表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/33

第1章・6話 生徒会長の過去

すいません、今回は短いです。

2回目のトラップを食らった俺たちはその後、

これ以上面倒なことになる前に、そそくさと寮を離れ、

寮から少し離れた所にある昼間も寄った生徒用食堂に向かった。


「よう、お前らも食堂か?」


ナナとハルのコンビを見つけたので声をかけといた。


「はい。まだ自炊する材料もありませんから。」

「あの、校長絶対潰す!」


どうやら、俺たちと同じ目にあったらしい。

ナナが俺とおんなじ決意をしていたが、ハルはその隣で俺やナナとは

比べ物にならないくらいの殺気を静かな笑顔で出していた。


「とりあえず、飯を食おうぜ。」


空気の読めない馬鹿ラウが催促しなかったらどうなっていたことやら

考えるだけで恐ろしい。今回だけはラウに感謝だ。


「何食うかな~。」


「あら、あなた達、またここで食べるの?」


俺がメニューを眺めながら、ここの食堂届けてくれるのはいいんだけど片付け

はセルフサービスなんだよな~、とか考えている時に偶然近くを通りかかった

らしい会長さんが声をかけてきた。


「ああ、俺たちは全員、まだ自炊できるような材料を持っていないからな。」


な~るほど、と頷いた会長さんは次に


「私も混ぜてもらっていいかしら?」


と聞いてきたので、もちろん、と答え、座らせた。


「どう?初めての寮は大変だった?」


全員、思い思いの料理を頼みながら雑談を始めた。


「何で知ってんだ?」

「それは、ほら、あれを見れば。」


そう言ってハルを指差す会長さん。

その方向を見てみると、なんかやヴぁいモードのハルがいた。


「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ・・・・・

校長つぶす校長つぶす校長つぶす校長つぶす校長つぶす校長つぶす

校長つぶす校長つぶす校長つぶす校長つぶす校長つぶす校長つぶす

校長殺す。絶対に絶対に・・・・・・・・」


普段が普段なだけにそのギャップの激しさに驚いた。

まさか、ハルが危ないタイプの人だったとは。

きっと、普段の性格を変えるぐらいひどいことをされたに違いない

うん、きっとそうだ。てか、そう信じたい。


「み、見なかったことにしよう。うん。絶対それがいい。」

「ね、あれだけ校長を呪ってれば何があったかは想像できるでしょう。

私が入学した時も同じようなことになってる子がいたもの。」


会長の入学した時にも同じような人がいたとはな。

恐るべし校長。それだけのろわれていながらもなお、生きながらえるとは。

もしかして校長って強かったりするのだろうか?


「ところで会長さん、あんた、

生徒会長の仕事と魔法研究部の部長を兼任してて大丈夫なのか?」

「心配してくれるのね、うれしいわ♪」

「おいおい、俺は結構まじめに聞いてんだがな。」

「ええ、大丈夫よ。去年からやってるし。

それに魔法研究部の方は、殆ど趣味でやってるし。」

「そうか?俺には部活紹介のときに言ってた、

諸事情でってところが気になったんだけどな。」


そう言って意味深な視線を会長さんに送る。


「あなたには隠せないわね~。」

「いいからさっさと話してくれ。言い辛いならかまわんがな。」


やれやれ、という調子で会長さんが話し始める。


「昔ね、私が生徒会長になる前、とっても仲の良い先輩たちがいたの。

自分で言うのもちょっとあれだけど、私、完璧すぎるって言われててね。

同学年の友達と呼べる存在が殆どいなかったの。」


自嘲気味に笑う会長さんには少しばかりの哀愁が漂っていた。


「でもね、そんな私にも、優しく声をかけてくれた先輩たちがいたわ。

その先輩たち誘われて私は魔法研究部に入ったの。

そこでの毎日は楽しかったわ~。」


どこか遠い目をする会長さん。


「毎日毎日、欠かさずに通っていたの。でも・・・」


声のトーンを少しさげて言う。


「でも、先輩たちの卒業式が近づいた頃にね、テロ組織による襲撃が

各地で起こっていたの。そして、ついに起きてしまったの。」


何が、とは聞かない。まだ続けているから。


「私たちの学園で、それも魔法研究部からの侵入で。

私はそれを聞いた時、気絶するかと思ったわ。そして、

テロ組織の襲撃により、学園じゅう大パニックだったわ。

私はそんななかで必死に先輩たちの姿を探した。

でも、私が魔法研究部の部室にたどり着いた時、すでに遅かったの。」


苦虫を噛み潰したかのような表情で拳を握り締める会長さん。

それでもまだ続ける。


「すでに先輩たちは息を引き取っていたわ。

でも一つだけ許せないことがあったの。それはね、せめて

綺麗に殺してあげて欲しかったの。でも、でもあいつらはっ!

