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NO.8 襲撃~その後~

10畳はあるであろう広い部屋の奥、そこにおかれてある如何にも高そうな革製の椅子に寄り掛かった俺は目の前で部下からの報告を聞く。


「それで、件の奇襲作戦はどうなったのかい?」


笑顔を心掛けているにも拘らず、目の前の有能な偵察班長の彼は硬い顔をしている。


「はい。送り込んだヘーク様率いる軍団は奇襲することは出来たのですが、「奴」の反撃を受け、更に召喚された上位竜にによりヘーク様を含めて全滅しました」


「生存者はいないのか?」


「誰もいません」


もたらされた驚愕の情報に、暫く時が止まったように音が消える。「奴」、噂に寄るものだと鬼の子供とのことだったが、これは評価を上げねばなるまい。


「どういたしますか、デューク軍省長」


「対鬼特殊部隊をいつでも出せるようにしておけ」


鬼は昔人間がこの世界を科学によって高度に発達していた所に突如として現れた存在、ある東端の島国では「妖怪」と呼ばれるもので、伝説上の生き物だった。

鬼はあらゆる面で人間を凌駕し、尚且つ好戦的であることから人間との戦争に至るまで時間は掛からなかった。

結果、僅かな差で勝利をしたのだが文明は崩壊、嘗ての科学を失った。

代わりに発見された新たなエネルギー、それが魔力である。

練り上げられた魔力を組み上げ、魔法という形で現世に影響を与える。

魔力は魂に宿るものであるが、種族的な差、すなわち人間と鬼の魔力保有量にも大きな影響を与える。

人間の平均魔力保有量(500~3000)に対し、

鬼の平均魔力保有量(10000~25000)

は余りに大きすぎた。鍛練によって上がるのも微々たる物であり、今では鬼に蹂躙されていた筈であった。

しかし、鬼には大きな欠陥がある。

消滅だ。

そもそも妖怪とは、人間に恐れられた存在。恐れられて生きているのではなく、恐れられるべくして恐れられているのだ。


まだ世間には知られていないが、この消滅は、あらゆる面で人間を凌駕する鬼への最後の希望なのだ。

分かりやすく言うと、鬼を含める妖怪は、恐れが力であり、恐れられないものは存在が希薄になり、やがて消える。


これを人為的に起こすことは出来ないか、そうして研究されてできた武器、それが対妖武器である。これには特殊な術式が込められており、これで傷つけることができれば存在を薄めることができ、消滅、つまり殺すことができる。


先程の対鬼特殊部隊にはこの対妖武器があり、現状妖怪を殺せる唯一の部隊なのだ。


「「奴」との全面戦争に備えろ。各部隊に通達、部隊長を召集しろ」


「は!!」


偵察班長に指示を出し、一人になった部屋でぽつり、と呟く。


「……ケーキ食べたい」


それが、厳格な見た目に反して甘党なデュークの、偽りようのない本心であった。

―――――――――――――――――


「うーん」


あの襲撃から直ぐに再び転移が起こり、調査等を済ませて今は1か月程経過していた。

ここは蜃気楼殿の広大な敷地の一角、所謂中庭なのだが、一つ困ったことに悩まされている。


「シエセル」


「はっ! どうされました?」


「これは……一体?」


魔法により人のかたちを取っている目の前にいる竜、シエセルの後ろには、多数の影、まだ可愛らしい人間の子供の姿があったのだ。

シエセルになついているようだ。


「シエセルさまー、遊ぼー?」


「絵本読もー?」


「相撲だー!」


何てことはない、とでもいいたそうなシエセルを尻目に彼らをまじまじと見つめる。


「私の眷属です。この館の守り手が欲しくてですね、取り敢えず数十匹程、あと3か月もあれば成体になるでしょう」


「それはありがたいのですが、どうしたのですか?」


どうした、とは眷属たちのことだろうと理解したシエセルの説明によると、

ソシエールに愚痴を聞かされたのだが、その中にこの館の守り手がいないので大して強くもない盗賊たちと戦わなければならない上、夜にくるので起きるのがめんどくさい。というのがあったので生み出した。

シエセルの上位竜としての力の中に眷属というものがあり、下位竜を生み出し、それを眷属として従えることができるらしい。


彼らも下位とは言え竜なので門番くらいにはなるだろうと思ったが、数があった方がいいだろう、人形から変形できる方がいいだろう……

という試行錯誤の後に生まれたらしい。


「竜だったのですか……、わかりました。彼らのことは任せます」


一瞬の思考の後に発した言葉にはこの頃役に立てなくて沈んでいっているシエセルへの配慮もあったのだろう。


「! はっ!」


「ねぇねぇ、遊ぼー?」


一瞬喜びの表情をしたあと、直ぐに顔を戻すシエセル。

そんな彼と眷属たちを微笑むように見つめるセヘル。

今日も蜃気楼殿は平和であった。

ソシエール「あれ? 私の出番は?」

作者「……」

ソシエール「……次回は出そうね?」

作者「……申し訳ありませんでした」


セヘル「出るの遅くない?」

作者「忙しかったんです。しょうがない」

セヘル「しょうがなくないわい」

作者「すいませんでした……」

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