プロローグ
少年竜はある日一人の少女を拾う。
きまぐれに暮らしてみたら、思いの外心地がよく…。
「僕の癒しは誰にも渡さない!」
竜と少女がいちゃラブする話です。
私の名前はアデル。
栗色の髪にすみれ色の瞳をしている16歳のごく普通の女の子だ。
一年前に国を追われ、魔物の森で行きだおれていたところを救ってもらった。
誰に?
「アデル」
私は声のほうを向く。
目の前には美しい白竜がいる。
銀にも見えるキラキラした鱗に群青の瞳。
その目にきょとんとした顔の私が映っていた。
「僕の話聞いてた?」
竜はぷんっ、と頬をふくらます。
「ごめんなさい、エイト」
私はエイト…、エイトアラーの鼻をなでた。
「昨日、きれいな花畑を見つけたんだよ。いこう?」
エイトは目を細めながら、甘えるように私の体に顔を寄せて頬擦りした。
「それは素敵ね」
私はエイトの顔を抱き締めた。
エイトはまだ子供の竜だそうだが、顔だけで私の背丈はある。
「お弁当持って行きましょう。何がいい?薔薇苺のジャムサンド…」
「クロテッドクリームとビスケットも!」
エイトは嬉しそうにかぶせてきた。
長い優雅な尾が揺れている。
バタン、バタン!
地面に打ち付けられるその振動で私は立っているのがやっと。
「きゃ」
「わ、わ、ごめんね!」
エイトはしゅんとした。
かわいい。
竜は聖獣で、伝説の生き物だ。
神様のように扱われている国もあるという。
その竜がこんなに愛らしい生き物だなんて。
「エイト大好き」
私はエイトの鼻先にキスした。
「やめてよー!僕は子供じゃないんだから。アデルは慎みを知らないな」
エイトは照れて頬を染めた。
私はそれがかわいくてキスしながらぎゅっと抱き締めた。
「あなたに会えて良かった。拾ってくれてありがとう」