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みんなの正体

「ああ~よく寝た」

今は日が昇りは始めたところだろうか。

陽の光がカーテン越しに差し込み、小鳥の囀る心地よい声まで聞こえる。


ベットの横から目覚まし時計の振動音が聞こえたので起き上がる。


もちろんのことだが地球の目覚ましとは違うものがそこにはあった。黒い卵型の物体でただ振動するだけのものなのだが…

昨日渡された際、鳴り始めから五分以内に止めないと恐ろしいことが起きると言われたので急いで止めることにした。

止めるのは魔力を流すだけでいいらしい。


卵の振動が止まったのを確認し、支度をするためベットから降りた。

(にしても、平和っていいもんだなぁ)


欠伸を噛み殺し少し涙目になりながら心底そう思う。

昨日の夜はシュラに屋敷を案内してもらってから、ずっと部屋で互いの世界のことについてはなしていた。

割と話しが盛り上がり寝るのが遅くなってしまった。


ともかくそんな事を考えながら服を着替えていたら唐突に隣の部屋から絶叫が響いた。


隣の部屋にはシュラがいたはずだ。

何事かと駆けつけてみると、なんか・・・なんと言えばよいのだろうか・・小さな恐竜のようなものにシュラが襲われているところだった。


「うぎゃぁっ・・・。ああケンスケか。すまんちょっと取り込んでるから待っててくれ」

俺に気づいたシュラがそう声をあげる。


シュラはミニ恐竜合計五体に髪、耳、首手、足を噛み付かれていた。


見るからに痛そうなんだが・・・


「大丈夫か…?」


「大丈夫だ!・・ああ、テメェ髪引っ張ってんじゃねぇ!!」


いや、全然大丈夫じゃなさそうなんだが・・・・


手でなんとか引き剥がそうとしていたが結局無理だったらしく

「どぉりゃーー!!吹き飛べー!」

そんな威勢のいい言葉とともにシュラの周囲に風の魔力が発生しミニ恐竜達が吹き飛んだ。

部屋のものも一緒に吹っ飛んだが・・・


ミニ恐竜はすぐさま体勢を立て直し再びシュラに襲いかかった。


だがシュラは目にも止まらぬ速さでミニ恐竜の背中のスイッチを押す。


というより本当にみえなかった。


ミニ恐竜達は糸が切れたように止まり黒い卵の姿に変わった。


「恐ろしいことが起こるってこのことだったんだな・・・」

自分の部屋にも置いてある卵型目覚まし時計を思い出し身震いする。

シュラをも手こずらせるとは恐るべしミニ恐竜。


「おはー、ケンスケ。昨日は中々楽しかったな」

絶対寝坊はするもんか、と決意を固めているとシュラに声をかけられた。


「お前平気なのか?随分噛み付かれてたみたいだが・・・」

ミニ恐竜に噛まれていた箇所は歯の形に赤く腫れている。


「・・・?。問題ねぇぞ、いつもの事だから」

さも当たり前のことのようにシュラはいう。

とゆうかいつもの事なんだな。


「ケンスケは早起き出来ていいなぁ。俺なんか全然起きれないから目覚まし5個も置いてもらってんのに・・。あ、ちょうどいいや部屋の片づけ手伝ってくれ」


ちょうどいいってことで手伝わされた。


数分で片付け終わりシュラの準備を待ってから朝食へと向かった。


◇◇◇


「なんで咲かせられないんだ?」

ただ今午前の農作業の時間。

俺はひたすら目の前の花とにらめっこをしていた。


「だから言っているではないか。エイルの花の魔力の波長を合わせて魔力を流せと」


「いやいや簡単に言ってるけどチョーむずいだろこれ」


そうなのだ。めっちゃむずいのだこれ。


朝食が終わってからひたすら花に魔力を込める作業をしているのだが一向に咲く気配がない。


一回目のタネは魔力の込めすぎで爆散した。

二回目は流す魔力の波長が合わずすぐに枯れた。

三回目、何を間違えたのか茎が桜の幹のように太く成長してしまった。もちろん花は咲いてない。

四回目、なぜが茎まで成長したのに腐り落ちた。

五回目、失敗。六回目、失敗。七回、八回、九回・・・・、ことごとく失敗している


流す魔力と花に宿っている魔力の波長ぴったり合わすのと、適切な魔力の量を流すのを同時に行わなければならない。


魔力の波を安定させながら量の調節ってのがまた難しい。

片方だけならなんとかできるのだがそうすると花は絶対咲かない。

現在つばみまでは成長させられたんだがそこから先の難易度が一気に跳ね上がった。


魔力の使い過ぎでフラフラなのだが目の前には次々新しい植木鉢が重ねられる。


「やり直しだ。次もすぐにやるぞ」

レアのスパルタな声だけがダンジョンに響いていた。



◇◇◇


「つーかーれーた〜」

午後の講義時間。

俺は何をしているかというとソファーで横になり・・・伸びていた。


(だって誰もこないんだもん)

