いざ、生きめやも……
それから5年後のある日のこと……
「だから弘毅、それはやっぱおかしいって!」
「いや、俺はこれだけは絶対に譲れねぇ!」
桜木家のリビングで、弘毅と圭子がいつものように夫婦喧嘩をしている。中々折れない今日の弘毅に、圭子は思わずソファーに座っていた小百合に助けを求めた。
「新郎の父親が新婦の介添えでバージンロード歩くなんてあり得ないよね、サユ」
弘毅は周人と乃笑留の結婚式で、乃笑留の介添えをやるといって聞かなかった。
「そうだ、充君に新郎の父親席に座ってもらって……」
弘毅は手をポンと叩いてそう言った。
「新婦の叔父さんが何で新郎側に座らなきゃならないの! それならまだ空席の方がマシ!」
「じゃぁ、空席でいいじゃん」
空席で良いといった圭子に、弘毅はにやりと笑ってそう答えた。圭子はしまった! という顔をした。どうやらこれは圭子の負けのようだ。
「もう……なんとかならない?」
呆れ顔で圭子は小百合になお助けを求めたが、小百合はただ笑って聞いているだけだった。
まったく、強引なんだから……圭子はこれまでのことに思いを馳せていた。
洋介さんとサユを運命付けたあのとき飲み会、あの時あいつに、
『俺の方は5人揃えたからな、絶対そっちも5人揃えろよ』と言われなければ、残る一人に飲めない小百合を誘うことはなかったに違いない。そして彼らは出会い結婚した。
私たちが初めて結ばれたときもあいつは強引だった。本当に大好きだったから、適当に遊ばれてしまうのが怖くて友達のスタンスを崩せなかった私には、それくらいでなきゃダメだったんだと今は思うけど……
そして周人を身ごもって……それがサユにどうしても子供を産みたいという気持ちを起こさせて乃笑留ちゃんが生まれた。
洋介さんがあんなに突然亡くなっても、乃笑留ちゃんがいるからサユは耐えられた。
友達同士というよりも家族のように生きてきた私たちの関係。これから、私たちは周人と乃笑留ちゃんを中心に本当の家族になるのね。
何か不思議。1つ1つのことが結局は全部つながっている、そんな気がする。新しく起こる様々な事柄も、時が経てばそれもつながっていくんだとそう思える。
――ちはやぶる神の御前に立てるかな 愛しき人といざ生きめやも――
どんなことがあっても……みんなで一緒に乗り越えられたらそれで良い。
――Fin――
神山でございます。本編が終了です。
次回、弘毅目線の番外編です。そうです、あの一件です……
なので、もう少しおつきあいください。