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実家へ

店をあとにした私たちは、馬車をつかまえた。


「サーシャ公爵家までお願いいたします」


サーシャ公爵家は私の実家だ。

本当はエイトの転移魔法が楽なのだが、エイトは馬車にのることが好きな『乗りオタ』なので馬車でいく。


「馬車は気持ちいいね!この揺れ、振動がたまらないよ!」


ご機嫌なエイトに思わず顔がほころぶ。


馬車はほどなく、町の中心地から20分ほど離れた郊外地に着いた。

そこに私の実家の別荘がある。

現在、両親は領地経営を兄夫婦に任せて隠居している。

隠居理由は私の聖女剥奪と追放による心的疲労と言われている。

…表向きは。


「お帰りなさいませ!」

門番が笑顔で迎えてくれる。


私は馬車を降りると屋敷に入る。

懐かしい薔薇の香り。

ああ、帰ってきた。


「アデル、お帰りなさい」

執事に案内され、両親が出てきた。


「白竜様もごきげんうるわしゅう…」

両親はエイトの正体を知っている。

エイトは私を拾ったあと、すぐに実家に送ってくれた。

もちろん人型で。

両親は泣いて喜んでくれた。

しかし、どこから情報がもれるかわからないので一緒には住めない。

そこで私はエイトと住み、竜の家から最も近いこの屋敷に両親が引っ越してきたのだった。


「ただいま、お父様、お母様」

私たちは抱き合った。


エイトは興味なさそうにソファに座って紅茶を飲んでいる。


「これ、おみやげ」

私は町で買ったブランデーケーキを出した。

父の大好物だ。


「いつもありがとう。ハンス、すぐ切り分けて」

母は執事のハンスにケーキを渡す。


「その後、王都はどうですか?」

私もエイトの横に座る。


両親は顔を見合わせた。ため息をつく。


「王様の容態が芳しくない。次の王には王子ルーカス様がつくだろう。」


私の元婚約者か。

私もため息をついた。

「ルーカス様はお変わりなしですか?」


「ああ、ラピーヌ嬢に骨抜きだ。政務はすべて放り投げて二人で楽しまれている」

父がこめかみを押さえる。


「あの方が王になれば、クーデターが起きるだろう」


私はドキッとした。

クーデター…、内戦。

たくさんの犠牲がでるわ。


「そんなめんどくさいことしなくても僕が滅ぼしてあげるよ。僕のアデルをあんな目にあわせたやつらと、その国なんて」


エイトがブランデーケーキを食べて赤くなりながら言い切る。


「あら、エイト!ブランデーケーキ食べちゃったの?」

私は慌てる。


「あでる…」

エイトはとろんとした目で私に抱きつく。


「アデル、ふわふわいい匂い。大好き。」


エイトはそのまま私の胸の上で眠ってしまった。

ハンスを呼んで部屋に連れていってもらう。


エイトがいなくなったあと、私はふと思い出して父に聞く。

「お父様、ボンネルンド家って知ってる?」


「お前、そんなことも知らないのか?軍部の第一将軍だ。クーデターを起こすとしたらあの家だろう」

父はあきれたように言った。


「今日、アーサー様が町で喧嘩なさってたわ」


「アーサー卿が?町にいるのも珍しいが、喧嘩とはまた。争いを好まない穏やかな方なのに」


父と私が首をかしげたとき、ハンスがあわてたように飛び込んできた。


「国王陛下が崩御されました!」






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