第1章・3話 魔法研究部
本来作者の苦手分野である恋愛要素が少しだけ出てきたかもです。
では、どうぞ。
部屋から出てきたのは・・・・・・なんと、会長さんだった。
しばらく驚いた顔をしていたが直ぐに立ち直り聞いてきた。
「え~っと、あなた達は?」
「魔法研究部の見学に来ましたっ!」
会長が尋ねた瞬間にラウが間髪いれずに答える。
その反応の速さに若干ひいていたが、すぐに笑顔で対応してくれた。
「じゃ、じゃあ中に入って、部活動の紹介をするわ。」
そう言って中に入れてくれた。
中は20畳程ありかなりの広さだった。
本棚にはたくさんの本と資料が収められていた。
机の上には生活感あふれる光景が広がっていた。
具体的には空の弁当や紙コップ、大量のゴミにノートや本、
極めつけは用途不明の毒々しい色をした液体入りのフラスコが多数。
なかなかすごい部屋だ。
「ああ~、気にしないでね、直ぐ片付けるから。そこら辺の
イスに座って待ってて。」
言って会長さんは大急ぎで部屋の片づけを始めた。
と言っても、部屋の奥の開いているスペースへ押し込んだだけだが。
「はあ、はあ、さっそく部活の紹介でもしましょうか・・・疲れた。」
「取り合えず落ち着けよ。そんなに急いで片付ければ疲れるのは当たり前だ。」
今にも倒れそうだったので肩を貸してイスを引いて座らせる。
「あ、ありがとう・・」
会長さんは意外と背が高い為、俺と目線の位置があまり変わらない。
そのため顔の位置が近く、その金色の瞳を見つめるような形になってしまった。
だが、そんなことは気にしない俺はそのまま会長さんを下ろした。
「もう少し反応があってもいいような気がするんだけどな。
女の子としては何か複雑ね。」
小さく呟く会長さん。
聞かなかったことにして取り合えず質問をしようとする。
「ずるいぞコウジ。」
「うっさい黙ってろ。」
ラウがなんか言ってきたので、取り合えず黙らせてから質問した。
「ここの部長は?」
「私よ、そういえば自己紹介がまだだったわね。
生徒会長兼魔法研究部部長のレミネ・クレイ・ヴァイトよ。」
やたら長い自己紹介だこと。言い辛そうだな。
「なんだか入学式の時のスピーチしていた時とは雰囲気が違うな。」
「大勢の前で話すと緊張してあんな喋り方になっちゃうのよ。
それにしてもあなた、先輩に対してもタメ口なのね。」
「ああ、俺は敬語っつうのが苦手でな。先生に対してもこんな感じだ。」
「そうなの。」
「あのぉ、お二人さん、お話中悪いんですが、部活の紹介を。」
とりあえずラウが代表してたずねる。
「そうだったわね。ここ、魔法研究部ではそのまんま魔法の研究をしているわ。
それ以外にも魔法の訓練や授業の補修なんかもしているわ。
比較的、新入生にはお勧めよ。分からないことがあっても先輩に聞けるし。」
「いいですねっ!」
「鼻息を荒くしながら言うな、あと気持ち悪い視線で会長さんを見るな、
失礼だと思うぞ。」
「会長があまりにも美人さんだったのでつい、
それに君に失礼とは言われたかないね、敬語すら使って無いじゃん。」
「俺のは気にするな、もう手遅れだ。」
「自分のは棚に上げんのかよ。」
「はいはい、そこまで、今言い合いなんてしないで欲しいんだけどな?」
少々けんか腰になってきたところで会長さんから静止が入る。
「「は~い。」」
面倒なことになる前に素直に従っとく。
「よし、で、結局あなた達はどうするのここに決める?
