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潮騒 1


大介とユキチは駅まで着いたが、周りを探してみてもカラオケ店は見つからなかった。大介は仕方なく売店で尋ねてみた。


「あのビルの2階にあるって」


「気がつかなかったな」


「”オン・ステージ”ってあるぞ、きっとあれだな」


「なんかダサくねえか。”オン・ステージなんて聞いたことねえぞ」


「ユキチにピッタリだ。とにかく行こう」


二人は小さなエレベーターに乗り2階に着いた。一歩踏み出すと自動ドアが開きその右側に受付があり、カウンターに黄色いブレザー姿の若い女性が笑顔で迎えた。


「いらっしゃいませ、お二人様ですか。お一人様ワンドリンク付きで1時間で350円になります」


「ユキチ、1時間でいいか」


「いや、2時間がいい」


「もうすぐ5時だから家に帰ると7時を過ぎるぜ」と大介が念を押すと、


「構わねえよ」とぶっきらぼうな返事が返ってきた。


「じゃあ、2時間でお願いします」


「はい、ではこの端末を持ってAー2にお入りください」


「ユキチ、何飲む?」


「オレンジジュース」


「じゃあ、アイスコーヒーとオレンジジュースで」


「わかりました、すぐにお持ち致します」


「あの洋楽は揃っていますか」


「申し訳ありません。曲目はメニューに載っていますので、中でご覧下さい」


「わかった、ありがとう。ユキチ、こっちだ」


「あいよ」


大介はこのとき狭い部屋で男と女が二人きりになることにワクワクドキドキしていた。男だったら、まあ致し方ないことである。


そして、

「ディープ・パープルなんてあるかなぁ」


「そんなもんうたわねえよ」


「え!じゃあ、何をうたうんだ」


「後のお楽しみってよく言うだろ。あっ、ここだ」


二人は部屋に入るなりソファーに腰掛けて、曲目メニューを一心不乱にサーチした。


「ユキチ、どの辺りから攻めるんだ」


「掴みは山口百恵だな」


「山口百恵?誰だよそれ」


「知らねえのか、昭和のスーパーアイドルだ」


「え!アイドルはダメじゃないのか」


「昭和のアイドルは特別だ。大介はうたったことがないから良さがわからないのさ。他の奴らに言ったら殺すからな」


「はいはい、俺を殺したがる奴は多いな」


「それじゃあ、百恵の『ひと夏の経験』と松田聖子の『青い珊瑚礁』、それから竹内まりやの『駅』に石川ひとみの『まちぶせ』を挟んで、小泉今日子の『木枯らしに抱かれて』だ。まずはこれでいい」


「なんだよ、1曲も知らねえぞ」



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