NO.18 VS:海軍②
長らく時間が空いてしまいました。
そちらの方の言い訳()は活動報告でさせていただきます。
チッ、なぜ今来る!
私が旗艦の甲板にでると、そこには「奴」をのせたドラゴンと「奴」が結界を破ろうと攻撃を仕掛けているところだった。
「なんて破壊力だ!」
「もっとだ! もっと魔力を寄越せ!」
「無理です! これ以上は機関に影響が……」
「いいから早く! 機関云々より先に死ぬぞ!」
結界維持にも魔力は必要とされるが、攻撃を魔力変換するのにも魔力がいる。
効率が悪いように聞こえるが、ただの結界では「奴」の前では意味を成さない。次元を越える刃などこれで守るのがギリギリというレベルだ。
倒したら検体として解剖だな。機銃にできれば、他国への牽制になる。核なんて目じゃない貫通力。消費魔力にもよるが……
「デューク様ぁ!」
「なんだ!?」
声がした方を振り向くと、そこには……
「――!」
首のない死体が佇んでいた。
「……何故だ。なぜ中へ入れる」
そこには俺も画面越しでしか見たことのない存在。
「奴」がいた。
「奴」はその黒髪をたなびかせ、こちらを嘲笑うような目で見てくる。そこにはただただ嗤うだけの顔しかない。
「いやぁ僕もバカですねぇ。結界内には転移出来ないものと思って居ましたが」
「転移魔法だと……!」
転移魔法。それは即ち一つの真理。空間を超越して移動することも。時空すら超越できる魔法の一種の到達点。
そんなことまでやってのけるとは……
「奴」、やはりここで殺らねば!
「というわけで、サクッと」
「殺してやりますか」
――瞬間、辺りが歪んだ。
そう思わせるほどの殺気が「奴」から放たれていた。
「ッ! デューク軍省長!」
「へぇ、あなた、お偉いさんですか。話があるので貴方は放置で」
「集団転移!」
こいつ、無詠唱でそんな高度な魔法を……!
いや、集団転移?
私個人を転移させるなら態々そんなものを使わなくてもよいはず。
「なにをする気だ!」
「なぁに、簡単なことです」
私の周囲に竹の檻が作られる。
「こんなもの!」
回りにいた兵士たちが檻を壊そうとするもびくともしない。
「あぁ、結界付与してありますので簡単には壊れませんよ?」
「奴」はケタケタと薄笑いを浮かべてそう言い放つ。
「さて、パーティーの始まりですっ!」
瞬間、「奴」の体から多数の刃が射出された。それは船すら容易に削り、切り裂く。
俺の目の前で、部下たちが断末魔すら上げられずにスクラップにされていく。
「驚かないんですね、目の前で部下が殺されているというのに」
「……」
正直、ここまでのものだとは思わなかった。恐らくはここから打てる手は無さそうだ。しかし、ここで諦めるわけには行かない。
俺は手を目の前の竹檻へ向け、ある魔術を使用した。
「下級魔術、ファイヤーボール」
瞬間、手から小さな火球が発射された。しかしそれでは、強度付与された檻の前ではほとんど意味をなさない。
火球は檻を成す竹のうちの一本に衝突し、少し燃えたあと小さな焦げを残して消える。
そして、さらにもうひとつ。
「下級魔術、ウォーターボール」
手から発射された水の球は同じように当たり、竹に罅をつけた。
この二つは魔術のなかでも基本とされているもので、特段得意でない者でも使うことができる魔術だ。
竹が乾いていなければこんな簡単に罅はつかない。
そしてラスト。
「下級魔術、ブラスト」
ブラスト、それは単純な魔力放出。魔力を衝撃に変換し、発射する。新人魔術師はまずこの魔術から学ぶことが多いとされているほど制御が簡単だ。
しかしそんな魔術でも、火、水との連撃であれば、結界付与された檻を破壊出来るのだ。
ガシャン、と音を立てて崩れる檻。
「な……」
「奴」はこちらを振り向き、一瞬驚きを露にするも、すぐに無表情になり、こちらにまたあの刃を打ってくる。
しかし、もう遅い。
私は首に取り付けてあるペンダント型の魔道具を使う。
その魔道具に込められている魔術は我が国の、いや、現時点で最高の魔法。
「最高位転移魔法、完全転移」
私がそれを放った瞬間、世界は改変された。




