【BOX_01】プロローグ2
フロア3。
そこは惑星ルナリスの戦争の中で最も戦力が集まっているとされる大陸である。
フロアにはアームでは越えることのできない高くそびえ立つ壁が存在している。
ゆうに50メートルを超えるその壁は他のフロアへの移動を完全に遮断してしまっていた。
プレイヤーは各フロアにあるクラッシャーの要塞を落として壁をなくすことが必須条件になる。
一番最初にゲームを始めると星の救世主としてフロア1に召喚され、訓練用のアームを貸与される。
プレイヤーはそこで腕を磨き、自分の騎士階級と呼ばれるランクを上げてより強いアームを獲得していくのだ────。
深夜0時10分
出撃してからものの数分で、万丈の駆るキュアノエーデスはクラッシャー歩兵5機を落とし、味方の救援に回っていた。
小回りが利き、近接戦闘に超絶特化した暴れ馬な機体。
接近戦で彼の右に出る者はいなかった。
BOXの面白いところのひとつに【イマジネーションドライブ】と呼ばれる、自分で必殺技を考えて設定出来る能力がある。
この【イマジネーションドライブ】によってアームの強さや役回りがガラッと変わるのだ。
アームは耐久値の他に100%のエネルギー値を持っており、そのエネルギーを使用することで技を発動する。イマジネーションドライブは能力の内容とエネルギーの消費量を決めることで、攻撃、援護、回復と様々な方向に変化させることができる。またそれ以外の設定も可能だ。
1回の戦闘にセットできるドライブの数は3つ。
これを考えるのもBOXで生き残るにはとても大事なことだ。
エネルギーを使い過ぎた場合には補給バッテリーを使用するか、時間経過での回復、もしくはEゾーンと呼ばれる外に漏れているエネルギーが湧き出る場所に行くことによって回復することが出来る。
そのため、地形を把握しておくのもとても重要なことだ。
万丈は右のモニターに目を移し戦力差を確認する。
今回はプレイヤー軍5千、ガデオン軍2千、クラッシャー3万という桁が違う状況。
だがこの状況は別に珍しいわけではない。
BOXというゲームは、イマジネーションドライブとアーム以外はガッチガチにルールが決まっており、そこ以外でアイデンティティを出すというのが非常に難しい珍しいゲームだった。
しかも、ゲームの難易度がべらぼうに高いのだ。
5段階中のフロア3でさえ、2年経った今もクラッシャー要塞を攻略できていない。
一時期はネットで運営の会社に大して批判のコメントが怒涛の如く書き込まれた。
しかし、一切下方修正をしない運営。寧ろもっと強いクラッシャーを出してくる姿勢に「運営マジでプレイヤー潰しにきてる」「頭おかしい、理解できない」と呆れられるほどだった。
それでも人気が衰えず、今もなお遊ばれる理由としてはそのクラッシャーを倒す強さを持った超級プレイヤーの存在が大きかった。
彼らは自分のプレイをネットにアップすることでその異次元な強さを見せつけた。
BOX=超絶無理ゲーのイメージがついた中で、その動画を見ることは映画よりドラマチックで刺激的であり、それを攻略できるプレイヤーは崇拝されるくらい熱狂的なファンがつく結果となった。
BOXは【騎士階級】と呼ばれるランクが存在し、そのランクが高ければ高いほど性能の良いアームに乗ることができるようになる。この階級を上げるにもかなりの数のクラッシャーを倒して功績をあげないといけない。
その代わりに特典として、一定以上のランクでランキングに載るようになると運営会社から【特権服】と呼ばれる騎士服が実際に貰えるのだ。オーダーメイドで、色やデザインもある程度選ぶことが出来る。
この【特権服】が強さの証であり、これを着てネットに出ることで更に人気を獲得することとなった。
万丈はつい最近この特権服が届き、今回のイベントが特権服を着た初陣だった。
テンションが上がらないわけがない。
深夜0時20分
ガデオン軍の戦力が減らないようにしながら
クラッシャー歩兵を1体1体倒していく万丈。
