちょっと歪んでる。もうしょうがないなぁ。)

友一のネクタイを正そうと、つま先立ちになった。


「思った通りだな」

「え、な」


私が友一の言葉に反応した瞬間、彼の唇が私の唇を奪っていった。


「うん。やっぱりお前の作るハンバーグよりも、どんな料理だって、

その唇以上に美味しいものはないな。好きだよ。

じゃあ、また続きは帰ってからな。」


友一はその言葉と共に玄関のドアを開き、外へ出ていった。



残された私は友一の唇の感触に顔を赤らめながら悶えてしまう。

(前言撤回。やっぱり友一のこと、大好き・・・。いや愛してる。)


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