NO.15 VS:空軍
――ついに朝になった。
集合場所の中庭に行くと、準備完了といった感じのシエセルが待っていた。
「行きますか」
「行きましょう! 私の背に乗ってください」
「了解しました」
シエセルの背に乗ると、一気に回りの景色が変わる。
「あと3分程で到着します」
「接敵したあとは敵部隊を足止めしてください。こちらから魔法を撃ちますが、詠唱に時間がかかります」
「了解。主よ」
それからすぐに敵の影が見えてきた。戦闘機に形状は近いが、恐らく魔法援護を受けているのだろう。滑らかな動きをしている。
「即刻立ち去れ! さもなくば攻撃する!」
向こうから声を出してきた。どうやってやったのだろうか。
僕は飛行魔法で空中に浮かび、シエセルが前に立ち塞がり、敵の侵入を阻止している。
立ち去っても攻撃してくるような奴に話し合いの機会など与えない。
「次元に命ずる。次元の狭間に干渉し、歪みを作り出せ! 次元刃!」
「くあっ!?」 「ギャヒ!」 「がはっ!」
4割ほど消し飛んだ。平行して飛んでいるからそうなるんだ。
しかし――
――ドーン!
瞬間、どこからか飛んできた大砲らしき物体が猛スピードでこちらに飛んできた。
躱そうとするが、躱しきれず、頬を掠めていく。
毒でも入っていたのだろうか。力が若干抜ける。
「主!」 『どうしたのセヘル!?』
シエセルが慌ててこっちを見るが、戦闘に集中しなければならず、直ぐに視線を戻した。
「大丈夫です。このくらい」
直ぐに体制を立て直す。大砲が飛んできたのは恐らく、海。艦載砲の射程圏内なのだろう。ここでは戦いにくい。
「シエセル。後退です。ここでは大砲の射程圏内のようです」
シエセルに再び乗り、後退した。
「この辺りなら大丈夫そうです。さっきと同じ作戦で行きますよー!」
「了解!」
先ほどと同じ感じで相対する。一機だけ挙動が鋭いのがいる。あれがリーダーだと思われる。
シエセルにリーダー機を指差しながら、あれを重点的に足止めするように言っておいた。
おっと!? 機銃を撃ち込まれたシエセルの飛び方がおかしくなってきている。
「シエセル、これ以上は危険です。先に撤退していてください」
「ですが……!」
「これは命令です」
「……御武運を」
渋々、といった感じでシエセルが撤退した。もう詠唱が終わった次元刃を放つ。前回とは違い、本数を増やしてみた。殆どの 敵が消し飛ぶ。
「くっ……」
「あとは貴方と僅な仲間のみ。これを使ってみましょう」
「暗黒転移魔法 ダークバースト」
これは範囲技であるため今の敵が密集していている状態では効果をもろに食らう。現状魂エネルギーが大量に流れ込んできた、
黒字じゃないかと思えるほどの量だ。魂エネルギーは本人の強さに起因するため、恐らくボスも倒せただろう。
「くっ……なかなか強いな、子供だと侮っていたが」
まだ生きているのか。しぶとい!
畜生、次元刃を使おうにも詠唱がまにあわないし機銃を撃ち込まれては危ない。短期決戦だ。
相手戦闘機のコックピットに張り付き攻撃するも硬い。腕に魔法をかけてみよう。やったことないけど。
やろうとすると、出来るものだな。本能的にこうすればいいと分かる。
「筋力増強:腕!」
思いっ切りの一撃を食らわすと、衝撃で爆散していった。
「ふぅ……」
『セヘル? 終わった?』
通信魔法でソシエールが話し掛けてくる。そう言えば戦闘中も大砲が擦った時に声が漏れてたな。
「無事に勝ちましたよ」
『良かったわ、あとシエセルだけど大丈夫そうよ』
「原因、分かりましたか?」
『毒みたい。とりあえず作っておいた解毒剤を飲ませておいたわ。』
「分かりました。ありがとうございます」
よし、取り敢えず帰るとするか。




