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Battle Order Xaxis《バトルオーダーザクシズ》  作者: Ru-ne
フロア1_神名万丈part1
7/13

【BOX_06】ガデオン軍大隊東南支部隊長ボルドレッド

ボルドレッドを乗せたギャレットを後方に配置し、4機のギャレットは村の前へと到着した。

村は夜中ということもあり、しんと静まり返っている。


「情報によればアームが2機いるはずだ。念のため、見つけ次第破壊しろ。あとはクラウズ団の団長を確保しろ」


「ハッ」


それぞれ散開し、村の中へと入っていくギャレット達。



屋敷の部屋に戻った万丈。

ベイトの姿はなく、ひとりベッドに腰かける。


「今日は色々あったな。にしても、まだゲームのイベントの一環なんじゃないかって思うけど、現実なんだよな」


ベッドに体を預ける。

そこで、何か外の様子がおかしいことに気付く。


「これは…モーター音か?こんな夜中にアームを動かしているのか」


アムドックスの修理だろうか。にしては駆動音が大きい気がする。


「どうした、まだ寝ていなかったのか」

「あっ、おっちゃん。外からアームが動く音が聞こえるんだ」

「…なんだと」


怪訝な顔をして、窓の近くにいき耳をそばだてるベイト。


「……確かに。しかも数機いるようだな」

「…敵か?」

「そのようだな。ここを出るぞ、支度をしろ」

「団長たちは?見捨てて行くのか?」

「先刻も言ったが、全ては救えない。どのみちこの暗さで戦うのは得策ではない」

「けど……団長が捕まるかもしれないんだろ。俺は、イヤだ!!」

「おい!!待て!!」


部屋を飛び出していく万丈。


「クソッ、ここで時間を使っている暇はないというのに…」


ベイトは苦い表情をしながら、従者に用意してもらった食糧を手に部屋を出た。



万丈はエマの部屋に着くと、荒めにノックをする。


「団長!!起きてくれ!!」


しばらくして、声が聞こえる。


「……一体どうした。休んでいたのではなかったのか…」

「敵のアームが数機、この村に来てる!」

「…なんだって!?今すぐ支度をする。バン、すまないが従者に行って村の皆に知らせるように言ってくれ」

「わかった!」


万丈は階段を降りると、まだ起きて翌日の仕込みをしていた従者に事のあらましを説明した。


「では、私は警報を鳴らしに行ってまいります。バン様はテオ様やモアナ様の元へ」

「わかった!あとは頼んだよ!」


しばらくして、村全体に警報が鳴り響く。


「クソッ!気付かれたか。急いで目標を確保しろ!!最悪、村全てを破壊してもかまわん!」


ボルドレッドの通信を聞いて強硬手段に移るギャレット達。

近くにある家を手当たり次第に壊し始める。


屋敷裏の格納庫に向かう万丈。

そこにはモアナが作業着姿でアムドックスの修理をしていた。


「モアナ!!」

「あっ、バンくん。この騒ぎは何?」

「敵が襲ってきた。一旦ここから離れたほうがいい」

「えっ、こんな夜中に!?わかった、団長とテオは?」

「団長には伝えた。テオには会っていない」

「そしたらテオを呼んできて。私はトレーラーを回しておくから」

「わかった!無茶はするなよ!」

「バンくんもね!」


そこに、ギャレットが1機姿を現す。


「しまった、もう見つかったか!」


万丈は瞬時に逃げる方向を確認するが、入り口を塞がれている以上逃げることはできない。

ブラウエーデスを起動させれば、こんな敵など簡単に倒せるが……。


《面倒事に巻き込まれたくなければ、その能力は隠すことだ──。》


ベイトの言葉が脳裏をよぎる。


「モアナ!こっちだ!」


万丈はモアナの手を掴み、アムドックスのコクピットへとよじ登る。


「パスワードは?」

「整備中だから、ロックは解除してるよ」

「なら丁度いい」


万丈は操縦桿を握り、アムドックスを起動させる。

鈍い起動音とともに黄土色の機体がゆっくりと立ち上がる。


「流石に直ったばかりか」

「それでも、出来るところまでは直したから動くはず」

「武装は?」

「左腕のガトリングと格納庫に置いてあるグリップロッド」

「了解!!」


万丈の操るアムドックスはギャレットに向けて左腕のガトリングを放つ。


ダラララララ!!!