今日の講義をしてくれる先生が来ていないのだ。

一瞬、忘れられているのかという考えが頭をよぎったが考えないことにした。


グダグタしていること数分…


廊下からドタドタという音が聞こえた。


「悪りぃ、ケンスケ!思いっきり忘れてた」

ドアを壊すぐらいの勢いで入ってきたのはシュラだった。


やはり忘れられていたらしい。


「姉貴には内緒にしておいてくれ!一生のお願いだ!」

殺される、とかなり焦った顔で迫られた。


「いや、俺はいいんだが・・・」


そこまでいったところでシュラがあるものを踏んでしまった。


シュラの足元に魔術陣が展開される。

「これ姉貴の魔力・・・?」

次の瞬間、シュラの体が紫電に包まれた。

「え?・・・ウギャーーー!」

叫び声が響く。


今のはリアラがシュラが遅刻した時用に事前に仕組んどいた術式だ。


まだよくわからないが条件起動(ハウジン・ブート)という技術を使っているらしい。


かくして丸焦げとなったシュラが出来上がったのであった。

マンガで見るような綺麗な丸焦げだ。

全身真っ黒けで髪はアフロのようになっている。


「ケンスケ、テメェここに術式があるの知ってただろ」

凄い剣幕でシュラが迫ってくるが悪いのは俺ではない。


「リアラがドーセ遅れるだろうって昼食の後仕込んでいったよ。それより遅れたシュラが悪りーと思うんだが?」


「ぐぅっ・・・。それは悪いと思って・・・る」


シュラがバツの悪そうな顔になる。


「ま、まぁ早く授業始めちゃおうぜ」

そう無理矢理話題を切り替え授業が開始された。


◇◇◇


「さてさて午後の授業を始めんぞ」


気を取り直してシュラによる午後の講義が始まった。

そもそもなぜシュラなのか。

理由は単純明快。

みんな忙しいのだ。

今日はシュラ以外空いている人員がいないらしい。

なんか急に仕事が増えてしまったとかレアがぼやいていた。

まぁぶっちゃけシュラしか手が空いていなかったのだ。


「てな訳で今日は種族の話をするんだが、聞いてっか?」


「大丈夫、ちゃんと聞いてた。種族の話だろ」

なぜ種族の話なのか。昨日からの流れでいけば今日も魔力の講義をするのが妥当だ。

その理由も単純明快シュラが教えられないからだ。


そんなことを考えているとはつゆ知らずシュラは話を続ける。

「そういえばケンスケの世界には人間以外の種族がいないんだったか?」


「ああ、でもエルフとかドワーフとかなら知ってるぞ。本の中の存在だけどな」


ラノベなんかによく書かれていたのを前世で見た記憶がある。

別の世界で本当に存在していたとは夢にも思わなかったが・・・


「知ってんなら話は早い。一応先に言っとくとこの世界には十種類以上の種族がいてな、種族って言っていいのかわかんねぇ奴らいるんだが十種類くらいと思ってくれ」


「結構いるんだな」


「まぁまずはここにいる俺たちの種族から教えていくぞ」


シュラが黒板に触れるとレア、クロエ、リヴァル、リアラ、シュラの絵が描かれた。


「じゃあケンスケ、俺と姉貴が鬼人だってのは知ってるよな。他のみんなの種族を当ててみてくれ」


わかんねぇと思うけどな、と超意地悪な顔を浮かべてこちらを見る。


いや急に話題振られてわかるかよ


「全員特殊そうにしか思えないんだが・・・。レアはともかくとしてクロエとリヴァルは魔族じゃないのか?」

逆にそれ以外は思いつかない。


「はいっ、残念でした〜。ここに純粋な魔族は一人もいないんだな〜」


なんだろうか、とてもムカつくんだが・・・


「今ここで正解を言ってもいいんだがまぁ実物を見てもらったほうが早いだろ」


「実物?」

俺はハテナマークを頭に浮かべる。


するとシュラは宙に魔法陣を描き、

「今からダンジョン行くぞ」

そう言ったのだった。


「いやいや、なんでダンジョンに行く流れになってんだ?」


「そりゃあみんなの姿を直接見た方が早いからだろ」


(みんなどんな姿しているんだよ!)


