表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バーサスクリアラー  作者: FT
15/24

アンドザショウダウン3


主な登場人物



スミヤ - 29歳、女性。シャフト関係の技術士官。大聖女・カラクラを管理する立場でもある。


オリン - 9歳の女の子。カラクラのたった一人の家族。クリアラーの訓練生。


ハツシバ — 45歳、男性。列島側、中央政府高官。クリアラー関連の部署を牛耳る。


ラマニノフ - 51歳、男性。大陸側の外交官。大陸政府の顔効きということで、列島側の権力者は彼を「閣下」と呼んで敬う。










 スミヤ技官は、憲兵を用いて、カラクラの捜索をおこなっていた。クリアラー・ハスノチヅを病院のボイラー室内で発見したが、彼女は、何の手がかりも持っていなかった。


 次に、カラクラと消えたアリマ大尉の身辺を調べようと情報統括本部に問い合わせた。大尉の資料を引き出すには、手続きに一週間は、かかるということだった。


 スミヤは、早急に情報を得ようと、彼女の上司にあたるハツシバへ助力をもとめた。ハツシバは、政府機関のクリアラー関連部署の棟梁ではあるが、情報統括本部まで影響を及ぼせるほどの力は、なかった。


 彼女には、騒動の首謀者の見当がついていた。一夜明け、スミヤは、大陸駐在官事務所へ乗り込んで、ラマニノフに直談判しようとした。ハツシバは、彼女を止めた。


 ラマニノフが、カラクラをさらった張本人であることは、たしかだったが、証拠がない。なぜならば、実際に手を下したのは、偵察部隊の人間であり、しかも、そこにストリチナヤという武器商人が仲介している。このつながりを示すことは、当事者をつれてこないかぎり、不可能だった。


 そこへきて、さらなる問題が発生した。


 列島南方方面でのカーズマンの動きが、活発化してきていた。


 サウスシャフト要塞防衛隊司令部は、この状況を危惧し、カラクラにサウスシャフトへの待機を要請してきた。サウスシャフト司令部は、カラクラが行方不明であることなど、知る由もない。


 憲兵隊とクリアラー人事院は、昼夜問わず、カラクラの捜索活動を続けた。そこでわかったことだが、カラクラが消えた日、要人警護を任されている憲兵隊の部署に誤情報が流されていたことが判明する。


 カラクラ様は、退院し官舎にて静養なされている。警備の増員は必要なし。警備部は、通常勤務を果たされたし。


 このデマカセの情報が、どこから出たものかを当局は、全力であらっている。


 しかし、みつかったとして、警備部長は、確実に閑職にまわされるだろうし、カラクラの管理者としてスミヤ技官の立場は、追われることになるだろう。


―だけど、ここでシャフトを動かせるクリアラーを発見すれば、どうなるだろう?


 カラクラがいなくなって、丸一日経った夕方、スミヤは、カラクラの官舎へ帰った。スミヤが車を停めると、オリンが、飛び出してきた。


「カラクラ様は…」


 車のどこを探してもいない。


「カラクラは、軍の医療施設へうつってもらったわ」


「そうなんですか…お見舞いにいけますか?」


「オリン、今は大変な時期なの…」


 スミヤは、しゃがみこんでオリンと目線をあわせた。


「サウスシャフトのまわりにカーズマンが、せまってきているわ」


 唐突に話を変えるスミヤに、オリンは、目をまるくして、ぼんやりとした。


「あなたは、これから、わたしとサウスシャフトへいきます」


「カラクラ様もくるんですよね?」


「あのね…オリン、カラクラは、どんどん、すり減っているわ。シャフトにふれるたびに取りかえしのつかない傷を負うのよ。だから、カラクラを助けるには、あなたがやるしかない。わかるわね」


「わたしが、ですか?」


「そうよ」


「できるわけありません…わたし、ロッドだって使ったことないんです…」


「カラクラを助けたくないの?」


 思いきり首を振るオリン。


「助けたいです…」


「その気持ちさえあれば、きっとできるわ」


 スミヤは、嘘をついた。罪悪感は、なかった。中央都市に敵の危機がせまれば、だれであろうとシャフトを動かせる可能性のあるものをあたらせる。彼女は、それが都市に住む人間の義務だと思い込んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