一応今は諸事情により部員は私だけよ。」
「俺はここでもいいがお前たちはどうする?」
「コウ様がいいのならわたしもここで。」
「俺はもちろんここにきまってるじゃないか。」
「私もここでいいわよ。なんかほかにいいとこなさそうだし。」
「じゃあ、ここにサインしてね。」
4人分の紙とペンが渡される。セリフが何か怪しい気もするが、
俺たちはそれにサインして会長さんに渡す。
「ありがとね~♪、いや~部員が足りなくて困ってたんだ、ほんと。」
「なんか一気に軽くなったな。」
「部員確保できるまで相手を不快にさせちゃ駄目だと思ったからね。」
「そんなこと気になさらなくてもよかったのに。」
ラウが言う。
「「すいませんこんな馬鹿で(気持ち悪くて)。」」
今まであまり喋っていなかったナナとハルが2人して結構ひどいことを言う。
それに慣れかけてきているのかラウは最初程ダメージを受けていないようだ。
それでもかなり傷ついているようだったが。
「きみたち面白いわねぇ、部活に来てくれてよかったわ。
これからとっても楽しそう。暇じゃなくてよさそうだわ。」
嬉しそうにクスクス笑う会長さん。
その姿は実年齢よりもずっと幼い少女のようだった。
しかし、そこには注意深く見なければ分からないが、
そこはかとない悲しみと・・恐怖?が見え隠れしていた。
「あなた達は武芸大会について何か知ってるかしら?」
「いや開催されるぐらいしか知らない。」
「私たち魔法研究部はその武芸大会の中の部活動対抗戦に出るんだけど
毎年けが人が続出してるのよね~、それでえっと・・」
自己紹介をしていないことを思い出して4人とも自己紹介をする。
「コウジ キサラギだ。」
「ハルピュア・テミストス・ガーラントです。
ハルとお呼び下さい。」
「私はナナ・エリス・エンプティーです。」
「ラウ・ロード・リベオンです。キラン☆」
ラウが無駄に歯を輝かせてアピールしたが
馬鹿に付き合ってもしょうがないと思い、会長さんも含む全員でスルーした。
というかどうやって歯を光らせたんだ?
「またスルーか。俺は、俺はどうすればいいんだ~!!」
1人で騒いでるラウは放って置いて話を進める。
「ええ分かったわ。それでね、
今年は君たちに出場してもらうんだけど、大丈夫かしら?」
心配してるっぽかったので、俺たち全員の魔力測定のデータを渡した。
これを見れば少しは分かるだろう。
「な、何これ、とんでもないわね。
もしかしてレイト先生を倒しっちゃったのってあなた?」
「そうだ。」
「そこのお馬鹿さん以外はかなりやり手のようね。特にコウジくんは。」
「俺も会長からの愛があればいくらでも強くなれますっ!」
感動的なセリフだがそれは寒いだけだ。
「じゃあ、一度だけ好きって言ってあげるから、死んでくれるかな?」
笑顔で言う先輩の目は笑っていなかった。
それを見たラウは・・
「す、すいませんでしたぁ~!調子乗ってました!」
土下座の姿勢でびびりまくっていた。情け無い。
「ふふふ、最初からそうしていればよかったのに。」
怪しく目を光らせながら言う会長さん。
「俺には会長さんがよく分からなくなってきた。」
「よく言われるわ、それ。
そんなことよりもそろそろお昼だからみんなで食べに行かない?」
「べつに構わん。」
「はいっ、行かせていただきます。」
「行きましょう。さっきからお腹がなってて。」
「構いません。」
もう昼飯の時間になっていたので生徒用の食堂へと向かう。
教室からそれほど離れたところにあるわけではないので直ぐに着いた。
そこで俺とラウがカレーみたいなのを、ハルとナナがサンドイッチみたいなのを、
会長さんはサラダとハンバーグみたいなのを頼んだ。
この世界に来てから間もないのでちゃんとした料理名が分からないので
それっぽい物を頼んだ。
それにしてもこの世界のあるものは俺のもといた世界のそれとほとんど変わらない。
特にこの学園なんて、現代の日本に建てても通用しそうだ。
「会長さんは生徒会でどんなことしてるんだ?」
「う~ん、主に学生間でのトラブルの解決と時々来る雑務なんかよ。」
「そんな大変でもなさそうだな。」
「あら、そんなことは無いわよ。
なんなら生徒会に来てみない?歓迎するわよ。」
「いや、遠慮しとく、めんどくさそうだ。」
「残念。」
心底残念そうにうな垂れる会長さん。
俺を引き込もうとする人はなんだか断られた後の顔が同じ様な気がする。
「お待たせしました。」
学食の癖に頼んだ料理を届けてくれた。値段の割りには味もうまいし、
サービスもいい、この食堂はかなり人気がありそうだ。
「俺らはいつ頃部活に参加すればいいんだ?」
運ばれてきた料理を食いながら質問してみた。
「それなら私が会長としての権力を使って連絡するわ♪」
それってありなのか?
