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元カノの結婚式 2

「体は大丈夫なの?」

「うん……今日お医者さんに行ったら、3月の終わり、11週目って言われた」

もう少しで安定期に入る、良かった…でも、普通はこんなこと心配しないでいいんだろうなと小百合は思った。

「で、桜木さんには言ったの?」

「……言ってない……」

小百合の質問に圭子はぼそっと小さな声で答えた。

「私、あれから連絡取ってないの。メアドも変えて弘毅からの着信も拒否って……」

そして、何時にない圭子の消極的な態度に驚いて言った。

「どうして! おケイちゃん、桜木さんのこと好きなんでしょ!?」

「好きだからよ! あいつに抱かれてもっと好きになっちゃったからよ! だから……捨てられたくない。ずっとあいつと一緒にいたい。でも、今更そんな私を見せたら、あいつウザがって嫌われるんじゃないかとか、そんなことばっか考えちゃうのよ」

だからって、自分から切ってどうしようというの? 

でも、あの時と同じね、小百合は深いため息をついてこう言った。

「おケイちゃん、私が洋介さんのプロポーズで悩んでたときおケイちゃん言ってくれたわよね。『あんたが今会わなきゃならないのは私じゃなくて彼だ。』って。同じじゃない……おケイちゃんが一番最初に言わなきゃならないのは私じゃなくて桜木さんよ」

「あいつはきっと子供なんて要らないって言うわ」

圭子の声は震えていた。

「そんなことないって。桜木さん、おケイちゃんのことずっと好きだって言ってくれたんでしょ。そうじゃなくても、桜木さんはおケイちゃんのことだけ見てるって私知ってるわよ」

「ウソよ!」

「ウソじゃないって、子どものこと言ったら、彼きっと大喜びするはずよ。おケイちゃん、産みたいんでしょ」

産みたくなければ、私になんか相談しないでしょ…?

「……うん……」

「産みたいんだったら、それをはっきり桜木さんに言わなきゃ。でも彼がもし子どもは要らないなんて言ったら……」

「言ったら?」

「――私が彼を殴ってあげるわ。」

もし彼が子供は要らないと言うようなら、その子どもを私たち夫婦にちょうだい――小百合は本当はそう言いたかった。折角生まれてくる命を不幸にするようなことだけは絶対にして欲しくない。私たちなら絶対にその子を幸せにできるはずだから…と。


「サユ……ありがとう……私…弘毅に言う……」

「大……丈夫だよ……絶対、大丈夫だから……」

泣きながらやっと決心した圭子の言葉に、小百合は一緒に泣いていた。弘毅はきっと大喜びでその報告を受け止めるだろう。友達の幸せは本当に嬉しかったが、私にはもうそんな報告はできない…それが悲しかった。

「なんでサユまで泣いてんのよ」

不思議そうに尋ねる圭子に、

「なんで……だろうね……」

彼女はとぼけて見せるしかなかった。

「サユってホントに優しいよね。ありがとう……」

優しくはないわ……全然。感激している圭子に小百合は心の中でそうつぶやいた。


翌日圭子から小百合にメールが届いた。

-昨日はありがとう。あの後、すぐに弘毅呼び出してちゃんと話した。

サユの言った通りだった。あいつめちゃくちゃ喜んで『俺にその子一緒に育てさせろ』ってプロポーズしてくれた。それに、あの弘毅がよ、泣いたんだから!(本人は激しく否定してたけどね)。ビックリしちゃった。

ホントにありがとう。とりあえずいろいろあるから、しばらくしたら2人でお礼に行くわ。

PS

先越しちゃったけど、サユもすぐに追いついて来てね。二人でママトーク炸裂させようよ。-


その夜、仕事から帰った洋介に小百合は彼らのことを報告した。努めて明るく報告したつもりだったが、圭子の妊娠のことを告げるときは少し涙がにじんだ。

「小百合大丈夫か?」

「ええ…お友達のおめでただもの、うれし涙よ」

洋介にはそうじゃないと判ってしまっているのだろうが、小百合が敢えてそう言ったのは自分でもそう思い込もうとしていたからなのかもしれない。




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