キュアノエーデスの主力兵装は徒手格闘。パンチとキックがメインの攻撃手段である。
一方のクラッシャー歩兵は、歩兵と名はついているが4本脚の蜘蛛のような形に砲台が1門装備した虫のような形をしていた。後ろに回り込んでしまえば恐れることはない。
鮮やかな操縦で敵の背後に回り込み確実に弱点を突いていく。
万丈の親は熱狂的なロボットファンだった。
子供の頃、拳で語るロボットアニメを沢山見せられた万丈少年は、ロボット=拳という図式が幼い頃に出来上がっていた。
BOXはまさにそれを叶えてくれるゲームだったのだ。
「ブラウ・フィスト!!」
イマジネーションドライブでつくり出した、腕に青い炎を纏う技を使いクラッシャー歩兵の本体にある核を握り潰す。
消費量3%の使いやすい技ではあるが、乱発には気を付けないといけない。
クラッシャーを倒し、距離を置いて戦況を確認する。案の定芳しくないようだ。
そこに左のモニターに通信が入り、万丈は左のスイッチを押し応答する。
「よっ!!万ちゃん!!相変わらずわかりやすいなー、その青い機体は!!」
快活な声がコクピット内部に響く。
「カズキ!!遅いぞ!!」
「わりぃわりぃ。時間待ってたらちょっと寝ちまって」
モニター越しに見える黒髪短髪のカズキと呼ばれた少年は両手を合わせ謝意のポーズをとった。
「万ちゃん、それ特権服じゃん!!もう届いたの!?」
「そう、1週間かかんなかったんでびっくりしたよ。今日に間に合って良かった!」
「それ着て今回もランキング載ったらまた取り上げられんじゃね?羨ましいなーもー!!」
「カズキも早く貰うといいよ」
「出来るわけねーだろ!!どんだけランキング入るの大変だと思ってんだよ。500位以内に入るのだって無理だっつーの。おかげで俺はまだブラントだよ」
ブラントはBOXを始めると一番最初に触ることの出来るアームだ。
少し型が上がったデザインのアームで特に特徴のないところが特徴。
シンプルで扱いやすいといったところか。
キュアノエーデスが完全な人型に対してブラントは首が短く少し無骨なイメージを受ける。
それでも教習機体として使われているだけあって、上手いプレイヤーが使えばそこそこに戦える機体だったりもする。教習用は真っ黒(傷が目立ちにくいように)。
本番機体となるとグレーになる。
プレイヤーからは黒の方が格好いいのにと文句を言われていたりするのだが────。
「ブラントだって良い機体じゃん。俺あれ好きだよ、ストイックな感じで。兄貴なんか未だにブラントだし」
「あれは変態チートブラントだっての!!あそこまでブラントに入れ込んでてしかもムチャ強いとかありえねーから!!」
「ハッハッ!!違いないね、今度兄貴に伝えとくよ」
「伝えないでいいっつーの!で、どうすんだ。今日もやるのか?」
「やる」
「即答だな、勝算は?」
「ない。けど、やってみるしかない」
「流石、全国3位が言うと説得力が違う」
「茶化すなよ」
「はいはい、じゃあ行くとしますか。目標はフロア3クラッシャー要塞クリミナル!!」
万丈とカズキは操縦桿を握り、巨大な要塞に向かってアクセルを踏む。
◇
足の側面に取り付けられた車輪が回転し、地面を駆けるキュアノエーデスとブラント。
途中襲いかかるクラッシャー歩兵を的確に手刀で潰しながら要塞に近付いていく。
ブラントの主兵装は右手に持ったマシンガンと脚の側面内部に装備されているエッジダガー2本。
他は新たに武器を購入するかイマジネーションドライブで補強するしかない。
カズキの乗るブラントは頭に体感センサーを付け、背中に重戦車砲を積んだ若干カスタマイズしたものだった。
彼のランキングは2435位。
上位に食い込むにはまだまだだがブラントでなければもっと上にいける、とは本人の談。
そんな彼も、もう少しで新しい機体を変える階級に手が届く。
今回のイベントである程度の功績を取ればそれも確実だろう。万丈は、カズキがある程度
功績を稼げるようにとどめは刺さずにクラッシャー歩兵の動きを止めていく。
クラッシャー歩兵ならマシンガン程度でも問題ない。