弾が出ず回転するだけのガトリング砲。


「あっ、弾の補充してなかった!!」

「馬鹿!!」

「…!!?…なんだ、ただのこけおどしか!!脅かしおって!!」


一度は後退しかけたが、弾がないとわかり接近してくるギャレット。


万丈は必死に頭の中の記憶を呼び起こす。


アムドックスはブラントより鈍重な初期型生産アーム。

ゲーム内では、フロア1のガデオンに大量配備されていた機体のひとつだ。

特筆するようなスペックは持っていない。


「……そう言えば、そうだったな。まぁ、なんとかなるか」


万丈はギャレットをロックオンし、脚部のローラーを滑らせる。


いかにアムドックスと言えどギャレットなら装甲を抜くことは不可能ではない。

汎用機は散々お世話になった。扱いはこの腕が覚えている。


万丈はアムドックスの制御パネルを開き、左手で出力調整をかける。


パワー -10gain

テクニック -10gain

スピード +20gain


「何してるの?」

「まぁ見ててくれ」


パネルを閉じると、アムドックスはギャレットの腕を掴みにかかる。


「ハッ!そんな鈍重な機体で何が出来る……なんだとっ!!?」


掴み損ねたはずのアムドックスの腕がローラーが急加速したことでギャレットの腕をガッチリと掴む。


「掴めた!?どうして!?」

「これが出力調整の力だ!流石兄貴だ、教わっておいて良かったぜ」


そのまま掴んだギャレットを地面に叩きつける。


「ぐっはぁ!!!」


強い衝撃で稼働を停止するギャレット。


「よし、まず1機」

「バンくん!!凄い!!」


ガッツポーズをする万丈。手を叩いて喜ぶモアナ。


音を聞きつけて、2機のギャレットがこちらに向かってくる。


「複数か、2機相手は流石に面倒だぞ…。せめて1対1に持ち込めれば」

「そしたら、この先にアーム1機分が通れる場所があるよ。この先はこうなってて……」

「なるほど、いいな。そこを使おう」


万丈はモアナに地形を教えてもらい、2機のギャレットを誘導しながらアムドックスを家と家の間に入り込ませる。


「そんなポンコツ機体で何が出来る!!」

「今!!右に曲がって!!」


モアナの合図でアムドックスは急制動をかけ、右脚を軸にグルッと回転する。


「なんだと!!?」


アムドックスより前に出たギャレットは目の前にある水田にあと少しで飛び込みそうになる。


「そのまま落ちろ!!」

「うぉぉぉ!!!?」


アムドックスのタックルを背中に受けて顔面から倒れこむギャレット。

ぬかるみに完全にはまり、こちらも身動きが取れなくなる。


「何をやっている!!」


後ろを追いかけていた残りのギャレットは一度動きを止め、アムドックスと距離をとる。


「おっ、慎重になったみたいだな」

「バンくん!!凄いよ!!天才だよ!!」

「モアナ、悪い。さっきは急すぎたな」


急制動したせいででんぐり返しになっているモアナの手を取って起き上がらせる。


「よっと、凄いねバンくん!!お姉さん驚きだよ!!」

「兄貴が色々機体について教えてくれたから、大体頭に入ってるんだ」

「じゃあ、ギャレットのデータも?」

「あぁ、リーチも動き方も大体わかる」

「ほぉぉ、凄いねぇぇ」


感心しきりのモアナ。よしよしと万丈の頭を撫でる。


「あと何機いるんだ?さっき無理したので駆動系がダウンしてる。あと1回くらいは急発進できるか。でも、さすがにこいつだとあと1機の相手がいいところだな」

「これが終わったらまた直してあげるよ」

「団長達が無事だといいけど」



屋敷裏の格納庫。部屋に囚われていたダミールは外に向かって大声をあげていた。


「おーい!!我はここだー!!助けてくれー!!」


外のギャレットに聞こえるように必死に声を上げる。

そこに現れる1機のギャレット。


「来たか!!さぁ、早くこの扉を壊してくれ!!」

「ダミール副長ですか?」

「そうだ!!その声はモドロだな!!早く扉を開けてくれ!!」

「………」


ダミールが叫んだ後に一瞬の沈黙が訪れる。


「…おい、どうした。早くこの扉を開けろ!!」

「副長、私は隊長より副長の確認をしろと命じられています。“安否は問わない”と」

「…なんだと?おい、まさか……!!?」


腕を振り上げるギャレット。


「おい、やめろ!!地位ならくれてやる!!やめろ!!」

「すみません、副長!!!」

「やめろーーーー!!」


ゴシャァアアアッ!!!


