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(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!  作者: みん


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66 その後のお話①


*リンディ=ブルーム視点*



ブルーム家全員での最後の晩餐は、我儘を発揮したエヴィのせいで後味の悪いモノとなった。


「こんなに美味しいベリーパイが嫌いだなんて。それに、今更何なの!?本当に、最後なんだから、我慢でもして食べれば良いのに」


ー勿体無いなぁー


と思い、エヴィとジェマが残していったベリーパイに手を伸ばした時、エヴィとジェマの後を追って出て行ったお母様が戻って来た。


「あ、お母様、おかえりなさい。あの2人は戻って来ないわよね?この残ったベリーパイ、私が食べて──」

「駄目よ!リンディ!そんなお行儀の悪い事はしないで!」

「え?」


こんな風にお母様に叱られたのは初めてだ。


「あ…ごめんなさいリンディ。でもね、リンディ。貴方は王族に嫁ぐ事になったのよ。他人(ひと)が残した物を食べるだなんて、マナー違反な事はしてはいけないわ。これからは気を付けないと…」


それは、いつもの優しいお母様だったけど、結局はそのベリーパイを食べる事はできなかった。





******


それから、私は予定通りに2年で学校を卒業し、卒業式の3日後には、王家から手配された人達によって、ゲルダン王国へと旅立つ事となった。

ゲルダン王国の王族に嫁ぐと言うのに、私達を見送りに来たのは第二王子イズライン殿下と宰相と、学校で同じクラスだった友達の数名だけだった。

それに対して、お父様もお母様も怒っていて、宰相を叱りつけていたけど。


「国王両陛下も王太子殿下もお忙しいのです。代わりに、ゲルダン王国迄の宿泊費用等は王家が受け持ちますし、宿も上位クラスでご用意させていただいていますから」


と言われれば、「それなら仕方無い─」と、私達は軽く挨拶を済ませた後、用意された乗り心地の良さそうな立派な馬車に乗り込んだ。



ゲルダン王国への旅は快適で楽しいものだった。

余分だったエヴィとジェマは居ない。大好きなお父様とお母様とサイラスの4人の旅は、本当に楽しかった。4人皆が笑顔だった。



その旅が、4人揃って笑顔で居られた最後になるとも知らずに──






ゲルダン王国の国境を超えるとすぐに、ゲルダン王国側の王族直属のお迎え部隊が待ち構えていて、今迄私達と共にやって来ていたアラバスティア王国の者達は、私達を引き渡すと軽く挨拶をしただけで、休む事なくアラバスティア王国へと戻って行った。


「折角ゲルダン迄来たのだから、遊んでから帰れば良いのに…」


なんてのんびり考えながら、私達の乗っている馬車は王都にある王城へと向かって行った。





ゲルダン王国の王城は、アラバスティア王国の城よりも少しこじんまりしたモノで、豪華さや華やかさもなく、要塞のような城だった。


城に入ると4人それぞれ違う部屋に案内され、謁見する為にそれぞれに服を着替えさせられた。その時に「この国では、それぞれの魔力について登録する義務があるから」と、魔力についても調べられた。勿論、私は光の魔力持ちだ。「確かに、光の魔力をお持ちですね。我が国への輿入れ、ありがとうございます」と、頭を下げてお礼を言われた。


そう。これこそが、本来私が受けるべき対応だ。

なのに、アラバスティアでは、それらが一切無かった。


「この国に来て良かったわ」






謁見の場に行けば、そこにはゲルダン国王と、私の婚姻相手である王弟─ルシエルが居た。


ルシエルの見目は典型的な金髪碧眼の王子が、少し歳を重ね渋みが増した様なイケメンだった。リンディは、一目で恋に落ちた。リンディは謁見の間中、ずっとルシエルに目を奪われていて、全く気付いてはいなかった。


その謁見の場に、母親であるポーリーンが居ない事。父親であるフロイドの顔色が真っ青だった事を──





ゲルダン国王主催の歓迎会は盛大に行われた。


その歓迎会の翌日には、ルシエルが治める領地へと向かう事になった。王弟であるから、住んでいる場所は王都かと思っていたが──王都から2日程掛かる辺境地であった。


そして、そこで初めて知った真実─


正妻ではなく、側室としての輿入れだった事。

正妻が病弱で世継ぎが生めない為、側室を迎えたのだと。しかも、私の他に2人も居ると言う。


ー光の魔力持ちの私が、側室の1人扱い!?ー


正直、腹立たしくはあったが、ルシエルと婚姻できるなら─それに、子ができれば、私が正妻になれるかもしれない─と思い、怒りは抑えて、私はルシエルと婚姻を結んだ。





ソレさえも……嘘だった。






初夜に、ルシエル様の部屋に呼ばれ、部屋に向かうと、そこには女性─側室の1人がグッタリとして床に横たわっていた。

よく見ると、手足にアザがあり意識もハッキリしていない。


「だっ…だいじょ───」

「お前は黙って、何も言わずにその女を治療するんだ」


その側室に声を掛けようとしたところで、後ろから底冷えのする様な声で言われた。勿論、その声の主はルシエル様だった。





それからの日々は、とても辛いものだった。


王弟ルシエル様は、表では魔力無しを擁護しているが、裏では魔力無しを蔑み、虐待していたのだ。2人の側室が魔力無しで、一週間のうち2、3回程、ルシエル様からの虐待を受けていた。そして、私の役割は、その虐待された側室を癒やす事だった。あまりにも酷過ぎる!とルシエル様に「止めて欲しい」とお願いすると


