出会い
木村洋介と遠藤小百合は友達の紹介で知り合った。正確に言えば、合コンめいた飲み会の数合わせにされて呼び出されただけだった。
お互い盛り上がりに乗り切れずその輪から外れ取り残された2人は、なんとなく他愛ない話を2人で始めていた。
最初の店がお開きとなった時、洋介は次に行こうとしていた。しかし、
「よ~すけちゃ~ん、お前今日はお帰りなさ~い、この子もう帰るんだってよ。送ってやれよ~。」
彼を誘った大学時代の友人、桜木弘毅がそう言って、小百合の前に洋介を引っ張って行ったのだった。
「お前、酔っ払いすぎだぞ」
「オレ? 全然酔ってないよ」
桜木はその場で直立不動のポーズをとって見せた。こういうポーズ取ろうとする時点で酔っているんだと洋介は思った。そこに、女性側のリーダーらしい本山圭子がやってきて、
「あ、私からもお願い、送ってってあげてよ。じゃぁねサユ、私たち行くから。また連絡するね。ほら、弘毅行くわよ…」
と、言いながら弘毅の背中を押して他のメンバーと共に夜の街に消えて行った。
取り残された洋介と小百合は、しばらくだまったまま立っていた。
「すいません、私のせいで……」
小百合がやっと口を開いた。
「いや、お礼を言うのは俺の方だよ。内心ホッとしてるんだ。男が最初の店で帰るなんて言ったら、座がしらけるかなと思って言い出せなかっただけだから」
「ホントに? なら、良かった」
そして、小百合は洋介の返事にホッとした表情で笑った。洋介は、なんとかわいいんだろうと思った。
それはまさに、一目ぼれと言って良かった。
「これ、俺のメアドなんだけど、良かったら君のも教えてもらえるかな」
洋介は別れ際、自分のメールアドレスを紙に書いて彼女に渡した。それは、晩生の洋介にとって、自分でも信じられない行動だった。
「えっ?」
小百合は驚きながらもその紙を受け取った。彼女はしばらくじっとアドレスを見つめた後、にっこりと笑って、
「じゃぁ、私から、ここにメールを送ります。じゃぁ、失礼します」
と言って会釈した。
「おやすみ。」
洋介は、それに手を挙げて応えて歩き出した。
数分後…小百合からメールが届いた。
――テスト
今日は木村さんがいてくれて、本当に楽しかったです。
本当は(入力)あまり得意じゃなかったので、私のアドレスを書いて送っていただこうかとも思ったんですが、頑張って送ってみました。
どうかちゃんと木村さんに届きますように
遠藤小百合――
洋介はあわてて小百合のメールアドレスを登録し、メールに保護まで施した。
神山でございます。
一話とは真逆のお花が飛ぶような出会いです。このカップルが何故あんなバトルを繰り広げる夫婦になったのか……(ため息)
もう少しお花畑におつきあいくださいませ。