戸惑い 2
それから10分ぐらいが経ったろうか、大介が調整しているとスタジオの扉が開き、残りのメンバー4人が一斉に入ってきた。
さっそくヴォーカルのユキチ以外は各自別れて楽器のセッティングを始めた。
「大介早いな、甘心甘心。ギターソロがダメなんだってな、今実から聞いたよ。今回間に合わなくても気にすることなんてないぜ。みっともない姿を晒す方がよっぽど問題だ、今後のこともあるからな」
「気をつかわせて悪いなユキチ」
「小さな問題だ、どうってことないぜ。おっと、あたいも歌のスタンバイに入らねえと」
大介が、
「なんだよ、準備体操でもはじめるのか」
「当然さ、しばらくうたってなかったからな。発声練習や腹式呼吸のやり方も忘れちまったぜ」
「マジかよ」
「大介、歌をうたうってのはハードなんだぜ。ライヴだとみんな20曲ぐらい平気でうたうだろ。もし肺で呼吸していたら声帯なんてすぐ痛めちまう。だから下っ腹にいっぱい空気を詰め込んで、口を大きく開けて響かせるのさ。ツアーだったら連日過酷な日程も考えられる。アーティストたちはみんなトレーナーについて躰を鍛えるんだ」
「おったまげた、アイドル歌手なんかもそうなのか」
「わからねえのか、苦労を顔に出さないのがプロだ。あたいもライヴをやる2週間ぐらい前から毎日2キロは走るぜ」
「本当かよ」
「それに大介、一期一会も大切なんだ。あたいたちのライヴに来てくれる人はその日だけのことかもしれないだろ。やっぱり喜んで帰ってほしいじゃねえか。そのためにはどんな苦労も惜しんじゃいけないんだ」
「そうか、じゃあ毎回100%のパフォーマンスが出せるようにコンディションを作りも重要なわけだ」
「そうだ大介、あたいたちは観客を喜ばせてなんぼなんだよ。そして躰を壊さないように細心の注意も忘れちゃいけないんだ」
「よくわかったよユキチ。そこまで考えているとは思わなかったぜ」
そこへキーボードのセッティングを終えた実が二人に近寄ってきて、
「おーいユキチ、そろそろ音合わせをやろうぜ」
「おーわかった。ユカもうOKなのか」
「あいよ、準備万端」
「 おーいいねえ、謙二はどうだ」
「あと少し」
「よし、大介は?」
「後はみんなと音量を合わせるだけだ」
「なんだよ、準備不足はあたいだけか。まあいい、じゃあとりあえずワンコーラス通してやってみようか。ジョン、キーボードでギターリフの応援をしてやってくれ」
「OK」
「よしみんなはじめるぞ」




