56 打ち明ける①
翌朝、いつもよりも少し遅めに目が覚めた。
そこから女官が2人、新しいワンピースを持って現れ、否応無く着せ替えられ、髪も可愛らしく編み上げられ───何故か、またブラックパールのピアスを着けられた。
「何故?」
と首を傾げても、2人の女官はニッコリ微笑むだけだった。流石は王城付きの女官である。不快感はないけど、威圧感はたっぷりだった。
“それ以上は訊かないで下さいね?”と。
支度が終われば、これまた良いタイミングで2人分の朝食と、殿下がやって来た。
「よく眠れたか?」
「お陰様で、グッスリ……眠れました」
「そうか、それなら良かった」
そう。私は神経が図太いのか、昨日の夜はあれから文字通り落ちていくかのように、ストンと寝付けてしまっていた。そして、次に気が付いた時には朝になっていた。眠りに就く前に、何か思った事があったような気もするけど……何だったっけ?
「今日の予定なんたが、エヴィは何かあったか?」
「え?あ、今日は何も予定はありません。ブルーム家での食事会の後だから、疲れるだろうと思って予定は空けてましたから」
ー疲れるどころではなかったけどー
「ジェマ嬢が、エヴィの事を心配しているようで、エヴィが良ければ会いたいと言っているらしい。俺からも色々話しておきたい事があるから、ブレインとジェマ嬢を呼び出そうと思っていたんだ。それでも良いか?」
「はい、私も、お姉様に会いたいですし……私からも話したい事があったので、寧ろ、お願いしようと思っていたところです」
「分かった。では、昼から…ティータイムに合わせて呼び出そう」
その後は、昨日の話には一切触れずに、会話を楽しみながらの朝食となった。腹黒殿下は何処へやら。気遣い満点の殿下様々である。きっと、4人揃った時に、昨日の話をするのだろう。
「ひょっとして、エヴィは……ジェマ嬢に闇の魔力持ちだと打ち明けるつもりなのか?」
「はい。そのつもりです。アンカーソン様…ブレイン様にも打ち明けておいた方が良いかな?とも思っていたので、丁度良いかと。駄目…でしたか?」
「いや。その2人なら問題無いと思うが、ブレインがどんな反応をするのかと思うと…楽しみだなと思って……くくっ…」
「なるほど…」
真面目過ぎる?アンカーソン様の事だ。焦って謝って来るだろうけど、別に、今迄の態度も、私としては“姉第一優先”なだけで苦痛ではなかったんだけどね。
「謝罪されたら、素直に受け取りますよ。一応……お義兄様…ですからね」
朝食が終わると、殿下は執務があるからと、早々に部屋から出て行った。私は自由にして良いと言われたので、その言葉の通りに本を読んだり庭を散策して過ごした後、1人で昼食を食べ、部屋でゆっくりしていると、「ブレインとジェマ嬢が登城した」と、殿下が私を迎えにやって来た。
殿下に連れられてやって来たのは、王太子宮内にある応接室だった。
「エヴィ!あれから大丈夫だった?」
「はい、私は大丈夫でしたよ。お姉様も、大丈夫でしたか?」
「えぇ、私も大丈夫だったわ。ずっと……ブレイン様が一緒に居てくれたから」
ニコッと微笑む姉は、安定に可愛らしい。
「くっ─ジェマが可愛い!」
と、アンカーソン様が呟いた声は、同意はするけど、聞かなかった事にしておいた。
4人が椅子に座り、女官達がお茶の用意をして部屋から下がると、アシェルハイド殿下が部屋全体に防音の魔法を展開させた。
それから、先ずは─と、昨日、私とポーリーンの間に起こった事と、ポーリーンと殿下が交した約束の話をした。
「エヴィが無事で良かったわ。殿下、エヴィを助けていただいて、ありがとうございます」
フワリと微笑む姉は……何度も言うけど、本当に可愛い!案の定、アンカーソン様の顔も緩ゆるだ。
ードリュー宰相様とは全く違うよね…大丈夫かなぁ?ー
なんて思っていると、腹黒く笑っている殿下と目が合った。なるほど…殿下が鍛え上げるんですね?うん。姉の為にも頑張って下さい。
「それと──今から話すことは、まだ公式には発表はされていない機密事項もあるから、3人には他言しないよう誓約書にサインしてもらいたい」
と、殿下はアンカーソン様と姉と私に1枚ずつ書類を差し出し、私達は書かれた内容を確認した後サインをした。3人共がサインをし終えると、殿下が私を見てコクリと頷いた為、私もコクリと頷き、机を挟んだ向かい側に並び座っているアンカーソン様と姉に視線を向けた。
「父と母─だったブルーム伯爵夫妻にも言ってませんが、私……実は闇の魔力持ちなんです」
「───は?」
たっぷり間を空けた後、間抜けな声を出したのはアンカーソン様で、姉は目をパチッと瞬きをした後、キョトンとした顔で固まった。
ー姉が………やっぱり可愛いー




