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20.本当なの?

「ユリ。君は私を恨んでいるかい? 当然だな。私は君を利用した」


おばあちゃんを利用って。


「君の治癒や痩せた土地を再生させる能力は素晴らしいものだった。いままで裂け目から訪れた者の中でも類をみないほどに」


だから私にも不思議な力があった?

でも私の力は、ラスティ君にのみ活用できるって言っていたような。


「あそこから現れた者は必ずなんらかの力を持っている。私はね、君の能力を知った時は、私の領土の民の暮らしが楽になると純粋に喜んだんだよ。そして実際に豊かになっていった」


ラグナスさんの意識はどこか違う場所にあるようだ。


「だが、陛下が興味をしめされるだけでなく、娶ろうとするとは思ってもいなかった。私は、そこでやっと君に惹かれていたと気づいたんだ。散々利用した後に」


ラグナスさんは、握る力もないのか、触れるくらいの弱さで私の手を包んだ。視線を合わせる為に膝をついていた私に微笑んでくれた。

この笑い方、初めて此方にきた時と同じだ。


心が凪いでいく。


「ラスティが、君を帰らせたのは知っていたが、貴方ほどの力をもっているなら戻ってきてくれると思っていた。けれど君が再び来ることはなかった」


ラグナスさんの手の力が。


「少しずつ年を重ねるごとに、これでよかったのかもしれないと思えるようになり伴侶を得てこの地を守った」


瞳の力も。


「ユリ、君は幸せになれたかい?」


おばあちゃん、おばあちゃんだったらなんて伝える? 私はどう言葉にすればいいの?


私から手を強く握り返した。


「…幸せになれたわ。この世界に来れて後悔なんてないわ。ラグナス、貴方に会えてよかった」


紫の瞳が一瞬驚いたように見えた。


同じ場所にいられなかった二人。

でもきっと繋がっていた気がする。


「ラグナス、友として昔も今もずっと一緒よ」


ラグナスさんの瞳は閉じていく。

口元は微笑んだまま。


小さくふっと呼吸の音がした後、私の手の中から、ラグナスさんの手が抜けベッドに落ちた。


「…光が」


ラグナスさんの身体から、淡く光る紫の小さな無数の泡が出てきた。右肩にそっと誰かの手。ラスティ君だ。


「ユイ、お祖父様は亡くなりました。これから私は引き継ぎの義をしなければならないので別室で待っていて、いえ、遅くなってしまうので帰られて構いません」


ラスティ君のその後に続く言葉は「二度と来なくてもいい」かな。


身体全体が光に包まれているラグナスさんをもう一度見た。


信じられないよ。

温かい手。

優しい笑み。


一瞬で去ってしまった。




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