「ずいぶん軽いんすね。」
「何か言ったかしら♪」
「いえ、滅相もございません。」
「そう。」
「うわぁ、ハル、あれがへタレの鏡よ。絶対に気にしたら駄目よ。」
「はい、なるべく関わらない様にします。」
「俺を見捨てないでくれぇ。コウジは!コウジは見捨てないよな!?」
助けを求められたので目が合わないように目をそらす。
「頼むよぉ、そこで目をそらさないでくれぇ。」
情けない声でわめくラウに例のごとくナナとコンビネーションアタックを
繰り出し黙らせといた。
今回は俺らが悪かった気がしないでもないがそこはスルー。
「結構えげつない事するのねあなた達。」
「これが一番楽だからな。」
「馬鹿を黙らせるには効果的な方法なんです。直ぐに復活しますが。」
絶望していたせいもあってか珍しくなかなか起き上がってこないラウを
放置し俺らは食べ終わった。
食器を片すべく会長さんたちが立ち上がった。
「いいよ、食器は置いといてくれ、俺が運ぶから。」
「あら、優しいのね。」
「人のために怒れるような方ですから。」
茶化す会長とどこか嬉しそうに話すハル。
「じゃあ、宜しく頼もうかしら。」
「ああ。」
言って会長さんから受け取ろうとした時、ハルが水をこぼしてしまい、
そのせいで会長さんが滑って俺の方に飛んできた。
って、よくこぼれただけの水で滑れるな。
「おわっ!」
「きゃあっ!」
会長さんはそのままの勢いで俺に突っ込み、
覆いかぶさるような格好になってしまった。
流石にこのままではまずいのでとりあえずどいて貰うことにした。
「すまないが、どいてくれないか?重くて。」
「むっ、そこまで反応がないとなんか負けたような気がするわっ。
それに、女の子に向かって重いとは失礼な。」
むぅ~、と唸る会長さん。
「なんとなく言っただけだ、気にするな、実際は重くなかったから。」
「ならいいんだけど、なんか複雑ね。」
「すっ、すいません、お二人とも大丈夫でしたか?」
責任を感じているのかハルがたずねる。
「気にするな、俺はなんともないから。」
「私も、コウジくんが下敷きになってくれたから無傷よ。」
「そうですか、よかった。」
「じゃあそろそろ片して教室に戻るとしますかね。」
「そうしましょう。」
「ええ。」
改めて食器を片付けて食堂を後にした。
「何か忘れてない?」
ナナが聞いてきた。
「そういえば、? 何だろうな。」
「トイレで行き忘れたんじゃないの?」
「そんなことないですよ。」
ふざけた答えと、それに対してまじめに答えるハル。
「気にしてもしょうがない、さっさと行こうか。」
本当になにを忘れていたのだろうか。
まあいいや、そのうち思い出すだろう。
俺たちは教室へと向かった。
一方その頃食堂では。
「あれぇっ?みんな何処いったのー?おーい、どこ~?」
ようやく復活したラウがいた。
やはりラウが葬られっぱなしですね。
少し改善していかないとマンネリ化しそうです。
では、また次回お会いしましょう。
追記
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