初めてのダンジョン
あーテステス
俺は今スティア農園と呼ばれている場所にいる。
なんと、なんとなんと!
ここは農園を内包した巨大なダンジョンだそうです。
ハイハイ、もう俺はそんな事では一々驚きません。
魔王宣言に勝るものなどこの世にあるのでしょうか?
イヤイヤそんなものあるわけない、あってたまるか。
とゆうわけで俺は今レアの経営する農園にいます。
見渡す限り植物の世界でパッと見では終わりが見えない。
けど第三階層って言ってるしこの何倍もあるのだろう。流石魔王様だ。
「ケンスケ、おーい聞こえているのかー?」
「あ、スマンちょっと考えごとをしてて」
レアの声に回想から引き戻される。
「最初からそんなんではすぐに倒れてしまうぞ。じゃあもう一回説明するからちゃんと聞いててくれよ」
「わかった。なんの話をしてたんだっけ?」
「農園の、だ。見ての通りここは巨大なダンジョンで出来ている。今居るのは第三階層だ。一、二階層は警備が重視なので植物の生育をしているのはこの階層からだ」
「で、どんだけの階層があるんだ?」
「一応九九階層だな。それ以上は維持に余計なコストが掛かるからこの数でやりくりしている」
(そんなあんのかよ)
「一つ一つの階層の大きさはどのくらいになっているんだ?」
「二百キロ×二百キロってところだな。上には空もあるだろう。階層が変わると次元も少しだけ変わって気候も地形も変わっているぞ」
「俺にはスケールがでか過ぎる・・・」
「まぁ魔力が使えるようになれば階層の移動も魔方陣を使う必要はなくなる。取り敢えず簡単な植物でも作って貰おうかと思ってここに来たんだ」
「簡単な奴って?」
これまでの流れから本当に簡単なものが出てくるとば思えない。
とゆうかこの世界で植物っていったらロクでもないものしか思い浮かばない。
「ああ、やってもらうのはエイルという植物で、これは回復薬の材料にもなるものだ」
そう言ってレアが手をクイっと動かすと種と植木鉢がふわふわと漂ってきた。
「まず私が手本を見せる。これを三日以内で開花させられれば次のステップに移る」
最初の仕事は超スピードで花を咲かす事らしい。
「よく見ててくれ」
そういうとレアは持ってきた種を植木鉢に入れた。次の瞬間レアの手が光ったと思ったら早送りを見ているかのように、芽が生え茎が伸び花が咲いた。
(どうなってんだこれー)
明らかに魔法を使っていた。まだ俺は魔力の使い方について学んでないし、三日でこれをやれなんて無理な気しかしない。
「本当は魔力で急成長させると栄養などが下がってしまうんだが、この花は特定の魔力の波と量がある場所で成長しやすい。植物の育成と魔力の使い方を学ぶには丁度いい」
「ほぇー」
「すぐにやれとは言わない。今日の午後の授業を受けてそれからやって貰おうと思ってる」
「今日はこれだけか?」
まだ三十分も経っていないぞ
「いや、今のは明日以降にやることの説明だ。今日は農園全体の案内だ」
「九九階層もあるんだろ?終わるのか?」
俺は少なくとも終わる気がしない。
「全て見る必要はない。簡単な説明と重要な部分だけ今日は案内するつもりだ」
階層ごとに気候も地形も変わるって言ってたしプチ旅行みたいになりそうだな。
「じゃあ順番に説明していくぞ」
「ああ、頼む」
◇◇◇
それからお昼近くまでひたすらダンジョンを回っていった。
レアに連れられそれぞれの階層転移しながら説明を受けた。
どうやらこのダンジョンは位置的には地下にあるらしいが、ダンジョンそのものが亜空間のようなものらしいので入り口以外一切場所を取らない便利なものらしい。
ここのスティア農園を含めダンジョンはほとんど階層が増えるごとに空気中の魔力濃度と精霊子が高くなるらしい。
ちなみに精霊子とは空気中に漂う精霊の源だそうだ。
俺のようにまだ魔力と精霊子に抵抗のない人間には身体に悪影響らしい
そのため今回は五十階層までの案内だった。
一、二階層は近くにある正式な入り口から野良の魔物が入ってきて野菜を荒らさないように魔導人形が警備に当たっていた。
三メートルくらいの大きさで俺くらいならペチャンコに出来そうだった。
俺が最初に行った第三階層はこの世界で一番平均的な気候と地形、魔力に精霊子を忠実に再現しているそうだ。
なので一番簡素な植物が植えられているそうだ。
三〜七階層はほとんど同じらしい。
ただ同じ階層でも少しずつ魔力などの調整をしているらしい。
他は少し省略するが大草原や山脈、樹林、砂漠などがあった。
まだまだ空の上とか、地底のマグマとか、だだっ広い海とかあったけど省略だ。
何処を見ても想像の斜め上をいっている。
レアの言う通り気候も変わっていて晴れだったり雷雨だったり、はたまた酸の雨が降ってきたりした。
だが俺的には五回目くらいの転移で行った場所にトラウマを呼び覚ます化け物がいてそれどころじゃなかった。
色々揃っていると言っていた通りに。
居たんだよアイツらが!!
そうあの最悪の森で出会った数々の食獣植物達が一堂に会している階層があったのだ。
目についた瞬間大人げもなくレアの後ろに隠れた。
(だって怖いじゃん)
とゆーか見た目がさらにゴツかった。
絶対ヤバいやつだってアレ。
レアはビビった俺を見て爆笑していた。
「そんなに怖がらなくてもすぐ慣れるさ」
(慣れたきゃねー)
そんなこんなでダンジョン見学は終わった。
魔物が出現している階層もあったけど殆ど植物だったな。
「大体分かってもらえたかな?」
「凄すぎる事がよくわかったよ」
ぶっちゃけ説明はあんまり頭に入っていなかった
「ふふっ楽しんでくれたようで何よりだ」
けど花のように笑うレアを見ると自然と和む。
「じゃあもうすぐ昼食だ。屋敷に戻ろうか」
「ああ」
昼飯の後は午後の授業だ。
まだまだ気合いを入れて頑張らなければならないな。