14.よくわからないけれど
「えっと、お話がよくみえないというか…」
落ち着け私と言いきかせながら発言をする。
結婚って誰と誰が?
私、まだ学生なのですが。
そりゃあ結婚できる年齢だけど、まだピンとこないというか。でも、結婚式で着る、あのお姫様みたいなドレスは1度くらいは着てみたいなぁ。それに白無垢も綺麗だな。
「ユイっていつもこうなの?」
「いえ。たまに不思議な動きをする時はありますが」
「ふ~ん。異世界人って妄想が好きなのかしら?ユリは、そんな感じじゃなかったけど。それともユイが変?」
私が、結婚式について構想をしていたら失礼な言葉が聞こえてきた。
そして、おばあちゃん?
「おばあちゃんを知っているんですか?」
ついラナ先生に聞いてしまった。
先生は、ウンウン頷く。
「そうよ。なんて言うのだったかしら。そう!茶飲み友達だったわよ」
綺麗な美人さんから、そういう言葉を聞くと違和感を感じる。
そして更に気になる言葉。
「この、ラスがユリを還すまではね」
ラナ先生に指を指されて、ラスティ君は、いつもにもまして無表情になった。そんな彼を見て先生は、小馬鹿にしたような口調で話す。
「じい様はショックで気づいていなかったみたいだけど、私には分かったわよ」
無表情のまま口だけが動いているラスティ君はとても怖い…。
「──何の事でしょうか?私はユリさんの事は覚えていますが、まだ幼かったですし」
「ふ~ん。まぁ今は、問題がそこじゃないからいいけど。どうする? ユイの力が公にされたら婚姻が妥当じゃない?」
そこで、ラナ先生の言葉に間があき。
「──じゃあ埋めちゃう?」
バサリと音がしたと思ったら、前が見えなくなった。
「…ラスティ君?」
私の前にラスティ君が立っていた。彼のマントでラナ先生が見えない。
「へぇ~私が寒い所で放置されている間に大分成長したじゃないの」
「先生」
「ラス、話ができないからどいてよ。半分冗談よ。あ~真面目な話、時間ないわね。ユイ、あなた今日家に泊まれる?」
横から顔を出し、ラナ先生に聞かれた。
この、先生の家に? えっと、今日は予定はないし、明日は午後にお母さんの所に顔を出すくらいだ。
「はい。明日の午後は予定がありますが、それまでなら」
「よし。じゃあ、このお姉様とあんな事やこんな事を試してみますか。あっラスは帰んなさいね。で、じい様にユイが、体調悪くなったとかテキトーに言っておいて」
なんか言い方が嫌だと思うのはわたしだけ?
隣を見れば、ラスティ君も眉間にシワを寄せ嫌そうな顔。うん、だよね。
「あのお祖父様が、納得されると思いますか?」
「しないわね。でも、私の側なら簡単には手出しできないでしょ?」
諦めた様にため息をついたラスティ君は、おもむろに、指から紫色の指輪を抜くと私の前に差し出してきた。
これをどうしろと?
「手を」
首を傾げる私にラスティ君は、私の右手をとるとその指輪を手のひらにのせ、握らされた。
「何かあったら、これを強く握り俺を呼んで下さい」
なんかカッコいい~と思い彼に話しかけようとしたけど、彼の瞳はとても真剣で。
「…わかった」
返事しかできなかった。
「先生。明日は昼迄には伺います」
「そうね。なんとかするわよ」
「お願いします」
「あっ、ラスティ君」
扉のドアノブに手をかけたラスティ君をつい呼び止めてしまった。
「あの、帰り暗くなってきているだろうし気をつけて」
「…ありがとうございます。ユイも無理しないで下さい」
ラスティ君のちょっとだけ、険しさが和らいだ顔を見て安心した。
「ユイ。時間ないから、早速始めるわよ。説明は作業しながらするから。ついきて」
「はい!」
何がなんだか分からないけど、ラスティ君に迷惑をかけたくない。なにより、あんな無表情な顔をしてほしくない。
私は、先生の後に続いて部屋を出た。
読んで頂きありがとうございます!