1詩
「この世で極楽の地と吟われる楽園、天国、桃源郷!ここはそれ以上に美しい!」
そう高らかに声をあげる初老、十勝真三。窪んだ瞳を輝かせるのは民から巻き上げた金で買った豪華な調度品。真三はこの土地で権力を奮い、あらゆる物を奪ってきた。民は常に腹を満たすことはできず、この地を出ることも許されない。道で餓死する者あれば、景観が悪くなるからと肥溜めに捨てられる。見かけだけ美しいこの地で、今宵起こる宴を彼はまだ知らないー。
「旦那様、御食事の支度が整いました」
そう伝えた青年もまだ若かった。真三は10代の子供を拐っては自分のコレクションとして身の回りの世話をさせていた。更に気に入った者には究極の世話を。拐われた子供は自分の保身のため、そして家族の平和のため全身全霊をもって彼に仕えねばならない。そうしなければ自分は殺され、家族にも危害が及ぼされる可能性もある。真三とは、そのような危険な男だった。
青年は顔を下に向けたまま腰を低く保つ。うつむくと睫毛が長さが余計際立っていた。
「見ない顔だな」
「旦那様には何十もの使いがおりますゆえ。知らない顔も多いかと」
「ふん。なんといってもこの土地一番の権力者だからな。それにしても....」
真三はそう口にし
ながら青年の顎を掴み、上に持ち上げた。
「なかなかに美しい顔をしているじゃないか。名前は?」
厭らしい顔をしながら青年の顔を舐めるように見る。
「シノと申します」
「シノか。下賤な名前ではあるが可愛がってあげよう。今夜私の部屋へおいで」
究極の世話に招かれた青年は
「はい、旦那様」
と、まるで作られたように美しい笑顔を見せた。
初めて恋愛物書きます。アドバイスもらえたら嬉しいです。