=スプールフィズチルドレン編= 1話
突然両親が不慮な事故で死んだ。
しかし、それには真相があった、突然ハンドルがきれてトラックへ自ら突っ込んでいったというのである。しかし、赤西雪は、彼らと来週遊園地へいくために前売りチケットを買ってかざってある。自殺するには、理由が突然すぎるため、もしかしたら何かあるのではないかと疑い始める。
部屋の遺品を探していると、奥の倉庫から古びた箱を手にとった。
祖父母の宝物と称された箱の中には一枚の手紙が入っていた。
人の運命とは連鎖の中にあり、輪廻転生を繰り返しながら人は長く長く生き続ける。しかし、その中でもその年に生まれた子供たちは何百何万と死んでいき、笑うことも悲しむこともできず、両親の愛情すらなく、笑い合うことができない年であった。
そろそろ、迎える運命に誰かが「欠けているもの」の欠片を集めていかなければならない。それは小さなもので、それをカタチになるまで集めることで、人々は死なずに済むであろう。
残り日数はあと半年、今この時点で半年であればきっと・・・、これを見つける頃にはあと半月といったところであろう。君は、それを集めることができるだろうか。
+神様は、その何かを集めると褒美をもらえるらしい。
頑張って生きるのだよ・・・雪。
っと、達筆な文字で書かれている。
文字はその人を表す、これはつい最近かかれたものだ。あと半年と言われていた、この手紙の日付は、20・・・年6月称されている。
ここから半年後がリミット、理解ができない。理解が追いつかない、なぜなら「欠片」というのがよくわからないとのと、もしこれがほんとうだあれば次は誰が死ぬのか。
今はまだ、わからないけれど。でも、他に綴られていることがある。
『 周りに気をつけろ 』
そう綴り終わっている。
この手紙を読むことがどんなに自分にとって利益になったのか、わからないのだが周りに起こっている負の連鎖は、きっと今始まったばかりなのだと理解しようと必至にはなっていた。
外に出るたびに、何かが自分を追いかけてきている気がする。周りの音が一つ一つここに耳に入ってきて気分が悪くなる、何かが得体の知れない何かが…
「ねぇ!」
「へっ……」
「君、スプール・フィズの仲間でしょ」
「は?」
「だから、スプールの……」
自分と同じような年であろう、彼女は何か聞いたこともない言葉を口にするが、言いかけたとたん、都会にあるビルがズドンッ!!と大きな音を立てて、バキバキと横に倒れてくる。
「逃げろ!ここは危険だ、アジトへ向かう。君も一緒に来い」
無意識に彼女の手を握っていたが、倒れてくるビルがあまりにも多く、ビルの下敷きになる人、がれきに押しつぶされている人、恐怖のあまり動けない人がいて、人間の醜い姿がそこにはあった。しかし、こんなことがおきるということは日常的にはありえない。ありえるとすれば誰かの手で起こされているテロであろうが、なんの爆発音もなく傾いてるのがわかったのは、メリメリと音を立てた時だった。
「これは一体なんなの!? 君ならわかってるんだよね!?」
「それはアジトについてからだ、僕らは狙われている。神様から!」
「神…様…」
「僕たちは、死ぬために生まれてきた人間なんだ。それを止めるには方法がある。その方法を見つけ出さなければ、この人生はゲームオーバーだ!!」
彼女が言っている意味が何も理解ができなかったが、僕たちが何か追われていて、なにかから殺される運命だから逃げなければならないという意味であろう。僕は改めて、事の重大さを思い知った。ビルの下には多くの人が下敷きになっている、大通りの真上に倒れたところには車が潰れ、なかで人が死んでいるのだろう血が流れているのが見える、周りはパニックを起こし大混乱、人々は我先にと逃げ道を走り去っていく、救急車や消防車、警察のサイレンが街中で鳴り響き、叫び声とともに混じり合って音が耳に入ってくる。
「気持ち悪い」
「気分わるくなった?もう少しだよ」
音が混じって、頭の中で反響する感覚。
