自惚れ 2
デッド•ピープルの演奏が終わった途端、会場全体の照明がつけられた。当然と言えば当然の処置で、主催側としてはギリギリまで我慢したのだろう。ブレーキの効かなくなった観客たちは、ステージ前に群がり足の踏み場もないほど入り乱れていた。
すぐにアナウンスが流れた。
「大変危険ですので20分間の休憩に入ります。みなさん散乱した椅子は邪魔にならないところまで移動するようにお願いします。怪我をなされた方はスタッフまでお声をお掛けください。落ち着きましたら再開致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願い致します」
ステージ裏に引っ込んだ大介がユキチを捕まえて言った。
「どうみたってやり過ぎだよ」
「なんだよ、何がやり過ぎなんだ」
「危険じゃないか、怪我人が出たらどうするんだ」
「あれがあたいたちのパフォーマンスだ」
「ノルことと暴走では意味が違う。ショーをする者は観客の安全を一番に考えなければいけないんだ。それを煽ってどうするんだよ。ユキチ、お前のいけないところは、糸の切れた凧がどういう結果になるかわかっていて、それを敢えて実行することだ」
「仕方ねえよ、あれがあたいたちの表現方法なんだから。大介の彼女には悪かったさ、後ろから押されたらひとたまりもねえからな」
「俺が問題にしているのはそんなことじゃない。音楽家としての規律だ。コンサートに来る連中は日頃のうっぷんを晴らしがしたくてしょうがねえんだ。だからある程度コントロールするのは当然だ。だけど、煽動をしてはだめだ。行き場の無くなった群衆は暴れだしたら最後、地獄に落ちるしかないからだ」
「だけど、あれがデッド•ピープルの持ち味だ」
「実、もういいよ。確かにあたいは軽率だった。久しぶりだったから、つい調子に乗っちまった。学校にはあたいが謝っとくさ」
「わかればいいんだ。だけど驚いた。自分の演奏であれだけ人が暴れるんだからな。やめるにやめられないし、ガールフレンドはピンチだし、できることと言えばハラハラ見届けるしかない」
「大介、俺はスティックを持つ手が震えたぜ。こんなステージはプロでもなかなか出来やしない。確かに危ないことはよくわかるが、俺たちはたった一ヶ月でこれだけのパフォーマンスができたんだ。きっと最高のバンドになる」
「謙二、熱があるのか?ほっぺたが赤いぜ」
「はぐらかすなよ」
「私にも言わせて、物凄く気持ちよかった。あれだけみんなが燃えたんだから、うちらの演奏も”バーン”だったのよ」
「ユカ、ありがとう。みんなこれに懲りずによろしく頼む」とユキチが深々と頭を下げた。




