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戸惑い 1


大介は早めの朝食を済まし、フェンダーストラトキャスターを専用のバックに押し込んでから背中に担ぐと、正午過ぎに家を出た。


ユキチが予約を入れたスタジオまでは、順調にいけばバスに乗って20分ぐらいの道程だった。


大介が早く家を出たのには理由があった。それはこれまで1人でギターを練習してきたので、まず他のメンバーとコミュニケーションを取る必要があり、事前にセッティングを済ませておきたかったことと、先乗りしてすこしでも緊張感を和らげる必要があったためである。


大介はiPhoneに落としたDEEP PUPLEの『BURN』を繰り返し聴き込んで、リッチーのプレイをすこしでも把握する努力はしてきた。だが、まだまだギタリストとして経験が浅く、正確なピッチやリズムも自分のものにすることができない。さらにミュージシャンとしてのアイデンティティーも確立されていないのはどうすることもできない事実であった。


だが、今の大介にはそこまで考える余裕がなかった。ただ毎日譜面を追い、限りなく指を動かした。


ユキチに教えられたバス停で降りると、そのまま坂をのぼって三つ叉の交差点に出た。そこから道なりに商店街を歩き、左側にある3つ目の茶色のビルの地下が目的のスタジオだった。自動ドアが開いて2、3歩入ると長髪で鼻ピアスをつけた明らかにそれらしい店員が声をかけてきた。


「いらっしゃいませ」


「あの、DEAD PEOPLEで予約が入っていると思うのですが」


「あー、ユキチさんのグループですね。確かに13時から3時間の予約を頂いております。第2スタジオは空いていますので、どうぞ中に入って準備をなさってください」


「あの僕が一番乗りですか」


「はい、まだ他には誰もいらしておりませんが」


「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて中に入らせてもらいます」と告げて大介は重い扉を開けてスタジオの中に入った。


すると中には鮮やかなレッドのドラムセットが左側にセットされ、その右側にはアンプ群が一列に並べられていた。大介はギターアンプがどれなのかまず確かめ、一番右側のアンプと確認してから、ケースからギターを取り出しスタンドに立てかけてから、シールドをそれぞれ差し込んでエフェクターのファズを取り付けた。


いよいよギターを抱え、左手でGmのコードを抑えて、右手のピックを力強く弦に向かって振り落としてみた。


「ジャ〜ン」


とんでもない音の嵐がスタジオ中に響き渡った。大介はアンプの音量レベルを下げるとともにギターのボリュームも調整してまた弾いてみた。


「こんなものかな。後は他の楽器と合わせるしか手がねーな。でもこの音量は刺激的だ」とすぐにハートに火がついた。


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