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2.花の香りで

…花の香りがする。梅かな?そういえば、おばあちゃん家だっけ。


あれ?おばあちゃんの家の梅は確か早く咲いてもう散ってしまった。


風が気持ちいいなぁ。風になびくカーテンの音がする。


…違う。

おばあちゃん家はカーテンじゃなくて障子だ。


バチン。

目を開けた。


「上が木じゃない」


目を開け、まず飛び込んできたのは見慣れた木目の天井ではなく色彩豊かな花の絵。


私はゆっくり体を起こした。何故か天蓋つきベッドにいるらしく、花の絵が天井に描かれていて4つの柱にも葉のレリーフが彫られている。


カーテンの微かな音と共にゆるやかな風が流れてくる方を見た。


窓は開け放たれ、その先は庭に続いているようで、花の香りもそこから流れてきている。その時、右奥にあるドアから小さくノックする音が。


「はい」


反射的に返事をしてしまった。そして自分の口から出た声は、びっくりするほど小さくかすれていた。そんな声でも聞こえたのかドアが静かに開けられた。


「失礼致します」


部屋に元気よく入ってきたのは、ちょっと横に存在感のある、私と同い年くらいの女の人でブラウンの髪をお団子に結い、服装は、メイドさんのような紺色の丈の長いワンピースに派手な黄色のエプロンをしている。


「気分はどうですか? 失礼しますね」


返事をする間もなく、その女の人は私の左手を握り一瞬目をつぶったかと思ったら、すぐに目を開き私を見てにっこり笑った。


「よかった。大丈夫のようですね。このお茶は、私が調合し気分が落ち着く効果もありますので飲んでみてください」


半ば強引に手にティーカップを持たされた。ニコニコとした笑顔を浮かべる人の前で、ちょっと未知で嫌なんですけどと言うこともできず、えいっと飲んでみた。


オレンジ風味の紅茶だ。


後味がオレンジだけじゃなくて、他の物も入っているようで複雑な感じで。でもまったく嫌じゃくてむしろ口の中がスッキリとする。温度も熱すぎず冷めすぎずで、ノドがカラカラの私は一気に飲み干した。


「ふっふっ気に入って頂けたようでよかったです」


私の一気飲みの様子を見て女の人は満足そうだ。ふっくらした顔にはエクボが1つ。笑うともっと可愛いくて、そして幼くみえる。女の人じゃなくて女の子かな。笑顔につられて一緒に口に笑みが浮かびそうになりはたと気づく。


──おかしいよ。


「和やかムードになっている場合じゃなくない?私おばあちゃん家にいて、それで泣きまくって、そうだ髪飾りを…」


髪に触れてみれば、髪につけたはずの真珠の髪飾りがない。


「ない!」

「髪飾りはここにあるよ」


年配男性の声。

女の子の次に部屋に入ってきたのは、白髪に…紫の瞳の老紳士。手には、見覚えのある髪飾り。


この人…花畑で見た人だ。


「旦那様、女性の部屋に失礼です」


お茶をくれた女の子が腰に手をあて口を尖らし、その老紳士に文句を言った。


「そうだな。ノックはしたが、確かに私が悪い」


よく分からないけど明らかに格上そうな老紳士はその女の子を怒るわけでもなく、頭をポンポンし笑った。


止めてください~と女の子。私は、置いてきぼりにされた気分になり思わず質問した。


「あの、私はどうしてしまったんでしょうか?」


ん?と二人は私を見た。

先に口を開いたのは老紳士。


「ユリの血をひくお嬢さん。あなたは、花畑で急な転移で倒れたんだ」


テンイ…?


「これも何かの縁かもしれない。君にお願いがあるんだが」


わけがわからないのにお願い?


老紳士はう~んと何と言うんだったか、ああ、そうだと呟きながら顎を擦っていた手を止めてこちらを見た。


「君、バイトしないか?」

「は?」


これ、夢だよね?


こんな意味不明な夢初めてなんだけど…。私がまずしたのは、自分のほっぺたをおもいっきりつねることだった。






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