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(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!  作者: みん


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53 決別

「エヴィ!ジェマ!待ちなさい!」


フロイドが呼び止めるが、私達は歩みを止めない。


「エヴィ?どうしたの?」

「お姉様、後でちゃんと説明するから、今は少しでも早くブルーム邸(ここ)から出て行きたいの」


困惑顔の姉は「分かったわ」と言って、私と手を繋いだまま邸の廊下を早歩きで玄関へと向かい、そのまま玄関の扉を開けると、そこにはブレイン=アンカーソン様が立っていた。それも、今迄に見た事もない笑顔で。


「ブレイン様!?どうしてここに!?」


姉が驚いて、そのままの勢いでアンカーソン様の側へと駆け寄る。


「ブルーム邸で食事をすると聞いて、心配になって迎えに来たんだ。父上と、アレクシス殿には許可を得てるから、今日はアンカーソン邸に来てもらう」


アンカーソン様は、気付いているのかな?兎に角、アンカーソン様と一緒の方が安全だろう。


「アンカーソン様、お姉様の事、宜しくお願いします」


「あぁ、ジェマの事は任せてくれ。それで──エヴィ嬢は……あの馬車で帰ってくれるか?」


「あの馬車?」


アンカーソン様が指差した方に、確かに、乗って来たローアン家の馬車ではない、シンプルな馬車が停まっていた。しかも、乗って来た馬車は居なくなっている。


「さぁ、エヴィ嬢。また彼等に捕まる前に帰った方が良い。私も、もう帰るから」


と、アンカーソン様は姉を連れて、アンカーソン様の乗って来ただろう馬車に乗り込んだ。


ー確かに、また捕まったりしたら、何を言われるか分からないよねー


嫌だと言っても、もうあの馬車しかないし、アンカーソン様があの馬車に乗れと言うなら、危険はないだろう─と、その馬車へと足を向けた時、後ろから手を掴まれた。


「──っ!?」

「エヴィ……何処に行くの?」


後ろを振り返ると、ポーリーンが私の手を掴んで立っていた。


「何処に──って……私は、私の家に帰るだけです─っ」


ギリッ─と、ポーリーンが私の手を掴んでいる手に力を入れる。


「何を言っているの?あなたの家はここでしょう?魔力無しのクセに……侯爵令嬢なんて………」


“魔力無しのクセに”


今迄は、ハッキリと言われた事はなかったその言葉。


ーあぁ、やっぱり……母は、私の事をそう思っていたのかー


心が急激に冷えていく。足元がグラつきそうになった時、フワリ─と、誰かが私を抱き留めた。


「───ブルーム伯爵夫人。その手を離してもらおうか」


「っ!?王太子……殿下!?」


ポーリーンが私から手を離すと、殿下は更に私を抱く腕に力を入れて自分の方へと抱き寄せた。


「遅くなってすまない。まさか、手を出して来るとは思わなかったんだ」


耳元で囁かれて、私は頭をフルフルと振る。

何故、殿下が謝るのか……殿下は何も悪くない。悪いのはポーリーンだ。『寧ろ、助けてくれて、ありがとうございます』と言いたいのに、うまく言葉にできなくて……そのままギュゥ─ッと殿下にしがみついた。

そんな私に、「少しだけ、我慢してくれ」と囁いた後、殿下の纏う空気がガラリと変わった。


「ブルーム伯爵夫人。お前が今、手を出した相手が誰だか解っているのか?」


「誰──とは、エヴィの事でしょうか?エヴィは、私の大切な娘で───」

「エヴィは、お前の娘ではない。ローアン侯爵令嬢だ。伯爵夫人が侯爵令嬢に手を出した。その意味は……分かるな?」


ポーリーンの顔が、憎々しそうに歪んでいく。


「ただ、リンディ嬢が、他国の王族に輿入れするにあたって、母親の醜聞とはあってはならない事だ。だから、お前にも二つの選択肢を与えてやる。一つ目は、今すぐエヴィに謝罪をし、今後一切エヴィとジェマ嬢には関わらないと約束する事。二つ目は、ゲルダン王国には移住せず爵位を返上して家族揃って平民になる」


どっちが良い?──と、殿下は()()腹黒爽やか笑顔をしている。『どちらが良い?』と訊きながらも、ポーリーンが選べるのは一つだけ。自尊心の高いポーリーンが、平民を選ぶ筈が無い。

案の定、ポーリーンはニッコリと笑って


「もう二度と……エヴィ……嬢には近付きませんわ。勿論、リンディにも、言い聞かせておきます。エヴィ=ローアン侯爵令嬢様。つい…力を入れて掴んでしまい、申し訳ありませんでした」


スッと頭を下げて謝罪をするポーリーンを、殿下はそのまま爽やかな笑顔で見据えている。


「ならば、今日、ここで起こった()()()()を、無かった事にしておこう。ただし、お前が何をしようとしたのか……私は()()()()()()()()と言う事を忘れないように。それと、約束通り、今後一切、エヴィとジェマ嬢には近付くな」


「───分かりましたわ」


ポーリーンは笑顔のまま、殿下と私を一瞥した後、何事も無かったかの様に踵を返して邸へと帰って行った。



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