ss とりっくおあとりーと
ハッピーハロウィン!
皆さんは仮装しましたか?
お菓子って美味しいですよね。
子供がねだるのもわかるってもんですよ。
「とりっくおあとりーとです、お菓子ください」
その言葉には困惑せざるを得なかった。
っていうかとりっくおあとりーとって何?
まぁお菓子はあるから一応手渡す。ポテチとかクッキーとか。
「ありがとうございます」
「とりっくおあとりーとって何?」
とりあえず聞いてみた。自分で言ってる時点で意味は理解しているのだろう。
「分かんないです。買い出しに行ってると子供がとりっくおあとりーとっていってました、お菓子をあげなきゃ悪戯するって」
「それは大変ね」
分かんないのか。まぁ特に用心することはないだろう
――と思っていた。
次の日、つまり10月31日に用事があって近くの人里に降りていた。体に光学偽装魔法をかけているので特に普通の人間に見えるのだろう。まぁ掛けなくてもよくはあるけどセヘルに顔がばれては不便と言われたのでそうしているのだ。光学魔法はセヘルが魔道書を持っていたので使用可能だ。
すると、そこの子供だろうか。10やそこらの年の子供が集まってこう言った。
「「とりっくおあとりーと」」
お菓子は今持ってないんだけどなぁ、もう悪戯かっ食らってやろうかな。子供だしそんな酷いことにはならないだろう。だけどセヘルそういうのうるさそうだからな。まあいいか。
「いいわ、ちょっとついてきて」
「「はーい」」
なんとも可愛いことで。知らない人についていってはいけないんではないだろうか。
取り敢えず近くの店で売っていたキャンディをあげた。
「「ありがとー!」」
そう言って彼らは次の標的に狙いを定めた。
「あぁ、ねーちゃん。知ってるとは思うけど今日お祭りがあるから来てくれよな」
子供との話を終えて帰ろうとするとキャンディを買った店の主人に声をかけられた。なんか気になることを言っている、聞いてみよう。
「お祭り?」
「あぁ、皆で仮装して、集まって近くの民家にお菓子をもらいに行くんだよ」
つまり、大人もあんなことすんのかよ。
『『とりっくおあとりーと』』
大人がたくさん蜃気楼殿に集まってお菓子をねだる想像をしてみる。
……考えなかったことにしよう。私はなにも考えていなかった。蜃気楼殿の場所がわかるやつがいるわけがない。フッと現れて消えるのが蜃気楼殿の命名理由だからね。うん。
その日の夜、セヘルと一緒に町へ降りていた。シエソルには留守番を頼んである。
セヘルがどうしてもって言うからね。仕方ないね。
「それで、どこへ行くんですか?」
「おや? 知らない顔だね」
「隣町のもんですから。それよりどこへ行くんですか?」
「ここと、そこと、あそこさ。行くとこには前もって玄関先に明かりをともしてもらってる」
「そうですか、ありがとうございます」
セヘルが村民との会話を終え、戻ってくる。
「よし、僕たちも行きましょう、蜃気楼殿にも来るっぽいですよ」
「え? 私たちも?」
「なんか場所がばれてるらしいです。シエセルの眷属がリークしてるっぽいです。後でお仕置きですね」
その日、蜃気楼殿の倉庫のお菓子は大量に消え去り、シエセルの眷属は大いに悲しんだと言う。
不定期更新ですが、見てくれてありがとうございます!
これからも頑張ります!
「ヒソヒソ……ちゃんと出したからね、ソシエールよ」