「お前の母親が、魔力無しだと、貴族の連中に言ってやろうか?馬鹿なお前でも、もう分かるだろう?この国では、魔力無しが裏でどんな扱いを受けるのか…」


「え?」


ーお母様が…“魔力無し”?ー


「アラバスティアでは上手く隠せていたようだが、ここではあんな小細工では、魔力無しは隠せないからな」


ニヤリと嗤うルシエル様。


そう言えば─と、そこでようやく気が付いた。ルシエル様と婚姻を結んでから、一度も家族に会っていない事に。

今分かった事は、私がルシエル様に逆らえば、母親の()()が確実ではなくなると言う事。







「いっそのこと……殺してくれたら………」


「───っ!」


その日もまた、グッタリとした側室の1人─アガタを治療していると、ポロポロと涙を流しながら呟いた。


ー魔力無しが、何だと言うの!?一体、アガタが何をしたと言うの!?ー


グッ─と涙を耐えながら治療を続け、心の中で叫び──そこで初めて理解した。


ー私は、なんて愚かだったんだろうー


エヴィが一体、何をした?


両親の興味は私に向かい、エヴィは我慢していただけ。

高熱を出した時も、独りで耐えていただけ。

魔力無しになっても、自分を磨いただけ。


我儘なんて……言った事なんてなかった。





ーエヴィ……ごめんなさい…………ごめんなさい…………ー








『光の魔力が少しでも強くなって……ゲルダン王国では…他人(ひと)の為に尽して……頑張って欲しい』




夢の中で、久し振りの優しい声が聞こえた。


「───エヴィ?」

「目が覚めた?」

「え!?」


目が覚めると、そこには少しやつれてはいるが、綺麗な女性─ルシエル様の正妻であるエイミー様が居た。


ここは私の部屋─で、間違いはない。と言う事は、ここはエイミー様が居る筈の無い別邸だ。別邸には、使用人を除けば側室である3人しか居ない。

ルシエル様とエイミー様は、本邸住まいで、別邸には色々()()()事がある為、エイミー様は立ち入らせないようにされていた──筈だ。


「───ごめんなさい……私……()()()()()のに…何もできなかったの……」


ヒュッ─と息を呑んだ。


「でも…そろそろ、終わりにしなければ……ね?」


「終わり?終わりに……できるの?」


思わずエイミー様の服を掴んでしがみつくと、エイミー様は、ただただ優しく微笑んでいた。







それから数日後、ゲルダン王国は大騒ぎとなった。王弟ルシエル様の、裏での行いが公になったのだ。これには、ルシエルの兄であるゲルダン国王が即座に動いた。


『王族、実の弟であっても赦さない』


国王自身が推し進めている魔力無しの保護活動を、更に確実に進める為に。ある意味“見せしめ”である。


『魔力無しなど、何の価値もない!』


と、最後の最後迄反省する事なく、王弟ルシエルは公開処刑となった。


その3日後、エイミー様も持病が悪化し儚くなってしまった。自身の死を悟り、自分が死んでしまう前に─と動いてくれたのかもしれない。


そうして、側室だった私達3人は、ルシエル様が保有していた財産を三等分したモノとは別に、国王からそれなりの額の慰謝料をもらい、それぞれの希望する所へと送られた。

アガタは両親の居る領地へ。もう1人の側室だったボニーは取り敢えずは王都で療養するとの事だった。



私は───




ブルーム侯爵が治める領地は、王都を挟んでルシエル様が治めていた領地とは真反対の位置にあった。


久し振りに会った家族は……


お母様は、ゲルダンに来てから半年後に、病を患い亡くなっていた。そう。ルシエル様が私に脅しを掛けて来た時には、既にこの世には居なかったのだ。


お父様は、お母様の魔力無しと言う事実と、亡くなった事実を無かったかのように淡々と領地運営をしている。


弟のサイラスは、隠してはいるが、相変わらずの光の魔力持ちの私主義者だ。その辺りの思想を正さないと─と思っている。



そして、与えられた領地。その領地にある鉱山では、純度の高い魔石がよく採れる。

私は今、その鉱山で働く人達の疲れや怪我を癒やすために働いている。

私の光の魔力はとても弱くて少ない為、1日に数人しか癒やす事はできないけど、それでも、そんな私にでも


「人数は関係無い。癒やしてくれるだけでありがたいのだから」


と、優しい言葉を掛けてくれるのだ。それが、とても……嬉しい。



『──光の魔力は、他人(ひと)の為に使いなさい』




と、昔、誰かに言われたような気がする─と、今更ながらに思い出した。


ーまだ遅くはない?今からでも、こんな私でも、他人(ひと)の役に立てますか?ー


空を見上げると──


『リンディなら、できるわ』


なんて、エヴィが都合よく答えてくれたような気がした。



ーいつか、エヴィに会って、謝る事は……できるだろうか?ー



次にエヴィに会った時には、笑顔で会えるように……私は今日も他人(ひと)を癒やす為に鉱山へと向かった。





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