衝撃の事実
(いやいや待て待てどうなってんの!?若返った!?マンガの世界じゃあるまいし・・・)
そこまで思考が到達し、気づいた。
ここ地球じゃないんだった…
「なんだ…その…俺がなんか若返りして髪と眼の色が変わったのは、あの時血を飲んだからか?」
擦り切れそうな脳細胞をフル稼働してなんとかそれだけ質問することが出来た。
混乱しすぎて頭が痛むどころではない。
「うむうむ、大体そんな感じだな」
レア曰く、魔族の血を取り込んで完全な人間ではなくなりそれにより肉体が活性化して若がったらしい。
髪と眼の色は血を飲んだレアの影響を受けたそうだ。
「その様子だと寿命も延びてると思うぞ」
だ、そうだ。
正直説明の途中で思考を放棄しようと思ったくらいだ。
「流石はファンタジー世界…。なんでもありってことか・・・」
はぁ、とため息をつきとにかく落ち着く為お茶を飲んだ。
だが、現実は俺を休ませてはくれないみたいだ。
更に追い討ちをかけるかの如く、
「なぁケンスケ。うちの農場で働く気はないか?」
なんの脈絡もなしにレアが唐突にそう言った。
「ゴバッ!?」
危うく吹き出すとこだった。
「嫌だというなら強制はしない。その場合は近くの都市に案内して当分生活出来るくらいの金額も出そう。だが行く当ても、やりたい事もないのならなにかの縁としてここにいる気はないか?」
俺の混乱を他所にレアは話を進めていく。
「ここでなら生活の基本やこの世界の知識、魔力の操作なども教えられるぞ」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。あの時もいったけどなんで俺にそこまでするんだ?」
レアは森でぶっ倒れていた俺を気まぐれで助けてくれただけに過ぎない筈だ。
「なんで、か。まぁ一つはせっかく助けた相手にのたれ死なれると後味が悪いからだな。もう一つはケンスケの魔力といえばわかるかな?」
「魔力?」
「そう、魔力だ。魔力の概念がなかったケンスケにはまだ感じ取れないだろうけれど、私の力を取り込んだことを指しに引いたとしてもかなり異質だ」
ヤバイ。本格的に俺の思考が追いつかない。
「ああ、魔力には人それぞれ性質があってな。隠蔽していない限り大体相手の魔力は感じ取れる」
俺の混乱を察してかレアが説明をしてくれる。
「それはなんとなくわかったが、その魔力がおかしいと困ることでもあるのか?」
嫌な予感がガンガンするが聞いとかなければいけないようだ。
「これは私が説明します。ケンスケさんの魔力は、はっきり言ってこの世界の人間のものではありません。さらに言うと魔族のものでもない。見る人が見ればこの時点でかなり怪しいですね」
今度はレアに変わりリヴァルが解説してくれる。
「困る点を上げるとすれば、そのままの状態で街に行ってもまともなところには就職できませんね。魔力検査で怪しまれて一発アウトです。街から追い出されるかもしれません。控えめに言って化け物扱いですかね。」
うーわー、俺の予想の斜め上をいくヤバさだ。
嫌な予感程当たるって良く言うもんだ。
「あとこの国では大丈夫でしょうけど、トルヴィオ教会の勢力が強い場所だと異端審問会に消されると思いますよ?」
今度はリアラがサラッと恐ろしいことを言ってくる。
最早命の危機らしい。
「あー、うん。かなりヤバいってことは良くわかった。だからここで働かないかってことなんだな」
「説明せずにいきなり言って悪かったな。魔力の扱いに慣れれば自分の魔力を偽装することも出来る。覚えるだけ覚えて嫌になったら出て行ってくれても構わない」
そこまで言ってレアは俺と目を合わせた。
どうする? と目が語っている。
吹っ飛びかけた頭でも流石に解る。
「いや、すごいありがたい。逆にこっちからお願いしたいくらいヤバい状況だしな。正直言って今夜寝る場所も見当がついてなかったんだ」
そこで一区切りつけ、息を整える
「どうか俺をここで働かせてください。お願いします」
そう言って、深々と頭を下げた。
「そんなにかしこまる必要はない。ここで働くならみんな仲間だ。気を使うこともない」
数瞬の間の後レアが口を開いた。
「是非とも歓迎しよう、ケンスケ。ここはスティア農園。君のこれからの職場であり、この世界で最初の家だ」
「ようこそスティア農園へ」
リヴァルが、
「ようこそ」
リアラが、
「よく来たな、これからよろしく頼むぞ」
シュラが、
「ん〜、まぁ頑張れや」
クロエが、
みんなが声を掛けてくれた。
目尻が熱くなっていくのを感じる。
「でもいいのか?さっきリヴァルとかがスパイだとか心配してたけど」
「一応あなたの言葉を信じています。何よりレア様は一度言い出したら、意見を曲げませんからね…」
よくわかんないけどまあ少しは信用してくれたってことかな。
話が急展開過ぎてちょっと付いていけてなかったがやっとひと段落ついた。
気を取り直してもう一回お茶を飲む。
「あ、レア様レア様。ここで働くならちゃんとあの事言っておかなければなのではないでしょうか。別の世界からしたと言うなら尚更のこと」
あ、ヤベ。これフラグ立てたな。
何がきてもいいように身構えておく。
「そうだな。改めて自己紹介をしようか。私の名前はレア・ユノシェスタ。ここスティア農園の最高責任者であり、世間では“魔王”とも呼ばれている。これからよろしくな、ケンスケ」
何重にも張っていた俺の精神防壁は一瞬で砕け散っていき、時間が停止したかのように体が凍りつく。
“魔王”ただその一単語だけでキャパオーバーした俺の意識は闇へと沈んでいくのだった。
レアは魔王だった・・!?
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