【※禁煙です※】
コンビニの洋式トイレに腰掛けながら僕は貼り紙を見ていた。
【※禁煙です※】
一体これはなんだろうか?
なんの為の貼り紙だろう?
前々から思っていたが、喫煙禁止のトイレは、なぜ、喫煙禁止にしてしまったのだろうか?まったくもって、意味が分からないし、意味が無いような気がしてならない。
[タバコを吸うと警報器が作動します]
これも意味不明である。仮にタバコを吸って警報器が作動したところでなんだと言うのだ。
「トイレで火があがったぞ!」「レスキュー隊に連絡だ!」と騒ぎ立てる係りの人達はどんな人達なんだ?どんなキャラクターなんだ?どんな仕事なんだ?どんな時給なんだ?どんなシフトを組まれているんだ?様々なクエスチョンマーク達は僕のいけない好奇心を駆り立てた。
胸ポケットからタバコとライターを取り出す。タバコを口に加え、ライターで火を付ける。白い煙をおもいっきり吸い込み、真上に向かってフワーっと吐き出す。次の瞬間……
〔ビィィイイイイー!!!〕
半端ない騒音が店内に響き渡る。
うるさい。気分がわるい。
尻を拭く。ズボンを履く。
手を洗ってドアを開ける。
ドアの前にはズラッと軍隊的な方々が並んでいる。先頭に立つ、リーダー的な奴がこう言った。
「貴様か……トイレでタバコを吸ったのは……」
僕はこう返す。
「なんだよおまえは」
結果から言う。僕は逮捕されてしまった。罪名は[コンビニのトイレで、タバコを吸いましたね憲法]と、そのまんま過ぎるほど、そのまんまな名前の犯罪名だった。懲役25年だった。そんな犯罪知らなかった、じゃ、まかり通らないのが犯罪である。しかし、こればかりは「知らなかった」で通したいと思ったし、通るべきだとも思った。しかし、通らなかった。だから、僕はここに居るのだ。
刑期は、あと8年。
裁判や取り調べの雰囲気があまりにもバカらし過ぎたので弁護士と裁判官を殴り飛ばしてしまったおかげで刑期が3年伸びてしまった。まったくもって、変な人生である。しかし、これも悪くない。どんなにくだらない事だろうと、そこに価値がないと周りには思われようと、自分が作り出した「自由」の答えが「そこにある」と自分自信で思える事が大事なのだ。
白髪混じりけな僕は鉄格子の奥で自由に飛び回る小鳥達を眺めながらそんな事を思っていた。
「おいおい。またもや、タソガレモードかい」
同室のチャンクがエロ本を読みながら僕を茶化す。コイツは気さくで良い奴である。ただ、少し運がなかっただけだ。コイツはコンビニの店員をしていた。だから犯罪者になってしまった。[箸を入れ忘れましたね憲法]でここに入れられたのだ。
この話をしだすとチャンクは決まって「ハハハ。ちょっと運がなかっただけさ」と照れ臭そうな笑顔を見せるばかり。
「おまえってバカだよなー。こんな人生、タソガレてなきゃ、やってられっかい」
僕は鉄格子のカーテンを閉めた。それから、ベッドに横になった。涙が少しだけ溢れたが、溢れていない事にしながら深い眠りについた。
[―END―]