ギャレットの横っ腹をブラントのエッジダガーが貫いた。

部屋が壊されるより一瞬早く、ベイトの乗ったブラントがギャレットを吹き飛ばした。

不意の攻撃を喰らい、完全に沈黙するギャレット。


「ふぅ……嫌なところを見てしまったな」


モニター越しに映るダミールは、死の恐怖に直面したことで失禁し呆然としていた。


「敵はあと何機いるのだ。出来れば戦いは避けたかったが。あいつがいなければ始まらない」


ベイトはブラントを村の中心へと走らせた。



村の中心部。


グレーのギャレットにもう1機がアムドックスと対峙している。

見た感じ、他のギャレットとは違い装甲はそれなりにありそうだ。


カスタマイズされたリーダー機か?たしかそんなのがあったな。

万丈はゲームの記憶を思い出していた。

ゲーム通りの強さだとすると、一般機の1.2倍の出力だ。

アムドックスでもまぁ戦える相手だろう。ただ、アムドックスが万全の状態であれば、だが。


万丈は操縦桿を握りながら、どう対応しようか色々なシミュレーションを立てていた。

武装がない今、出来る戦法は限られている。

2機相手するよりはリーダを潰してしまった方がいいが。

リーダーを倒して敵が退かなかった場合、打つ手がない。


「バンくん、どうする?」

「出来れば、このまま帰ってほしいくらいだね」


しばらく動きを止めていたグレーのギャレットがゆっくりと動き出す。


「アムドックスの操縦者よ。昼間に戦ったものではないな?何者だ」

「人に名前を尋ねるなら、まず自分から名乗ったらどうだ」


ギャレットの外部スピーカーに返答する万丈。


「フッ、随分と強気な奴がクラウズにいたとはな。いいだろう、私はガデオン軍大隊東南支部隊長ボルドレッドだ」

「俺はバンだ。お前たちにこの村は渡さない。今のうちに帰った方が身のためだぞ」

「笑わせるな、そのゴミのような機体で何ができる」

「バレてるか…。リーダーやってるだけはあるね」

「どうしよう……バンくん…」

「……出来るだけやってみるさ。モアナ、俺にしがみついててくれ」

「えっ、うん、わかった」


万丈はパネルを開き、再度出力調整をかける。


テクニック -10gain

スピード +10gain


「クラウズは今日で終わりだ。それに変わりはない」

「そのセリフ、後悔するなよ」

「それは貴様の方だ!!」


真正面から突っ込んでくるボルドレッド機。


「読み通りだ…!!」


万丈は飛びこんできたギャレットを迎え撃つように右ストレートを繰り出す。


「甘いわ!!」


出力調整でスピードを上げたパンチだが、

両手でギャレットに受け止められる。


「そんな鈍重な動きでこの私に攻撃を当てようなどと!!」

「それが狙いじゃないんだよ!!」


右パネルを開き、


《right arm purge》

 右腕 解放


のボタンを押す万丈。ガシュンッと音とともに外れるアムドックスの右腕。


「受けてみろ!!」


急速前進で一気に距離を詰めるアムドックス。

上半身を反り、ギャレットのヘッド目掛けてアムドックスのヘッドをぶつける。

掴んだ腕を離すのが遅くなり、ガード出来ずにそのままヘッドバッドを喰らう形になるギャレット。


「う、ぐぉぉぉぉぉ」


ガコォォォォン……!!!



大ダメージを受け、膝をつくギャレット。


「こんなに速く…動く機体だったのか…」


ボルドレッドはギャレットを起こすと、アムドックスから距離を置く。


「隊長!!」

「大丈夫だ。ここは一旦退く。アムドックスの操縦者、バンといったか。次はこうはいかない。ゆめゆめ忘れぬことだ」

「負けた者の言うセリフだよ、それは」

「その口をいつか閉ざしてくれる。引くぞ!!」


ボルドレッド機、もう1機が撤退していくのを眺める万丈たち。


「ふぅ…なんとかなったみたいだな…」

「去った……の?…」

「あぁ、帰ったみたいだ……」

「やった……バンくんのおかげだよ……」

「代わりにアムドックスはボロボロだけどな……」


動かなくなったアムドックスから出る万丈とモアナ。


「モアナ!!バンくん!!」

「団長ー!!」


急いで駆け寄ってくるエマとテオ。

ベイトもブラントから降り、近くまで駆けてくる。


「2人とも無事だったか!!」

「あぁ、なんとか。アムドックスは壊しちゃったけど……」

「いや、2人が無事でなによりだ。村もほぼ被害はないようだし」

「モアナ!!大丈夫だったのかよ」

「テオ!!バンくんが助けてくれたから安心だったよ。バンくんめちゃめちゃ強かったんだから」

「そうか。バン、また助けられちまったな。モアナを助けてくれてありがとよ」

「丁度そこに居合わせただけだからさ」


万丈の腕を掴み、耳打ちをするベイト。


「(随分と無茶をしてくれたな)」

「(仕方ないだろ。団長達は放っておけないよ)」

「(しかし、これでお前はますます彼らに頼られることになるぞ)」

「(そうなったらそれでいいさ、団長の仲間を助けるところまではやるよ)」

「(…それでは終わらないと言っているんだ)」

「我々は倒れたギャレットの確保に向かおう、バンも手伝ってくれないか」

「わかったー!!」

「おい、待て!!まだ話は終わっていない!!……若造が」


エマの方に走っていく万丈を見ながら、ベイトは大きくため息をつくのであった。

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