「カズキ!後は頼んだ!!」
「速いっつーんだよ!!追いつくのがやっとだぜ!!」
キュアノエーデスが動きを止めたクラッシャー歩兵に至近距離でマシンガンをぶち込むブラント。
「これで3機撃破!!」
「要塞につくまでにあと5機は落とそう!!」
「おう!!頼むぜ!!」
ローラーを転がし要塞へと近付く。
クラッシャーはそれぞれ要塞を守るように配置されており行動パターンが決まっている。
蜘蛛型のクラッシャー歩兵。
四つ足に人型の上半身がくっついた形のクラッシャー騎兵。
空を飛び遠距離から攻撃してくるクラッシャー強襲兵。
形態は違えど、この辺の奴らはエネルギー残量にさえ気を付けていれば大したことはない。
「万ちゃん!!見えてきた!!」
1機、2機と敵を落としながら要塞の入口へと進むと、歩兵とは桁違いの大きさのクラッシャーが姿を現す。
「城壁兵……やっぱ近くで見るとでけえな……」
キュアノエーデスでも全長8m。ブラントに至っては6mだ。
それを倍以上は上回るクラッシャー城壁兵。
ゴーレムを思わせる分厚い装甲と巨大な腕がキュアノエーデス目掛けて振り下ろされる。
「あぶねぇ!!」
「どわぁああ!!!」
腕が地面に当たる前に全速力で駆け抜ける。
間一髪、城壁兵の攻撃をかわし懐に入り込む。
「あぶなかった……」
「即死コースだったぜ……まじで……」
このゲームは一度撃破された時点で、今までの努力がほぼ無に帰す。
唯一残るのは撃破数のみ。
それだけシビアなゲームのため、自らを危険にさらしてまで要塞攻略をするプレイヤーは珍しかった。
そして、“そういう奴ら”がランキングの上位を占めているのもまた確かなことだった。
「万ちゃん!!そっち、あぶねぇ!!」
1体目の城壁兵を避けたのもつかの間、後ろに待機していた城壁兵がすぐさま飛び掛かってくる。
背後では、後から追ってきていた別のプレイヤーのブラントが攻撃を受け粉々になっていた。
微妙な間合い。このままだと片腕はもっていかれるかもしれない……!!
ガコォォォン!!!!!
大きな音とともに、クラッシャー城壁兵の左手が吹き飛ぶ。
キュアノエーデスはその隙をぬって回避行動に移る。
ブラントだったら行動が間に合わず1発アウトだっただろう。性能に感謝するばかりだ。
「助かった……」
砲撃が行われた方向を見ると、人型の真っ白な機体が対艦用の長いライフルの換装をしているのがモニターに映った。白を基調として、とこどころに赤いラインが溝で入った機体。
「……」
白い機体はこちらを少し見た後、標的にされないように後ろに下がっていく。
「あれ、ティラユール・ブランシュ《白の狙撃手》だぜ!!全国ランキング2位の奴じゃねぇか!!」
「解説どうも。で、なんでまた加勢してくれたんだ?」
「わからん!!案外、万ちゃんのこと意識してんじゃねぇのか?」
「まさか。だとしたら、逆に放っておくだろうに」
ランキングを近いものをあえて生かす理由はない。自分が抜かれてしまうかもしれないんだから。
「そんだけ余裕があるってことなんじゃねぇの?」
「かもね」
「なんにしても命拾いだな。今のうちに潜入しようぜ!!」
「そうだな!!」
思わぬ加勢を受け、キュアノエーデスとブラントは要塞内部へと突入する。
内部に入ると、クラッシャー歩兵の頭が砲台ではなく回転刀になった機体が襲い掛かってきた。
刃を避けながら急所に攻撃を当てていくキュアノエーデス。
内部はむき出しの回路やパイプなどが継ぎ接ぎで設置されている。
思ったよりも急造で脆いイメージを受ける要塞内。中身は案外スカスカなのかもしれない。
「しっかしあの距離から当てるかねぇ。適正距離の3倍だぜ」
「あれもイマジネーションドライブの能力なのかな」
「使ってる可能性は大いにあるだろうよ!!」
迫りくる歩兵をマシンガンで牽制するブラント。
「にしても、今日はよくここまでついてきたな」
「新しい機体がやっと買えるからな!!失うものがない男は強いんだっ!!よっ!!」
ガコォン!!
