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潮騒 2


「大介、お前何をうたうんだ」


「そうだな、1曲目はサザンオールスターズの『TSUNAMI』だな。次は小田和正の『ラブストーリーは突然に』とMr.childrenの『抱きしめたい』、そしてスキマスイッチの『奏~かなで~』、スガシカオの『アシンメトリー』、斉藤和義の『歌うたいのバラッド』、こんなところかな」


「お前国産のバラードが好きなのか」


「ユキチ、知っているのか」


「ああ、常識的な歌は大体わかる。だけど、スガシカオはよく知らねえな」


「カッコいい歌を作るんだ」


「大介、お前の歌でそいつの良さがわかるのか」


「そんなことはわからねえよ」


「これから音楽をやっていくならちゃんと発声を習っておいた方がいい。何が起こるかわからねえだろ」


「ユキチ、曲がはじまったぞ」


「大介、先に言っとくが歌詞は気にするなよ」


「なんだよ、なんかあるのか」


「ちょっと過激な歌だからな。変な期待をされても迷惑なんだよ」


「なんなんだよ」


「いいから」と言葉を残して歌いはじめた。


〜あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ〜


大介は耳を疑った。こんな歌詞を二人っきりでうたわれたら誰だって錯覚するぜ。


ユキチはそんなことは御構い無しにミニスカートを翻しながらうたい続けた。


何もあんな言い方することないじゃないか。大介の頭の中はずーっとモヤモヤしていた。なぜこんな曲を俺の目の前でうたうのか。さっきの一言でその真意が理解できなくなっていた。なんなんだよ、こんな曲を聴かなければ心を乱したりしねえよ。ユキチの本心がどうしてもわからない。大介の心には手に届きそうで届かない恋のジレンマがシーソーのように揺れていた。さっきまでの自信がいとも簡単に崩れだした。やっぱり女心はわからない、そんな投げやりな気持ちでいっぱいだった。


「大介、冴えない顔しているな。終わったぜ」


「おっと、『TSUNAMI』はイントロがねえんだ」


そして大介はうたいながら画面の歌詞を見ずにユキチの表情ばかりが気になった。だけど、こちらの気持ちなど全く気づいていない様子で、曲目ばかりに想いを馳せている。なんかこの曲のように惨めだった。ユキチに何を求めていたのか、よくわからない。自分は彼女のことだけを本気で愛しているのか、それとも洋子の愛に応えたい、と考えているのか。その場の雰囲気によって移り変わっていく自分の心の変化がうとましかった。


一方、ユキチはこのときに賭けていた。大介が自分よりももっともっと大好きになってくれなくては困るのである。深層心理の奥底に潜む本能を揺さぶることが彼女の狙いである。きっと大介は私の心の変化がわからないのだろう。愛がどんなものなのか、ユキチにだってちゃんと理解できない。だが、大介に一目あった瞬間から心がザワついているのだ。これはきっと運命なのだ。


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