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HIGH FIVE  作者: 栄津鞆音
28/28

high-five27《epilogue》


 成田空港の見送りラウンジ。

「行ったな。

 ……私との結婚すっぽかして」

 マジで溜息をつく西中郷素衣。

「行っちゃったね。

 ……まだそんなこと言っているの」

 呆れ気味の高萩直。

「……」

 じっと機影を見送る成沢遥香。


 見送りに来たのはこの三人、

 妹の媛貴は来なかった。

 伊立では卒業と旅立ちを祝って、

 全員で『焼肉どんぶり』に舌鼓。

 媛貴は別れ際に晴貴から、

 ギュっと抱きしめられても、

 気丈にも涙を見せなかった。

 その後はずっと、結貴が手を握っていた。

 おお兄ちゃんを笑顔で見送ると、

 姿が見えなくなってから、

 結貴にすがりついて号泣。



 出発前の空港ロビーで4人が記念撮影。

 遥香と晴貴のツーショットは、

 二人とも満面の笑顔だった。


「……今でも信じられない、

 晴貴が『銀河系軍団』の一員だなんて」

 感嘆する遥香。

「シュルツェンのおっさんは、超やり手らしい」

「ええ、まさかの展開だよね」

 西中郷と高萩は取材でシュルツェンとは何度も会っていた。

「でも凄いよね、すぐにレンタルに出されるとはいえ」

「遥香、知っている?

 イタリアの『ティレーニア』ってチーム」

「幾つかのクラブが合併したセリエBのチームだって、

 晴貴から聞かされたけど、詳しくは……」

「サッカーはセリエBだよね」

「サッカーは、って……?」

 キョトンとする遥香に対し、

 西中郷と高萩はにやにや。


「本当にシュルツェンのおっさんは、超やり手だ」

「移籍にビックチームを絡めるなんてね」

「サッカーのセリエBじゃないの?」

「いや、サッカーはセリエBだよ」

「まさか二刀流……」

 遥香は目を見開く。

「そう、バレーボールはセリエA2」

「そこの会長が古い知り合いでね……」

「アトランタオリンピックで出会ったんだよね~」

 西中郷が意味ありげに高萩の肩を小突く。

「止めてよ、遥香の前で余計な話は」

 高萩は苦笑い。

「昔のカレシなの?」

 遥香は興味津津。


「……一人分の資金で、良い買物だって」

「直も一緒に行っちゃえばよかったのに」

 西中郷が茶化す。

「そのこと、晴貴は知っているの?」

 遥香は晴貴から聞かされていない。

「そのことって、直の恋物語?」

「じゃなくって、二刀流よ!」

「どうかな?」

「どうかなって……、

 1月から何度も渡欧していたけれど、

 バレーボールのバの字も聞いてない」

「じゃあ、知らないんだよ。

 遥美も、成沢監督も、相賀監督も口が堅いから」

「大丈夫、晴貴を信じなさい」

「シュルツェンのおっさん、やりやがったな、

 ン? お姉ちゃんたちも一枚噛んでいるでしょう!」

 言いながらも遥香は楽しそう。


「当たり前よ、貴美から託された責任がある」

「おかげで私たちの番組が独占スクープいただき」

「面白い!

 どうして晴貴はいつも簡単に騙されるのかな」

 遥香が手を叩いて喜ぶ。

「遥香、日曜日の放送、見学しに来なさい」

「勿論!」

 遥香は二つ返事。

 三人は悪い顔で肩を寄せる。

 こうして遥香は、

 西中郷と高萩の番組におびき寄せられた。

 そこで待ち受ける二人の罠に気付くこともなく。


「それじゃあ、晴貴の明るい未来を祈りましょう!」

 三人は喜々としてハイタッチを交わした。


========== HIGH FIVE お わ り ==========


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