脚部から取り出したエッジダガーで歩兵の装甲を剥がし、マシンガンと叩きこむ。
ボォォォォォオオオオン!!!
激しい音とともに活動を停止する歩兵。
「やるじゃん!!」
「あったりめぇよ!!」
ガッツポーズをあげるブラント。そこに歩兵が次々と襲い掛かる。
「カズキ!!危ない!!」
左手の操縦桿のボタンを中指で素早く2回叩き、ウィンドウを表示させる。
十字に現れたカーソルスティックを左に倒して【SET2】と書かれたコマンドに
カーソルを合わせてもう一度ボタンを叩く。
両手が青い炎を纏い、急加速したキュアノエーデスは一撃で3機の歩兵の装甲をぶブチ抜いていく。
「ブラウ・イグニス!!」
最後に大きな爆炎とともに、歩兵がバラバラに吹き飛ぶ。
「ふぅ、間一髪……」
「相変わらずお前の接近戦の能力は群を抜いてすげぇな」
「まぁ、それだけ特化させてきたからね」
「にしても、今日はだいぶ調子いいんじゃないのか?」
「あぁ、もしかしたら最新記録出せるかも」
「よっしゃ、時間もあまりねぇ急ごうぜ!!」
深夜0時40分 イベント終了まで残り20分
戦況はプレイヤー軍1635 ガデオン軍236に対してクラッシャー2万5942。
クラッシャーの優位には変わりない。いや、これだって善戦しているほうなのだ。
前回は開始から30分でガデオン軍が全滅し、イベント強制終了となった。
ガデオン軍は大半がブラントよりも旧式のノル・ブラントに乗っているためほとんど戦力にならない。
彼らを守っていては防戦一方になるため、必然的に攻めに回ることしかできなかった。
だが、今回はその中でも一部のガデオン軍が凌いでいるようだった。
その時、左モニターに通信が入る。
「万丈、やってるかー」
「兄貴!!」
声だけでわかる。万丈は歩兵を蹴っ飛ばしながら元気に返事をした。
「お前、戦場に見当たらないがどこにいるんだよ」
「内部に潜入したよ」
「マジか!!?よくやったなぁ」
「カズキが手伝ってくれてるからね」
「あっ、兄さん。ちわーっす」
「あぁ、カズキか。2人でよく通過したなぁ。要塞入り口付近でロスト続出だぞ。こっちは外でガデオン軍を守りながら戦ってる。けど、流石に数が減ってきた。時間いっぱいもつかわからんな」
「兄貴がガデオン軍守ってくれてたのか。ならここまでもちこたえてるのも納得だな」
「やれるだけやってみるが期待はするな。残り時間気をつけてな。あぁそうだその特権服、似合ってるぞ」
そう言って通信が切れる。嬉しそうに笑う万丈。
「万ちゃん、嬉しそうだな」
「そりゃあもう!!」
「万ちゃん、兄貴のこと好きだもんな。羨ましいぜ。うちのクソ兄貴と代わってくれよ」
「断る」
「だよなぁ!!さぁて、中央まで行くぜ!!」
深夜0時50分 終了まで残り10分
中央に向けて螺旋階段を上がっていくキュアノエーデスとブラント。
要塞内は騎兵と強襲兵しかいなくなり、無傷で通過することは出来ず徐々に耐久値も削られていく。
耐久値40%エネルギー値33%。
出来れば戦いは避けて本体まで行きたいところだ。
「万ちゃん、ここは俺が引き付ける!!先に行ってくれ!!」
「カズキ、もうダメか?」
「あぁ、エネルギー切れだ。耐久値も10%切ってる。のたれ死ぬくらいなら、せめて盾になって散らせてくれ」
「カズキ……」
「一度言ってみたかったんだ、こういうセリフ」
「それ自分で言うと台無しだぞ」
「ハハッ!!たしかにそうだな」
モニター越しに高笑いするカズキ。
「さぁ、行ってくれ!!!高雄カズキ、一世一代の見せ場だぜ!!」
ブラントは加速しキュアノエーデスの前に出ると背中に背負っていた重戦車砲を両手で構える。
ドシュゥゥゥゥゥゥゥ!!!
