46 側に置く意味
ライラに助けを求めた後の記憶が無い。と言うことは、助けを求めた後に、私は気を失ってしまったのだろう。
次に目を覚した時には、もう既に夕食会は終わっていて、翌日のお昼前だった。
私が寝ていた場所は、夕食会前に私に充てがわれていた客室の中にある寝室だった。私が目を覚したと連絡を受けた王城付きの医師が、私を診察してくれて、特に問題なしとされたが、念の為今日1日はゆっくり過ごすように─と言われてしまった。
医師が部屋から退室すると、暫くしてから殿下がやって来た。
「エヴィ、大丈夫か?」
「アシェルハイド殿下。あの……ここ迄運んでいただき、ありがとうございました」
「いや。エヴィのお陰で、大事にならずに済んだんだ。こちらこそ助かったよ」
なんて言うけど、そもそもやらかしたのはリンディだ。近くに居たのに気付くのが遅く、対処もうまくいかずに迷惑を掛けてしまったのだ。と、落ち込むのは後でも良い。
「アシェルハイド殿下……いつから……私が闇の魔力持ちだと……」
「あぁ、その事も含めて話したい事があるから、お茶でもしながらゆっくりと──どうだろうか?」
「分かりました。お願いします」
女官達が、私にと軽食も一緒に用意してくれた後、部屋には殿下と私とライラだけになった。
「俺がいつ、エヴィが闇の魔力持ちだと気付いたのか──それは、エヴィと初めて食堂の奥の部屋で皆でランチをした時だ。あー、エヴィも、俺が光の魔力持ちだと気付いているだろう?」
「あーはい。それはもう、入学式で殿下が壇上に現れて直ぐに」
今ではすっかり慣れてしまったけど、殿下から感じる圧は本当に凄い。嫌なモノではないけど、最初の頃は恐怖さえあった。今では──
「そうか、エヴィには一瞬でバレていたんだな。俺は、良くないモノはハッキリとではなく、違和感として感じるんだ。で、あの時、差し入れとしてジェマ嬢が食べようとしたベリーパイから、その違和感を感じたんだ。そうしたら、エヴィがそのパイが欲しいと我儘を言い出してブレインと言い合いになった時、俺が食べると言ったら『それこそ駄目です!!』と叫んだだろう?それが先ず引っ掛かったんだ。それで、ジェマ嬢とデザートを交換して、違和感のあるベリーパイをエヴィが手にした瞬間、その違和感が無くなった」
なんでも、殿下は光の魔力持ちだけど、ある意味対となる闇の魔力についても色々と勉強していたらしい。
“光あっての闇”
“闇あっての光”
純粋に、闇の魔力について知りたかったと。
「それでも、闇の魔力とは隠れるのが上手いから、確信はなかった。そうだろう─と。ただ、悉く俺が違和感を抱くモノをエヴィが欲しがるから、途中からはブレインとのやり取りを、笑うのを我慢するのが大変だったけどね」
あぁ、確かに、そう言う視点から見た私とアンカーソン様とのやり取りは、アンカーソン様が可哀想?残念?な人と映っていただろう。
「でも、アンカーソン様は、お姉様しか見えてませんでしたからね。ある意味可愛い人ですよね」
「ははっ─“可愛い”か。ブレインが聞いたら怒るだろうな」
「はぁ……殿下にはとっくにバレていたんですね。あぁ!だから、私を生徒会役員に入れたり、外交のお手伝いを勧めてくれたりしたんですか?」
闇の魔力も光の魔力と同様に稀な魔力だ。悪しきモノを祓ったり呪いを跳ね除ける事もできる為、命を狙われるような王族としては、ある意味貴重な存在として扱われていた時代もあった。今の御時世、他国から命を狙われるような事はないが、食事に毒を盛られる─と言う可能性は無いとは言い切れない。実際、学校の食堂のランチにもたまに、毒ではないが良く無いモノを盛られたりもしていた。闇の魔力持ちが側に居る居ないで、命の危険性が大きく変わって来るのだ。
「ん?それは、闇の魔力持ちとは全く関係は無いよ。その時にも言ったが、生徒会役員として選ばれたのは、エヴィ自身が成績優秀で、先生方の推薦もあったからだ。外交の話も、エヴィが5ヶ国語を話せて貿易に興味があると言ったからだ。どちらとも、エヴィに、その能力が伴っていなければ受け入れてはいないし、信頼していなければ勧めてもいない。ただ─」
殿下は一度言葉を区切ると、手にしていたティーカップを下ろして、スッと私と視線を合わせた。
「俺が……個人的にエヴィを側に置いておきたかっただけなんだ」
「─────ん?そばに?」
側に置いておくメリットは?
「あぁ、解毒役ですね!?はい、勿論任せて下さい!アシェルハイド殿下には、色々お世話になってますから、それ位の事ならしっかりさせていただきますから」
「「…………」」
あれ?殿下の笑顔が、柔らかい笑顔から黒っぽい笑顔になった気がするのは……気のせいにしておこう。
ライラ、笑いを堪えているの、バレバレだからね?何が面白いかは分からないけど。
兎に角、姉の事は勿論の事、これからは殿下の事も護って行こうと思います!
『あー……ホントにエヴィは退屈知らずだわ』




