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第九話 顧大嫂(こだいそう)の咆哮(ほうこう)と女性(おんな)の義

梁山泊りょうざんぱく山塞さんさいは、青龍せいりゅうことはるかの指導のもと、着々と「義の軍」としての基盤を固めていました。林冲りんちゅうは武力総帥として、好漢たちの訓練を厳しく指揮し、その実力は飛躍的に向上していました。


ある日、飛信のひしんのほうを使った伝令が、宋江そうこうの元へ極秘の情報を運び込みました。それは、遠く登州とうしゅう地方で、無実の罪により投獄とうごくされた義兄弟たちがいるという報せでした。


「罪におとしいれられたのは、解珍かいちん解宝かいほうという猟師りょうしの兄弟と、その従姉いとこにあたる顧大嫂こだいそうという女傑じょけつです」呉用ごようが地図を広げながら報告しました。


遥は、すぐにその名前に反応しました。


「顧大嫂は、梁山泊の女性好漢の中でも、たぐいまれな武勇と度胸を持っています。そして何より、彼女は登州の宿屋を取り仕切る情報網のかなめとなる人物です」


遥はさらに付け加えました。「彼女は、単なる武人ではありません。夫と共に店を切り盛りし、その経営能力も卓越たくえつしています。梁山泊の内政と情報収集において、彼女の力は不可欠です」


晁蓋ちょうがいは、眉をひそめました。「おんなが武を振るうことには、世間は厳しい目を向ける。ましてや、彼女の夫はまだ投獄されていないのだろう」


遥は静かに、しかし力強く進言しました。


「梁山泊の義は、性別や出自しゅつじで人を差別しません。顧大嫂のような才覚ある女性を正当に評価することこそ、腐敗した宋の社会に対する我々の新しい思想を示す機会となります。そして、彼女の夫、孫新そんしん殿もまた、彼女の義を支える優秀な頭脳ずのうです」


宋江は、遥の公平こうへいな考え方に深く感銘を受けました。


「青龍の言う通りだ。我々の義は、性別に関わらず、才ある者を尊重そんちょうする。この顧大嫂こそ、我々の義に加わるべき兄弟だ」


救出隊は、林冲と劉唐りゅうとう主軸しゅじくとし、登州へと向かいました。遥は、彼らに「登州では、顧大嫂自身の能力を信じ、彼女の意図するままに動くこと」を指示しました。彼女は、自らの力を解放すれば、誰よりも頼りになる策士さくしでもあったからです。


登州に着いた林冲たちは、顧大嫂の宿屋に潜入し、とらわれの身となった兄弟たちの状況を知りました。顧大嫂は、夫の孫新と共に、既に大規模な牢破ろうやぶりを計画していました。彼女の瞳には、愛する兄弟と、自分たちを陥れた悪徳官吏あくとくかんりへの、激しい怒りが燃えていました。


林冲が、静かに「我々は梁山泊の義の者。宋江殿の命により、あなた方を救出に来た」と告げたとき、顧大嫂は涙を流すことなく、力強い笑みを浮かべました。


「梁山泊に、こんな智者ちしゃと、義の英雄たちがいたとは!私は、この日のために命をけるつもりでした。さあ、あなたたちの力も借りましょう。我が兄弟たちを、この腐った土牢どろうから引っ張り出してやる!」


救出作戦は、顧大嫂が計画した大胆不敵だいたんふてきな策略と、林冲の圧倒的な武勇、そして劉唐の機動力により、見事に成功しました。顧大嫂が牢番たちを怒号どごうと共に蹴散けちらし、兄弟たちを解放する姿は、まさに「めすの虎」の咆哮でした。


顧大嫂と夫の孫新、そして解珍・解宝兄弟は、その場で梁山泊への合流を誓いました。彼らは、遥が提唱ていしょうする「男女、身分、出自を問わず、才覚を重んじる義」こそが、自分たちの生きるべき道だと知ったからです。


新しい英雄たち、そして新しい「義」の理念を体現たいげんする女性の合流により、梁山泊は、ただの山塞から、時代を変える革命の組織へと、その姿を大きく変え始めたのです。



語り手 顧大嫂こだいそう

私は顧大嫂。宿屋を営むおんなだ。女だからと軽んじられることも多いが、私は自分の力と度胸に自信を持っていた。今回、無実の兄弟が投獄され、私たちは絶望していた。


しかし、林冲殿が来た。宋江殿が、そして未来の智者、青龍という方が、私のような女の力を必要としていると知って、私の胸は熱くなった。


梁山泊の義は、「男だけのものではない」。青龍の教えは、この腐った世の古い慣習を打ち破る、鋭い剣だ。


私は、単なる武力としてだけでなく、この宿屋でつちかった人脈と経営の知恵を、梁山泊の内政と情報網のために使う。林冲殿や劉唐殿のような強い兄弟たちを、内側から支えるのが私の役目だ。


登州の泥にまみれた生活は終わった。これからは、梁山泊の旗の下で、夫と兄弟、そして新しい仲間たちと共に、誇り高き義の道を歩む!


次回、さらに梁山泊に集まる英雄たち。そして、遥の知識による梁山泊の「インフラ革命」が始まります。

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