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自惚れ 4


あくる日、桐原大介とユキチこと福沢夕子は人気者になっていた。


同じクラスのB組だけならいざ知らず、ユキチに至っては遥かI組の生徒までが押しかけるありさまなのである。


隣りの席の大介も代わる代わる女生徒に声をかけられてすっかりのぼせ上がっていた。その人の群れの中から大介も見覚えのある女の子が近づいてきた。


「こんにちは桐原君、少し話してもいいかしら」


「なんだ、ハーツのギタリストだったよね」


「うん、D組の清瀬恵って言うの、よろしくね」


「なんだよ、俺に惚れたのか」


「馬鹿野郎、お前がそんなにモテるわけないだろ。なあ恵さん」


「うん、そんなつもりはないわ」


「ほらみろ!」


「ユキチ、邪魔するなよ。こんな状況二度とないんだから」


「桐原君、ステージに立つのは何度目」


「昨日が初めてさ」


「へえ〜、それにしては決まってたわね」


「同じギタリストから言われると嬉しいな」


「こいつ最後の最後まで出来ねえって弱音を吐きまくっていたんだ。あやすのに骨が折れたぜ」


「でもギターソロが半分アドリブだったけど」


「間に合わなかったのさ」


「ユキチ、俺のことはどうでもいいだろ。お前は自分のファンの相手をしろよ。だけどボズに目をつけるなんてさすがだね」


「あれは私の元カレが好きだったのよ。たくさん聴かされたから」


「やはり男か。そうだよな今はあまり知られていないお祖父さんだからな」


「確かに年はとっているけど今でも素敵よ」


「ボズ本人に聞かせてやりたいな、きっと大喜びさ。俺があの年になったら踏みつけられて道端に捨てられているよ」


「そうそう、自分を知ることは一番重要だ」


「ユキチ、こっちはいいから口を挟むな」


「お前の周りに女が集まるといい気がしねえんだ」


「自分のファンの前でよくそんなことが言えるな」


「アイドルで売り出すわけじゃないからな」


するとユキチの周りがざわめいた。

「おいおい、あいつが彼氏なのか」と誰彼となく囁いて収集がつかなくなりかけたとき、


大介がすかさず、

「ちょっと待った、ハッキリ言っとくが俺はユキチの彼氏じゃない。いいかわかったらこれ以上騒ぐな。 さて清瀬さん、『Breakdown Dead Ahead』も良かったが、『ハリウッド』の方が女性には歌いやすかったんじゃねえか」


「でも、うちらのライブで定番の曲なんだ」


「ふーん、俺ならクリストファー・クロスの『Ride like the wind』がヴォーカルの声にあってるんじゃないかって気がしたんだ」


「クリストファー・クロス?」


「なんだ知らねえのか。外見は冴えないけど声は天下一品だ。後でYou Tubeで検索してみたらいい。デビュー当時は天使のようなハイトーンボイス、なんてキャッチがついたから本人も気にしたんだな、全く顔を出さなかったんだ。人間の心理なんてわからないものだよな。隠すと余計見たくなるじゃねえか。それで変なおじさんが出てきて、がっかりされたらたまらないよな」


「うんわかった、あとで見とくね。そうだ今度一緒に練習しない」


「おい、二人っきりはダメだからな。あたいも一緒に行く」


「ユキチ、いいところなのになんだよ」


「これがデッド・ピープルの掟なんだ」


「はいはい、なんか保護観察だ」


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