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二話 危険な森の旅路

知らない森での強制サバイバル

取り敢えず森の中に入ってみた。

木漏れ日が暖かく心地よい。ピクニック日和だ。


そういえば水場で顔を再確認していたのだがやはり顔が変わっていた。

日本人の顔立ちをしているのだが何故か別人だった。

中途半端な変化だったので気にも止めずに歩き進めた。


まあそれよりも食料確保だ。

(とにかく、獣とかに注意していかなきゃだな。熊とかこっちの世界にもいるのかな?)


お腹も空いていたので、食べられそうな木の実や果実を探すことにする。


…歩いて20分ほど


特に障害物もないのでまっすぐ歩いてきた。


食料は、キノコを見たが知識もないのに食うのはやばそうなのでスルーしておいた。


もう一つ、拳大の黒い果実っぽいのがあったので取ってみたが皮が硬すぎて割ることもできなかった。


そんなこんなで歩いていたら、ふと甘い香りが漂ってきたのに気づき足を止める。


(食料発見か!?)


周囲を見渡せば、少し開けた場所にピンク色の果実を見つけた。


地面から30センチくらいのツタが伸びていて、その先に実があった。


匂いにつられてそちらに歩いていくと、1匹の兎がその果実に向かって走ってきているところだった。


俺が元いた世界にいるような兎ではなかった。大きさは中型犬くらいで額から一本の角が生えている。


(あ 、あれって一角兎ホーンラビットってやつだろ!やっぱり俺は異世界に来たんだな!)


俺もちょっと前までファンタジー世界に憧れる少年だったのだ。

俺は少し興奮しながら、ホーンラビットを観察することにした。


ホーンラビットは果実に近づき、確認するように匂いを嗅いでから噛り付く。


それが俺の見たホーンラビットの最後の姿だった。


「ピキィッ」

次の瞬間、ホーンラビットは短く一回声を上げ地面に喰われた。


「なっ!?」


いや、そう錯覚しただけだ。

正確には地面にいたナニかに捕らえられた。



舞い散っていた砂埃がはれホーンラビットを襲ったナニかが見える。


ホーンラビットがいた場所には2メートルくらいの緑の物体が立っていた。


巨大な二枚貝のような形だが、閉じた口の周りには大量のトゲがある。


生前に見たことがあるハエトリグサに酷似していた。


(な、なんなんだこの森は!?魔物が植物に喰われるなんてことあんのか!?)


そこまで考えて思い出す。

此処は自分のいた世界ではなかったことを


(異世界じゃ、俺の常識が通じるわきゃねーよな。まさか魔物より植物を恐れる日が来るとは思わなかったな…)


自分もあの果実に近づこうとしていたことを思い出して身震いする。


「俺、生きてこっから出れんのかな?」

ついそんな言葉が口から漏れる。


さっきまで緑が綺麗でいい森だと思っていたが、今となっては植物が動物を喰う恐怖の森にしか見えない。


あのホーンラビットがいなければ、おそらく俺は死んでいただろう。


犠牲になったホーンラビットに、俺はそっと手を合わした。



◇◇◇



…それから何時間か歩いてみたが、一向に森から出られない。


しかも、よくよく周りを確認しながら歩けば、先程の巨大ハエトリグサのトラップ果実もチラチラ見かける。


それだけではなく大量のツタに絡められて養分を吸い取られた後みたいな、魔物の死骸もあった。


(どんだけヤバいんだよ、この森は!)


ちらほらとホーンラビットや小型の魔物は見かけるが、こちらには襲いかかって来なかった。


(食獣植物なんかに気をつけていれば、なんとか抜けられるかな。一応は植物なんだし走って追ってくることはないだろう。)


この時の俺は、まだこの森を甘く見ていたんだ。


…半日ほど歩き回って食べることが出来た食料は、一つだけだった。


赤くて丸い実がちょうどいい高さの木に大量になっていたのだ。


見た目は前世の林檎そのものだった。

空腹に耐えきれず、一つもぎって食べてみた。


かなり酸っぱかったが、シャリシャリして食感まで林檎に近い。


日が傾き始めていたので、取り敢えず食べれることを確認した林檎もどきの木の下で今日は休息をとることに決めた。


日が落ちきる前に、周りに危険な植物がいないか確認するため辺りを探索する。


(寝てる間に喰われるなんてたまったもんじゃねーからな)


そんなことを考え、危険植物がいないことを確認しながら歩く。


しばらく歩いたところで真っ赤な花が束になって咲いているのが目に付いた。


緑豊かな森には不自然な程に、美しい真紅の花。


けれども不思議と惹きつけられる魅力がある。


真紅の花が咲く中に、真っ黒な花弁の花が一輪があるのを見つけた。


それに違和感を覚え、手を伸ばし触れようとした時…


グサリッ。そんな効果音がお似合いだというように俺の左腕に緑の触手ようなものが刺さっている。


「!?」


慌てて触手を引き抜けば、スルスルとそれは花の側に戻っていった。


どうやらあの黒い花に攻撃されたらしい。


植物に攻撃されるというのもおかしいが、まだ触手は花の側でウネウネと動いている。


「痛ッッ〜」


少し遅れて刺された痛みを感じる。


(この森に安全な植物はいないのかよ!)


心の中で悪態をつく。


さすがの俺もいきなり植物にぶっ刺されるとは考えてもいなかった。


出血量が多かったので服の裾を破りとり、それで縛ることによって止血した。


鼓動が痛い程に早く打っている。


本当に驚かされた。


よく見れば、真っ赤な花の下には動物の骨らしきものがある。


(吸血植物か何かか?)


触手の攻撃範囲の外だと思われる場所まで急いで避難する。


「もう帰りたい……」

かなり切実にそう思った。


だが、俺がこの植物の本当の恐ろしさを知るのはまだ

先のことだった。


その日の探索は諦めて、林檎もどきの木の下で体を丸めながら夜を明かした。

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