煙を吐いて前方に飛んでいく砲弾。
前方の壁に当たり、爆発の余波で騎兵を巻き込んでいく。
「どうだ!!見たか!!!」
「やる!!」
「俺はここまでだ、あとは頼んだぜ!!」
重戦車砲を床に投げ捨て、キュアノエーデスに向かってサムズアップをするブラント。
「カズキ、すまない…仇はとる!!」
後方から追ってくる騎兵に潰されるブラントを右のモニタで確認しながらキュアノエーデスは中心部に向けて加速した。
深夜0時55分 イベント終了まで残り5分
ようやく中心部に辿り着いたキュアノエーデス。
耐久値は29% エネルギー残量15% 技2発くらいの余裕か。それくらいで倒せるといいが。
中心部には、等間隔に配置された8本の柱。そしてその中央には黒い機体が鎮座していた。
「アーム?いや、違う…でも、良く似ているな……こいつを倒せば止まるのか?」
機体の近くで止まるキュアノエーデス。
その時、機体のモノアイが赤く光り顔めがけて腕を突き出してくる。
「うぉっ!!」
後ろに下がり、すんでのところで攻撃をかわす。伸びた左手を掴み、壁に叩きつける。
「こぉのっ!!」
殴ろうとする手を取られ、機体を横に振られる。パワーの違いに全く手が出ない。
「くっそぉ……強い……!!」
耐久値がガリガリ削れていく。
19%…16%…13%……。
このキュアノエーデスも、決して弱い機体ではない。
プレイから1年、コツコツと功績を貯めてアームを強化させてようやっと手に入った機体なのだ。
ここで失うわけにはいかない。
10%…7%…4%……。
「こいつを……失うわけには…いかないんだ…!!」
左のボタンを2回素早く叩きウィンドウを開く。
【SET3】のコマンドにカーソルを合わせボタンを押す。
キュアノエーデスの装甲全体が青白く光り黒い機体を押し返す。
「うぉぉぉおおおお!!」
叫び声とともに機体を持ち上げ、壁に叩きつける。
相手がダウンした瞬間を狙い渾身のストレートが機体に当たる瞬間……。
ビー!!
イベント終了を告げる音が鳴り響いた。
モニターには
《Mission failed》
の文字。
「時間切れか……」
万丈は力を込めていた操縦桿を放して顔の汗を拭う。いつの間にか大量の汗をかいていたようだ。
「もう少しだったな……」
要塞の中心部まで攻め込み、あと少しで初のクリア。あと少しのところまで手が届いていたのに。
万丈はリザルト画面を眺めながら、先ほどの一瞬の光景を思い出していた。
初めて見た黒い機体。あれがクラッシャーの親玉なんだろうか。
まさか、アームが敵だとは思わなかった。
その時、暗くなっていたモニターに文字が浮かび上がる。
《Next Event》
《Dec.25……Last mission》
「次のイベントは12月25日か…。にしても、ラストミッション?どういうことだ?」
万丈はモニターを見ながら、ラストミッションの意味について考え込んでいた。