もう死んでいる先輩たちをゴミのように扱い、

クズと言い、死体を蹴飛ばし、先輩たちを蔑んだ!

それを聞いた時私の中で何かが切れた。私が切れて、テロ組織のうちの

1人を殺そうとした時、やつらは仲間が殺されそうになったにも関わらず、

平然と言い放った。{クズをクズといって何が悪い。あたり前だろう。}と。」


最後はようやく聞き取れるような声で話す会長さん。

その表情からはどれほど辛かったのかが伺える。


「その頃の私はまだまだ未熟で、やつらに何も出来なかった。

それで、せめて先輩たちとの思い出の場所である魔法研究部を

残す為に、それにすがる為に私は部長をやっているのよ。」


言い切って、疲れたようにイスに深く腰掛ける。

辺りはさっき会長さんが大きな声を出したので静まり返っている。


「情けないでしょう。」

「ああ、情けねえな。」


言われて驚く会長さん、無理もない。

普通はここで励ましの言葉をかけるべきなのだ。

だが俺はあえて逆の行動を取った。


「先輩たちにすがる為?笑わせんな!お前がどんなつらい気持ちだったかは

分からない。分からないけど、いつまでも死んでいった先輩たちを頼り続けるな。

それだけは言える。いつまでもそんなことにすがり続け、こだわり続けている限り

お前は本当の意味で変われない。変わろうとしてないんだ!だから今も無理をし

ている。自分の気持ちを偽り、周りも欺く。そんなことをしている限り、誰も

お前に振り向いてくれない。・・たまには肩の荷を降ろせ。

時には誰かに頼るのも必要なことだぞ。それからゆっくり考えてみろ。

今の自分に出来ることと、するべき事。それが出来ないんなら、もう手遅れだ。」


一気にまくし立てた。

終わりは最初ほどの怒気を込めず、優しく言う


「あ、あ、うあああぁぁぁ!!あ!あぁぁ!」


今まで我慢してきたものが溢れてきたのか声を上げて泣きじゃくる会長さん。


そんな会長さんにせめて泣かせてやるとこぐらい、と思い、

泣きじゃくる会長さんを抱きとめる。


抵抗することなく俺に抱きとめられながら、

しばらくしてようやく落ち着いてきたようだ。


「あ、ありがとう、な、情けないところ見せちゃったね・・・」


まだしゃっくりがやまず、途切れ途切れにも言葉をつむぐ。


「気にするな。俺はただ単に思ったことを言っただけだ。

困っている人がいたんだ、ほんの少し手を差し伸べる、当たり前だよ。」


「本当にありがとう。」


今まで見せていた偽りの笑顔ではなく、本物の、心からの笑顔を見てほっとする。

どうやら、己にかけた呪縛は解けたようだ。


「そろそろ、帰るね。それじゃ。」


会長さんが帰ってからも少しの間、心地よい静寂が続いた。

しかしここにはその静寂を破るものがいた。


「おいおいおい、手が早いな~コウジは。

入学早々、生徒会長を狙うとは。」

「「なんでそうなるんだ(のよ)。いい加減空気読め、馬鹿が!!」」


この空気をぶち壊す発言をしたラウに


ラッシュ~打ち上げ~空中コンボ~叩きつけ~全体重のせ膝蹴り~finish!!


のフルコースを俺とナナでぶちかましてやった。

その後しんみりした空気も嫌だったので、俺たち4人は生徒用食堂を後にした。





またやっちまったな。この世界に来て二回目だ。


(やっぱり俺ってお人よしなのかな~?)


そんなことを考えながら、

それなりに豪華な設備のある部屋のベッドで眠りについた。







~レミネ・クレイ・ヴァイト side start~



私はどうしてしまったのだろう。

何故、まだあって間もない男にあれほどの羞恥をさらしてしまったのだろうか。

少し考えれば分かることだった。


「ああ、そうか。」


少なからず、あの男の在り方に惹かれてしまったのかも知ない。

さも当然のように、当たり前だと言わんばかりに手を差し伸べ、

こんな私のことを救ってくれた彼に。


そう思いながら、久しぶりに心地よい、深い眠りについた。



~レミネ・クレイ・ヴァイト side finish~




久しぶりのシリアス(?)はいかがでしたか?         


近々コウジが暴れそうです。                 


意見、感想がありましたらお送り下さい。

遅れるかもしれませんが必ず返信させていただきます。                           


ではまた次回お会いしましょう。


追記

この作品のアンケートを作りました。URLはhttp://enq-maker.com/1WJVRIbです。ご協力お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