とにかく俺は説明が下手だから付いてきてくれ、と言われシュラと二人ダンジョンへ向かうこととなった。


◇◆◇


スティア農園第十階層


「・・イテテ、もっとうまく転移出来なかったのか?」


ダンジョンに移動したと思った瞬間いきなり地面に叩きつけられたのだ。

砂埃が舞って咳き込んでしまう。


「すまんすまん、いつも一人で移動してるから慣れなくってさ」


そんなシュラの言い訳は置いといて転移したのは第十階層らしい。

ここは初めてくる階層だ。


階層情報展開ダンジョンオープン


シュラがまた何かの魔法陣を展開した。


光が走り地図のようなものが空中に展開された。

まるで投影機プロジェクターで写しているようだ。

上下に大きく広がっているので各階層ごとに表しているのだろう。


「よし、リヴァルは六七階層だな。早速移動するぞ」

俺には全然わからなかったがリヴェルの居場所を特定したらしくシュラが再び転移魔法陣を起動した。


視界が白く染まり景色が一変した。

さっきまでの植物天国とは違いこの階層は草原だった。

魔物などがここからでもちらほらと見える。

リヴァルの姿は見えない。


「おっ、いつもの場所にいるみたいだ。行ってみようぜ」

だだっ広い草原のどこにリヴェルの姿を見つけたのかはわからないがシュラは遠くの方を凝視しそう言った。


三度シュラに連れられ転移をする。

着いた場所は巨大なクレーターだった。


美しい草原とは不釣り合いなその中心で激しい戦闘が繰り広げられていた。


巨狼、一角獣、下位竜、よくわからない姿の化け物もいる。

そいつらが皆、殺気を剥き出しにし強烈な一撃を解き放った。


火炎、電撃、竜巻、などなど吹き荒れる暴力の嵐が容赦なくクレーター内を蹂躙してゆく。

その理不尽なまでのエネルギーはただ一人にだけ向けられていた。


「な、なぁ?あれやばいんじゃね?」


そう。

そのクレーターの中心に立っていたのはリヴェルだ。

その地形を変えんがばかりの力の嵐を正面からみつめている。


「まあまあ見ていてみろよ」

そうシュラにいわれ再び視線を戻す。


魔物たちの一斉攻撃がどんどんリヴェルに迫ってゆく。

リヴェルが動く様子はない。

300メートル、200メートル、100メートル。

眼前にまでそれが迫った時、ついにリヴェルが動いた。

エネルギー体に対し手の平を向け小さく何かをつぶやく。

直後、リヴェルが光に飲み込まれ、凄まじい衝撃がクレーター内で荒れ狂う。


だが一瞬だった。


次の瞬間まるで手品のようにリヴァルの前にあった攻撃の数々が掻き消えた。


ゾワリ、と何かが背筋を這い上がる感覚がした。

恐怖だ。

本能的に感じる恐怖が目の前のものを危険だとおしえてくれる。


再びクレーターの中を除けば無傷のリヴェル、その前には大量の魔物が倒れ伏していた。


全く見えなかった。

あの一瞬でどうやって攻撃の数々を防ぎさらに反撃まで繰り出したのだろうか。


リヴェルの姿は平時の時とは異なっていた。

白目が黒く変化し、ただでさえ鋭い眼光はさらに鋭利さを増している。


その背中には不定形な黒い粒子で象られた翼のようなものが生えていた。


「あ、悪魔・・・?」

そう、お伽話の中に出てくるような悪魔に似ている。


「その通りです」

突如リヴェルの姿が消え、横から声が聞こえた。


「おいおい、あんまりケンスケを驚かせんなよ?お前の圧力に気圧されてんじゃねーか」

シュラが呆れたようにそう言った。


「すみません、ケンスケさん。少し部下と戯れていまして」


(戯れて?)

あんなにぶっ放しておいて、と言おうとしたがきっとこいつらにとっては普通なんだろうなと思い直すことにした。


「それで私に何か用があったのでは?」


「えっとな。今日俺がケンスケの講義を持ってて種族の話をしようと思ったんだが、きっと俺が説明してもわかんないと思うから実物を見に行こーぜってことになったんだ」


「成る程、そういうことでしたか」

そう言ってうなづき何かを思案しながら俺の方に向き直った。


「そうですね。軽く説明致しますと先程ケンスケさんが仰っていたように私の種族は悪魔でございます」


「付け加えますと魔神王から黄昏(レプスクム)の二つ名を与えられた筆頭上級悪魔です。レア様に拾われる以前は少々魔界でやんちゃしていた時期もありました」


「魔神王?レプスクム?上級悪魔?・・・・もしかしてリヴェルってやばい奴だったりする?」


「矮小な人間から見れば危険な存在に当たるとは自覚しております」


人間が矮小ね・・

一応地球では食物連鎖の頂点に立ってたんだけどな。


「どうだ?実物見た方が納得できるだろ?」

シュラが得意げにそう言った。


「そうだな。ものすごくよく分かったよ・・」

(ここの人たちがどんんだけヤバイ人達なのか、だけど)


「でもリヴェルは悪魔でもいい奴なんだよな?」

俺を助けてくれたんだし・・


その問いに対してリヴェルは鳩に豆鉄砲を食ったような顔をした。


「フフッ、私がいい人?面白いことを言いますねケンスケさんは」


そこで言葉を区切り、一呼吸置いてリヴェルはいつもの姿へと戻った


「悪魔に良い悪いなんて存在しませんよ。ただ己の欲望を満たすために動く化け物なのですから」


忠告をするようにそう答えると姿を消した。

クレーター内の魔物も消えていたのでどこかへ転移していったのだろう。


最後の言葉はどういう意図だったのだろうか。


「まあアイツのいってたことは気にすんな。とりあえず次行こうぜ」


俺が考え込んでいるとシュラが転移魔法陣を起動しながらそう言った。


「そうだな。次はしっかり着地してくれよ」


「おう、任せとけ」

その言葉とともにまた景色が切り替わる。

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