昔、こんな感覚があった気がするけれどわからない、思い出せない。サイレンと事故の大きな衝撃で、僕は記憶が曖昧である。
「ついたよ」
息も絶え絶えになりながら到着した場所は、地下通路を通り昔使われていただろう地下鉄道の残骸と大きなトンネルだった。湿った空気が体中にまとわり付いてくるのが肌で感じるが、目の前は暗くはない。何故なら、そこら中に小さなポツポツと明かりが灯っているからだ。
「これ、電気通っているの?」
「うん、ここはまだ使われている地下鉄道に繋がっているから通っているんだ。みんなここでスプフィズの仲間は過ごしてる」
「それ。・・・僕は知らないんだけど」
「それは、ここのボスから説明されると思うよ。それに、君を探していたんだ」
そういうと彼女はニッカリと笑って自分の方を見てから、また歩き出す。ぴちゃぴちゃと音が空洞の中で響き、まるで幽霊が好みそうな場所だった。
幾分奥へと進んでいくと、彼らは家を建て、火を焚かして炊事をし、あるものはギャンブルなんかもしていて、上にある現世から仕入れてのであろうものが、割高で販売されているが、ある程度の生活はここで大丈夫そうである。
「ここが、スラム街の小鳥磨知だよ」
「小鳥街」
「昔はもう少しましな、地下街だったんだけど。今は人数も減って、だいぶ廃れてしまったけどね」
苦笑いを浮かべながら彼女は街へと一歩踏み出す、なかなか盛大に町起こしをしているようにも見える。彼らがなぜ地下で働いているのか、なぜここにすまなければならなくなったのかは、自分にはあと少し時間が足りなかった。
「で、今から行く場所は神聖な場所だから。こことは別世界に通じている通路を通るよ。君は一人だよね。もちろん」
「家族はいないか、という質問かね」
「そうだよ」
「いないよ」
「なら、ここに住むことになると思う」
がやがやとしている中で必死に耳を傾けた。聞こえづらいというよりは、僕は耳が音を変にうるさく捉えてしまうらしく、昔から「声は」聞き取りづらかったのだ。
「そう、でもそれを決めるのは僕だよね」
「違うよ、君じゃない」
不思議とそういう答えであろうとわかっていようにも心の中で感じていた。しばらく歩き続けると街からだいぶ離れていて、目の前が白くなっていくのがわかる。だんだんと施設のような美しさに囲まれ、見たこともないロボットが自分と彼女を通りすぎていく。
「ここは近未来の世界。この空洞は近未来と今と過去に繋がっている。あっち側にいくと過去、こっち側が近未来」
「それって」
「異次元がねじれてできた、世界。僕たちはそれが行き来できる存在」
「それが・・・スプールフィズ」
「そう、それの意味はわからないけれど、多くの人は弾け巻き取る人間のことを指す」
「弾けて巻き取る?」
「うん、人間が死んで、世界が進む」
「そういう・・・」
真っ白な空間、機械音が静かに音を立てているのが聞こえる。そして、人の呼吸と動物がいくつもいて、空間の空気が重い気がした。
「着いたよ」
「ここが」
「ここはもう近未来、あちら側にいくには力が必要。その力を持っているのも僕たちじゃなければならない」
「なぜ」
「さぁ、なぜだろう」
にこにこと笑いながらも大きな門の前に立たされ、扉が開く。眩しいとさえ思える光の大きさに思わずぎゅっと目を閉じてしまうが、誰かがそこにいるのは微かが目に入った。
「あなたは・・・」
「ここのリーダーだよ」
やっと慣れてきた目をゆっくりと開くと、あたりは廊下同様真っ白な空間であった。ぐるりと目を動かし全体を見渡してから、真正面に座っている女と男は笑いもしない。
「君が、赤西雪」
「はい。なぜそれを」
「君を探していたからだ」
「なぜ」
「それは、君が後継者だからだよ。この呪いのね」
意味がよくわからなかった。後継者とは、誰かを引き継ぐことであろうが、僕にはそんなものはないはずである。あったとしたら、僕の両親の家は引き継いで売ってしまった。払えるわけがない住宅ローンの明細を見て、僕はその家を売り、そのお金で小さなボロいアパートに移り済んだし、後継者という大層なものでもないであろう。
「意味がわかりません」