40 夕食会②
「エヴィ!」
「お姉様!」
前以て聞いていた通り、私と色違いのワンピースを着た姉が、既にホールにやって来ていた。姉は、体全身アンカーソン様の色に包まれていた。姉にとっても似合っているし、とても嬉しそうなので、私もとっても嬉しい気持ちになる。
「今日は、お姉様にまで迷惑を掛けてしまってごめんなさい」
「エヴィ、謝らないで?確かに、こう言う場は初めてで緊張はするけど、エヴィの助けになるなら、喜んで参加するわ。それに、エヴィは良い事をしたのでしょう?私の大好きな妹が、ちゃんと評価されているんですもの。私もとっても嬉しいわ」
「お姉様!!やっぱり、大好きです!!」
ギュウッ──と、抱きつくのは我慢しました。流石に、こんな場所で抱きつくなんて事はできませんからね!その代わり、姉の手をギュウギュウと握らせてもらいました。
「本当に、ジェマとエヴィ嬢は仲が良いね」
少し困った笑顔でやって来たのは、アンカーソン様だった。今日のアンカーソン様は、碧色─姉の色の服を着ている。
「はい。私も、アンカーソン様に負けない位お姉様が好きですからね」
「──なっ!!」
「エヴィ!?」
「ふふっ──」
姉とアンカーソン様が、同時に顔を真っ赤にさせながら焦っている。アンカーソン様には、いつもお小言をいただいているから、少し位反撃?しても良いよね?お姉様には申し訳無いけど……。
「んんっ─まぁ、否定はしない」
「ブレイン様っ!?」
ーはい。ご馳走様ですー
「あー……夕食会が始まる前に、2人に話しておく事があるんだ。急遽決まった事で、伝えるのが今になって申し訳無いが、この夕食会に、光の魔力持ちとして、リンディ嬢も参加する事になった」
「リンディが?」
「あぁ」
姉が心配そうな顔をアンカーソン様に向けると、アンカーソン様はそっと姉の背中に手を添えた。
「色々と理由があるんだが………この夕食会には、リンディ嬢の婚約者候補が秘密裏に参加しているんだ」
「「リンディの婚約者候補!?」」
「しー。これは、ここだけの話だから。それで、その相手が、リンディ嬢を『見てみたい』と言って来たんだ。それに、リンディ嬢が、どこから知ったのか、ジェマとエヴィ嬢が参加すると知って、『光の魔力持ちの私が参加しないなんて有り得ない!』と騒ぎ出してね。それなら、リンディ嬢をおとなしくさせるのと、相手の要望が一致して……リンディ嬢の参加が決まったんだ」
ーいや、それ、もう何かやらかすとしか思えないよね?ー
遠い目になった目でアンカーソン様を見ると、アンカーソン様も遠い目をしていた。
ーあれ?アンカーソン様も……気付いてる?ー
今迄は、何となくリンディ寄りな感じだったけど。余程、私の顔がキョトンとしていたのだろう。
「ジェマしか見えてなかったから……申し訳無かった……」と、ポツリと姉には聞こえないように呟かれた。
「え?知ってましたけど?何なら、逆に、『お姉様を第一に思っていただき、ありがとうございます』と思ってましたけど?」
と言うと、片手で顔を覆って項垂れた。
悪意のある言葉や、そこに感情が無い言葉は直ぐに判る。その言葉を浴びるだけで、心がスッと冷えていくのだ。リンディや母の言葉がそうだった。
でも、アンカーソン様は違った。アンカーソン様は(姉を通してだけど)“私”を見ていたから、あのお小言が出て来ていたのだ。それに、姉を通して見た私は、本当に我儘に映ったのだろうと思う。そこは、私も否定しない。私は(自称)我儘令嬢だからね!
それから、アンカーソン様はゆるゆると顔を上げると
「まぁ……兎に角、2人に言うのもなんだけど、リンディ嬢がおとなしくしているとは思えないから、気を付けて欲しい」
「そんな心配はいりませんよ!」なんて事は言えず、姉と私は素直に「分かりました」と返事をした─その直後、「お姉様!」と、大声を出しながら、リンディが私達の方へと走り寄り、そのままの勢いで私に抱きついた。
ー有り得ないから!マナーは何処に行ったの!?ー
あんな親ではあったが、世間体を気にする母であった為に、マナーや勉強には本当に厳しかった。幼い頃はそれが苦痛でしかなかったけど、今では感謝している位だ。
なのに、リンディはどうだ?と言うか……光の魔力持ちだからと、甘やかされて来たのだろうか?
それに、あのトラブルを起こした後に、この対応。リンディは、記憶力も残念なんだろうか?
「皆様、時間になりました。それぞれの席にお着き下さい」
時間になり、宰相様の声掛けで、それぞれが名前が書かれた席に座り、夕食会が始まった。
何も起こらなければ良いけど───
そうはいかない……よね?────




